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その304 資料と死霊と学院の首領

「それはどっちの驚きですか? 下手過ぎて? 下手過ぎての驚きですか? その場合倒れますが」

「安心してください。大変お上手です」

「ほっとしました……」


 よ、よかったぁ……驚きの方向性が画力に対してじゃなくて本当によかった!

 シンプルに絵が下手って言われるのが一番傷つくところあるからね。

 

「そうではなく、この顔の人物に見覚えがありまして」

「それは記憶が戻って来たような意味合いですか?」

「いえ、学院の資料でチラっと見た人に似ているのです」

「とんでもない記憶力してますね!?」


 相変わらずいろんな意味ですごすぎるヘンリーだった。

 チラっと見たって言うのは普通記憶の範疇に入らないからね?


 それに似顔絵で判断できるのもすごい。

 いや、まあ、自分で言うのもなんだけど、似顔絵はそれなりによく描けていると思う。会心の出来栄えと言っていい。

 ただしそれは私基準の話であり、とても写真レベルとは言えない。

 つまり、私のこの絵だけで人を当てるのは普通かなり難しいはず。


 でも、そこを記憶力と判断力で何とか出来てしまうのがヘンリー!

 似顔絵だけであたりを付けられるのは、描き手の意図をよく理解できる証拠と言えた。

 ありがとうヘンリー! さす推しヘンリー!


 こうなってくると、後はその資料を再度見て名前を確認すれば依頼完了なのでは?

 ヘンリーのおかげで一気にヌルゲーになってしまった。

 なんて思っていたのだけど、ヘンリーはそうではないようで、なぜか無言でジッと固まっている。


「どうかしましたかヘンリー?」

「いえ……まあ、私の記憶違いの可能性もありますから、やはりその資料を確認しに行きましょうか」

「同じことを考えていました! それで、その資料とやらは何処にあるんですか? ここですか?」


 ここ、つまり生徒会室に資料がある可能性は一番高そうだと思っていた。

 けれど私の下手な推理は外れていたようでヘンリーは首を横に振る。

 その顔はちょっと困った感じだった。


「実は、ナタ学院長が持っています」

「なるほどぉ、ナナっさんが持っているんですか……つまり、困ったことになりましたね!」

「ええ、うちの学院長は困ったさんですから」


 ナナっさん、我らが魔法学院の学院長様である。

 見た目はショタなのだけど結構な年を重ねている大魔法使いで、その実力は恐らくこの世界の十本の指に確実に入ってくる。

 ただし……魔法使いと言うのは優秀であれば優秀であるほど、長く生きていれば長く生きているほどに、性格が奇天烈になっていくという問題を抱えていた。


 ナナっさんもその例に漏れずかなりの変人である。

 享楽主義なところがあって、人で遊ぶのが大好き。いたずら好きな少年の心と困らせ好きな老人の心を併せ持っていて、真っすぐに資料を見せてくださいと言ったら全てを分かった上で死霊とか見せてくるかもしれない。


 でも、そんなナナっさんが好きです!

 それに彼はまだマシな部類と言えた。

 とっても優しいし、世界を滅ぼそうともしないからね!


「はっ……ヘンリー! 一度周囲を見ましょう!」

「どうしました急に?」

「何かあったかのう?」

「いえ、ナナっさんを話題に出した時点で既に近くにいる可能性が高いのです」


 気付いたらそばにいるのがナナっさんの特徴!

 いつも通りの神出鬼没さで既に私の隣の席に腰かけていてもおかしくない!


 そう思って周囲を見渡すのだけど、ナナっさんの姿は何処にもなかった。

 おや? 今日は珍しく出てこない?

 

「って会話に参加してるじゃないですか!」

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