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しおりをさがして

とある町のとある図書館で働いているSさんには、忘れられない記憶がある。

Sさんがその図書館で働き始めて2年目に入ったころ、本にしおりが挟まれて返却されることがあった。

画用紙を切って紐をつけただけの、子供でも作れそうなシンプルなものだった。

返却者に聞くとこんなものは知らないという。

Sさんは返却者が嘘をついているか、子供のいたずらと思い、処分した。


数日後、全く別の返却者の本から似たようなしおりが出てきた。

尋ねると知らないと言う。

こちらはSさんとは違う職員が返却を担当したそうだが、しおりは同じように処分された。

そのうち、返却された本に限らず、図書館内の本からもしおりが見つかるようになった。

誰も借りていない本。

ほとんど手に取られることのない本。

さらには、利用者が入ることのできない書庫の本からも見つかった。

しおりは、いつの間にか本の間に挟まっている。

誰かが挟んでいるところを見た者はいない。

しかも、毎回同じものではなかった。

画用紙の色も違えば、切り方も違う。

紐の長さもまちまちだった。

最初のうちは、誰かが作って遊んでいるのだろうと思われていた。

ところが、1週間、2週間と続くうちに、数が尋常ではなくなってくる。

1日に10冊以上の本から見つかることもあった。

職員たちは、返却された本を棚に戻す際、今まで以上にページの間を確認するようになった。

しかし、Sさんたちの奮闘もむなしく、至る所からしおりは出続けていた。

緊急の職員会議が何回か行われ、探偵のように挟まれる本の規則性を探したこともあった。

その結果、挟まれる本には母親が出てくることが多いと分かった。

母親と子供を描いた絵本。

母親が亡くなる小説。

母親から子供への手紙を扱った本。

子育てに関する本。

辞典の「母親」の項目などなど……。

もちろん、図書館には母親が登場する本などいくらでもある。

しかし、意識して見てみると、しおりは決まって、母親に関する文章や言葉が書かれた場所に挟まれていることが分かった。

だが、分かったところで、どうにかなるわけでもない。

その後もしおりは挟まれ続けた。

職員の中には

「誰か、お母さんを探してるんじゃないですか」

と冗談を言う者もいた。


「最近、アレ見ないですね」

Sさんは職員から急に話を振られた。

「アレ?」

「しおりですよ、しおり」

「あぁ…しおりね」

言われてみれば、最近は見ていない。

いつから見なくなったのか、Sさんもすぐには思い出せなかった。

しおりは、いつの間にか出なくなっていた。

それでも、以前に挟まれたものが残っていたのか、古い本から見つかることはたまにあった。

だが、新しく挟まれたものが見つかることは、もう久しくなかった。

おそらく、犯人が飽きたのだろう。

職員たちは、いつの間にかそう思うようになっていた。

それからしばらく経ったある日。

「返却お願いします」

若い女性が本を返しに来た。

Sさんは本を受け取り、いつものようにページをペラペラとめくって、傷や落丁がないかを確認する。

そのときだった。

「ん?」

ページが、とあるところで止まった。

そこに、しおりが挟まっていた。

画用紙を細く切って、紐を括り付けただけの、あのしおりだった。

Sさんは手を止める。

真新しい。

画用紙も、紐も、昔の物とは明らかに違う。

何よりそれはどう見ても、つい最近作られたものだった。

そして、以前のしおりとは違う点がもう1つあった。

鉛筆で小さな字が書かれている。

子供が書いたような字だった。

そこには、

「もういいよ」

と書かれていた。

それ以降、その図書館では同じしおりは1枚も見つかっていないという。

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