えんらえんら
煙の妖怪っているじゃないですか。
僕、あれに会ったことあるんですよ、とその人は言った。
U君は大学時代の後輩でたまにオンラインゲームで遊ぶぐらいの仲なのだが、私が怪談を集めてるというと喜んで話してくれた。(ついでに久しぶりに会って話そうと言われ、飯を奢らされた。)
学内に1人から40万円の借金をしていた男がいたらしい。彼はいつも金欠で、後輩からタバコ代も借りていたようで、U君からも借りていたらしく、パチンコ代じゃないからという言い訳をしていたようだ。すでに40万円はパチンコ代に使ってしまい、困り果てた貸主が何人かで締め上げて返済することになったからそのせいだろう。
一日に13本以上吸っていて、だいぶ後輩にたかっていたようだ。
後輩に合わない日はパチンコ屋でタバコの空気を吸いに行くと訳の分からないことを言い始めたという。
「でもしばらくするともっと訳の分からないことを言い始めたんですよね。家で吸うと煙が人の形になって踊るって。何回か家に見に行って見たんですけど、見ても特段普通の煙だったんですよ。それでもYさんは、ほら!踊ってる!女だ!ってずっと言ってて。そのうち、それで金取るとか言い始めたんで会わなくなったんですけど...」
その後、Yには彼女ができたという話が出た。
曰く、パチンコ屋で近くに女がいた。
曰く、コンビニから2人で仲良く出てきた。
とうとう2人で仲良く部屋に入っていった、などなど。
「まぁ元々大学の近くに家がある人でしたから、噂には事欠かないですよね」
U君も顔は見てないが姿を見たことがあったという。というか誰もはっきりと女の顔も写真もなかったので与太話か、偶然だろうという話で終わった。
それからしばらくして、Yは姿を見せなくなった。サボってる、借金から飛んだ、彼女の家に行った、死んだ…等々の噂が立ち始めたころ、彼は本当に死んでいたという話が出た。なんでも家から煙が上がって、通報があり、部屋に入ると布団に横たわる焼死体があったという。綺麗に布団の周りと本人だけが焼けていて、隣には夥しい数のタバコがあった。警察からは寝タバコだろうと判断されたらしい。
「で、ここからなんですけど...」とU君が言った。
その後、U君が道を歩いているとYの声が聞こえた気がしたという。
「おーい」
こっちこっちとYの声が聞こえ、上を見上げると雲が男の顔のようになっている。隣には女の様な雲があった。
「ああ、Yさんは雲になったんだなぁ...って。なんとなくそう感じたんですよね。多分隣の女がYさんの彼女だったんでしょうね。Yさんニヤけてましたよ。それから風が吹いて崩れちゃいましたけど、Yさん自慢好きだったから。多分自慢しにきたんでしょうね。その後、Yさんっぽい人を見たって人が何人かいましたけど…あれと関係があるのかはわかりません」
とU君は飯を食いながら話してくれた。