【第5話】強引な旅立ち その2
部屋の外、パインが間借りしているアパートの路肩にさっきの男のバイクが止まっていた。
天気は快晴。ゆっくりと涼しい風がなびいている。
「おら! 早く乗れ」
足早にバイクへと跨るあの男がそう口にしていた。パインは急いで走った。
彼の股関節は慣れない動きをしたことで小さく悲鳴を上げる。バイクに初めて乗るため、まごついてしまっていた。
多分こんな感じで乗ればいいのであろう。そうパインは思い、前に座る男の背を見つめた。
「すいません 初めて乗るので ・・・ 」
「気持ち悪いこと言うなよ ・・・」
男がそうぼそっと呟いている。
後部座席から男の横顔を見る。すると少しだけ口角が上がっているのが彼にはわかった。
…。
このバイクは黒をベースに赤いラインが塗装され、タイヤが太く大きい。また後部席の後ろには大き目の収納のための四角い箱が取り付けられている。ダサいと言えなくもない見た目であった、しかし実用的なんだろう。失礼ながらパインはそう思った。
『『ブゥゥーーーーーーン!!』』
轟音とともに見慣れた道を物凄いスピードで走っていく。
バイクのにけつ初心者のパインにとって目に映る物全てが初めての光景であった。
(しかし ・・・ どこに連れていかれるんだ?)
ここに来てやっと今の状況について彼は頭を回し始めた。
男の着ているジージャンが風を浴びてカラカラと音を立てる。
その先がバイクと羽根を握るパインの手に時折ぶつかり彼は痛がる。かといって手を離す訳にもいかず。
(いたたっ もどかしいなぁ ・・・)
パインにとって初めてのバイクはあまりいい思い出にならなかった。
…。
10分から15分ほどで着いた場所は先日パインも来たところだった。
慣れない足取りでバイクから降りる。
「おら 行くぞ あ? おまえそれしまえよ あぶねえな」
男はそう口にすると荷台をパカと開け、羽根を仕舞うようパインに促す。
(なんだ この道具らは ・・・)
荷台の中は格子状に仕切りが付いており鞄や様々な道具が整然とならんでいた。パインはそこに羽根を無造作に仕舞い、男の背を追う。
まだ目を覚まして間もない彼に緊張感が襲ってきていた。




