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ゴミとして捨てられた聖女、魔王と手を組み王国に復讐する  作者: ふりっぷ
第一章 魔王城制圧編

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魔力循環の乗っ取り 魔王城からノリス追放

魔王城の完全制御を得たヒマリ。

次は、ノリスの闇魔力循環そのものを断つ。

コア同化から、数時間後。


魔王城中枢の急造作戦室には、重く張り詰めた沈黙があった。


投影水晶に映るのは、城全体を巡る黒い魔力の流れ。

ノリスの闇魔力によって構築された、巨大な循環構造。


「……最終確認するわ」

ヒマリが、静かに口を開く。


「魔王城の制御権は私にある。

 でも、城を動かしている血液は、まだノリスのもの」


彼女は光の流れと闇の流れが絡み合う図を指さした。


「この闇の循環を切らない限り、

ノリスは何度でも城を取り戻せる」


フェルマーが淡々と頷く。


「だから君は、魔王になる」


「……支配者になる、って意味?」


「違う。魔王城そのものになる」


ヒマリは、わずかに唇を引き結んだ。


「始めるわ」


中層から上層へ流れる、主魔力ライン。


フェルマーの術式によって、

それは黒く、粘ついた光として浮かび上がる。


「魔王城からの魔力供給が途絶えた親衛隊は弱体化している」


「だが、ノリスが戻るまで例え一角でも死守するはずだ」


ヒマリは小さく頷く。


「いくよ」


白い光が生まれ、そっと触れた。


ぶつけない。押し返さない。


読み取り、受け止め、組み替える。


欲望を否定するのではなく、

「生きたい」

「壊されたくない」という根源へと再配列する。


闇が、抵抗をやめた。

白が、静かに染み込んでいく。


「第一ライン、乗っ取り完了」

フェルマーが即座に告げる。


城が、わずかに震えた。


黒い流れの一部が、淡い白に変わっていく。




同時刻。


魔王城に戻ったノリスは、眉をひそめた。

 

「……あら?」


胸元に手を当てる。


「私の魔力……薄くなってる?」


不快そうに唇を歪め、立ち上がる。


黒い霧が巻き上がり、その身を包んだ。


「不意打ちで潰すつもりだったけど、

 面白いことするじゃない」


次の瞬間、彼女の姿は上層へ飛び立つ。


上層、魔王王座回廊。


そこには、待ち構えるデーモン部隊がいた。


浄化と再調整を受けた彼らの魔力は安定し、瞳には迷いがない。


「ノリス様……いえ」


一体が、静かに言う。


「元・主よ。ここは通せません」


ノリスは細く笑った。


「裏切り者たち。

 ……なるほど、浄化されたのね」

 

次の瞬間。闇が炸裂した。


圧倒的な魔力が通路を薙ぎ払い、

数体のデーモンが吹き飛ばされる。


だが――


「……出力が、落ちてる?」


ノリス自身が気づく。


いつもの破壊力が、出ない。


城の循環が、すでに削られている。


「この……!」


怒りを帯びた声が響く。



一方、炉心近く。


サキュバスたちが幻惑と攪乱を続ける中、

ヒマリとフェルマーも上層王座へ進んでいた。


「第二ライン、乗っ取り成功」


フェルマーが告げる。


ヒマリの額には汗が滲んでいた。


浄化の限界に近い。


「まだ……いける」


「無茶をするな。本来、人間の出来ることじゃない」


「上層の王座の魔物忠誠度は100%、今しか書き換え出来ない」


歯を食いしばり、光を維持する。


シャドウナイトが膝を付き、

ガーゴイルが玉座からヒマリの側へと旋回する。


だが、頭を一つ潰されたツインヘッドドラゴンは浄化に

耐えきれず、塵となる。


「あっ…」


『上出来だ』

頭の中でクルスの声がする。


その瞬間――


空間が歪んだ。

 

黒い霧が渦を巻き、ノリスが姿を現す。


「よくも……私の城を……!」


ノリスはゆっくりと周囲を見渡した。


上層魔物たちは、すでにヒマリ側に膝をついている。


その光景に、わずかに目を細める。


「なるほど。そこまでやったのね」


ノリスが突進する。


だが、纏った闇は薄い。


フェルマーの結界に触れた瞬間、霧散する。


「……軽い」


ヒマリは即座に見抜いた。


魔力の密度が、明らかに落ちている。

循環の大半は、すでにヒマリ側にある。


「……なるほど」


 ノリスは、結界に打ち付けた拳から血を滴らせた。


 婚姻の提案。

 ヒマリとの同盟。

 中層での弛緩した日常風景。


 ――全部、餌。


「やられたわね、聖女」


「ふふっ、騙し合いは私の勝ちね」


ヒマリは一歩踏み出した。


(ヒマリ、闇の魔力だ。体に留めずにそのまま吐き出せ)

頭の中でクルスの声がした。


「これで……終わり!」


黒光が爆ぜた。


魔王城全体が、澄んだ光に包まれる。


魔力循環が完全に書き換わり、城全体が淡く輝いた。


接続が、切れる。


ノリスの身体が揺らぎ、膝をつく。


「……私の、循環が

 ……魔王城から離れる……?」


信じられない、という表情だった。


だが――


一回り小さくなった体でノリスは、笑っていた。


「ふふ……ふふふ」


ゆっくりと立ち上がり、楽しげに目を細める。


「いいわ、ヒマリ」


「ここまでやるなんて……本当に、面白い」


唇が弧を描く。


「――でも、魔王城のコアは特別。

今のあなたは魔王城に使われている」


白く輝く城の中で、

その笑みだけが、不気味に黒かった。


「貴方がゴミ捨て場に魔王城を接続したのも


 もしかしたら、私が聖女の力で呪いを浄化できると

 思ったからでしょう」


「半分正解。

 でも、まだ足りないわ」


 彼女は笑う。

 だが、苛立ちはない。


「あなたの迷い。

 前魔王クルスも、最初は同じだった」


 ヒマリの呼吸が、乱れる。


「あなた……知って――」


「ええ。知ってる」


 ノリスは、はっきり言った。


「城のコアに、彼女が組み込まれていることも。

 完全制御の先で、何が起きたかも」


 闇が、引いていく。


 ノリスは、戦闘をやめた。


「今回は、ここまで」


「逃げるの?」


 ヒマリが叫ぶ。


 ノリスは振り返らない。


「いいえ。待つの」


 そして、最後にこう告げた。


「私は、彼女を封じることしか出来なかった。

 でもあなたは――」


 一瞬だけ、振り向く。

 その目に、嘲笑はない。


「耐えられると思ってるでしょう?

 自分が特別だって」


(あなた、もう始まってる)

 ノリスは、微笑んだ。


「楽しみにしてるわ。

 あなたが、どこまで人間でいられるか」


 霧が散り、

 彼女の姿は消えた。

循環の乗っ取りは成功。

ですがノリスはまだ余裕を失っていません。

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