その294 実家は試練
色々なお願いを想定して覚悟を決めたつもりだったけれど、ジェーンからお願いされたそれは完全に予想外の一撃だった。
まるで背後から唐突に膝カックン受けた気分。
「じ、実家に来たいの?」
「はい! 最近、メーリアン家の人に良く会いますし、ラウラ様のすごした場所ですし、とっても気になるんです!」
「あー、そういえば色々メーリアン家の人にも会ってるよね」
それにしたって実家かぁ……。
入学してからしばらく帰ってないのだけど、それは帰りたくなかったからだったりする。
いや、この学院のことが好きすぎて、一生ここに居たいというのもあるのだけど、それを無しにしてもメーリアン家は特殊なんです。
推しのお願いとは言え断りたい!
しかし受け入れたい気持ちもある!
心がふたつある~!
「ほ、他のところにしない? 海とかさ」
「海も行ってご実家にも行きましょう」
「強欲だけどごもっともだ……」
確かにどちらか一方にする理由はなかった。
う、うーん、困った。断れない。
そもそも推しのお願いを断る理由を探すこと自体が不敬だとは思うのだけど、その理由を見つけることさえ出来ない。
い、一体どうすれば……!
「一学期が終わりましたら夏休みですし、そこでどうですか?」
「プランディングが始まっている……!」
「私、パッキング得意なんです!」
「旅行向けの特技まで持っているし!」
既に荷造りの用意まで始めようとしている!
どうやらもう私では断れない段階まで来ているらしい。
い、いや、まだだ! 私に断れないのなら他の人に断って貰えばいい!
こうなったら……お兄様に託す!
「お、お兄様に聞いてみましょう!」
た、頼みます! お兄様! なんか理由を付けて断ってください!
お兄様もご実家苦手勢のはず!
そう思ってお兄様に会いに学園まで行きますと、待ち合わせのベンチで長い足をお組みになっているお兄様はいつも通りの睨みの効いた無表情で。
「いいんじゃないか?」
と受け入れてしまうのでした。
お、お兄様ー!?
「ラウラもしばらく帰っていないなら。一度帰った方がいいだろう」
「それはそうかもしれませんが……!」
「い、いいんですか? やったー!」
お兄様の許可も取れたことで、ジェーンは飛び跳ねて喜んでいます。
うーん、いい笑顔。帰りたくなちゃう。嫌なのに!
「それにな、ラウラ、よく考えて見ろ」
「はい?」
「あまり長く家に帰っていないと、いくら放任とはいえこちらに来てもおかしくない。いや、むしろ放任だからこそこちらの事情など何も気にせずやって来る可能性がある」
「そ、それはマズい!」
実家に帰るだけでもマズいのにお父様やお母様がこちらに来たら、それはもう死ねる。
そうか……一度、牽制の為にも帰っておく必要があるのか。
大義名分を持たれると厄介ですもんね。
「一学期の終わり、夏休みに帰るのが丁度いいだろうな。その際にはきちんと武装の準備はしておこう」
「そうですね、いざという時の為に携帯食などの用意も必須です」
「……あの、ご実家に帰るんですよね?」
「そうだが?」
実家に帰るということは即ち戦いに出る事と同義。
こうして私とお兄様にはジェーンを連れて実家に帰るというミッションが組まれたのだった。
どうかおかしなことは起きませんように……!
長らく空いてしまって申し訳ありません!
いろいろ新作を書いては消し書いては消ししていて消耗していました
それでなんとか新作仕上げまして、力入れて書いたのでお読み頂けると幸いです
https://ncode.syosetu.com/n0797hi/
こちらからか作者名からどうぞ
これからも頑張って書いていきますのでどうぞよろしくお願いします!




