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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0005-05

 時は少しだけ遡り……


 ナルトリア大神殿では、シュトラウスが書類仕事をしていた。ものすごく嫌そうに。逃げ出そうとするのだが、最近は瞬時に捕まってしまう。


 そのため、大人しく業務に徹するしかなくなったのだ。早く終われば自由の身だと聞いて一生懸命に。



「ふぅ~。終わったぁ」

「お疲れさまです。シュトラウス様」

 神官がお茶を持ってきてくれる。激アツな訳でもなく、冷たいわけでもない。丁度よい温度になっている。


 それを、一気に飲み干すとそのまま神殿の外へと歩き出す。目指すのは久し振りにヨイヅキの家だ。



 ナルトリア大神殿からは少し遠く、少し早足になって向かっていく。久し振りなので、とても楽しそうな顔をしている。



「やぁ!久し振りにやって来たよ!」

 扉を思いっきり開ける。家には魔術による犯罪防止の結界が張ってあるのだが、ちゃっかりそこに登録しているので入れるのだ。


 だが、反応はまったく無かった。いつもなら、ヨイヅキかカーミレが返答してくれるのだ。しかし、しん、としていて誰も居ないようだ。



「ちぇっ。誰も居ないんだ。つまんないの。飲みに行こーっと」

 回れ右をして行きつけの酒場に向かった。




※※※





 ゴトリとグラスを置いた。シュトラウスは酒に強い方ではある。それでも、飲みすぎれば酔ってくるのは当たり前のことである。


「おや、お久しぶりですね」

 そう声をかけてきたのは、いつしかのナンパ男。ラなんちゃらだった。


「お久しぶりですぅ」

「また一緒に飲んでも?」

 そう言いながら、ラなんちゃらはシュトラウスの向かいの席に座った。


 店員にエールを頼み、また喋り始める。



「シュトラウスさんは好きな人とか居るんですか?」

「いないよぉ。アイツの事なんて好きじゃない!」


 何を思ったのか、ラなんちゃらはそんな事を聞いてきた。いつものシュトラウスなら、さぁ?どうだろうね?としか答えないだろう。ただ、今日はやけ酒で完全に酔っていた。


 正直に答えてしまったのだ。



「へぇ?アイツってどんな人なんですか?」

「ヨイヅキわぁ。黒髪の、いけすかないやつぅ」

 名前まで出してしまっている。


「その人、さっき見かけましたよ?」

「ほんとぉ?どこにいたのぉ」

 ラなんちゃらをじぃ、と見る。根負けしたかのように、気まずそうに話始めた。


「それがですね……なんか女の人と……くっつきながら…」

「なんだってぇ!アイツは鈍感なんだから!会って話してやる」

 その言葉に少し酔いが覚めたのか呂律が回り始めた。酒場の会計をしてそのまま出ていく。ラなんちゃらも一緒に出てきた。エールの代金は支払ったのかはシュトラウスは見ていない。



「どこにいたんだい?アイツ」

「思い出しました!正門前ぐらいで見かけたんですよ」


「なら正門に向かうよ!」

 ラなんちゃらが教えてくれた。それを信じて正門まで歩いていく。もうそろそろ夜が明けそうである。ずっと酒を飲み、ラなんちゃらに会ってからヨイヅキが帰ってきてるという情報を先程、得て探し始めたのだ。



「ふぅ。ここら辺で芝居は互いに止めないかい?参之刻《恋人(ラバーズ)》」

「あら、人が悪い。いつから気がついていましたか?」


 驚いたような顔をしながらラバーズが聞いてくる。バレるとは思っていなかったのだろう。


「私はね。ナルトリア大神殿の神殿長だよ?他人の真名を読むのは得意なの」

「ちっ、元からバレていたって訳か」

 ラバーズが忌々しげに顔を歪めた。こっちが本性らしい。


「そーゆーこ──ゴフッ」

「だが、お前が死ねばこのことを知る者は居なくなるのだろう?」

 ラバーズが顔を歪めてシュトラウスの耳元で囁く。まるで、瞬間移動をしたようにすばやい動きだった。

 だが、それは上手くは聞き取れなかった。脇腹に劇痛が走るとと共に血を吐いていた。ゆっくりと下を見ると、ラバーズの腕が脇腹を貫通していた。背中側に拳がチラリと見えた。



 シュトラウスは左脇腹はラバーズの右腕により刺され、大量の血が流れ始めている。


 元聖女と言えども、このぐらいの傷を瞬時に治すことなどできない。ゆっくりと激痛に苛まれながら意識が遠退いていく。


「たす…け………て……。ヨ…イ……」


 そして、ラバーズの足音が聞こえなくなるのと同じ位にシュトラウスは意識を失った。

さて、今回で0005話は完結です。


さぁ、シュトラウスの運命やいかに!

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