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記憶共有的異世界物語  作者: さも
第7章:ヴァレン・ノルヴァ
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第55話:一行団欒

人が人で無くなるときとはどういった時なのだろうか?


シュンに出会ってから僕の頭は何故かその疑問でもちきりだった。

神と触れ合うことが増えて、【人外じんがい】と【神外じんがい】の違いについてはよく分かるようになった。


違いは簡単で、単純な【力】の量の差だ。

ならば力こそが人間を人間でなくするのだろうか?

それとも必要以上の力を持てないからこそ人間なのだろうか?


恐らく後者だ。


「なぁ純也...お前元人間って言ってたよな、どうやって神にまで上り詰めたんだ?」


禁忌の書撲滅団には客室が存在する。

本来は負傷した患者を安置する為の場所なのだが、今は使ってないと言う理由で僕等に貸してくれている。


そんな部屋の布団に腰をかけながら、僕は純也の反応を伺った。


「....」


純也が応える様子は無く、ただ単に独り言を言っただけになり少し虚しくなった。

人間が神になる....そんな事が可能なのか?


だとしたらシュンが僕だという事も可能性としては0では無いのか?


僕の能力を上げる為に純也との結びつきを強いものにしたミガレヤはそれが仇となって自分の逃げ道を潰していたが、一体彼女はどうやって僕と純也の結びつきをあそこまで強いモノにしたのだろうか?


バーミアに来てはや1日が経とうとしているが、もう既に頭が正常に機能していない。


理解できないことと、常識から逸脱している事。

色々な事を一度に処理することが要求される。


バーミア。本当に恐ろしい世界だ。


でも、正直な話嫌いじゃない。

むしろ好ましい。


狂気にも沢山触れた。


身近な人間の死も見た。


自分の体が他人に操作される感覚も味わった。


もう気が狂いそうになるほど精神が追い込まれてきている。

でもそれでいい。


追い込まれれば追い込まれる程に成長できる気がする。

その点において僕は【狂気じみてる】。


成長したいと言う欲が。この状況を楽しもうとしている。

成長した先にあるもののリスクぐらいは嫌ほど理解しているだろうに。


今日はもう寝ることにしよう。

明日は一体何が待ってるんだろうか。


楽しみだ。


...枕が少し硬いな。



【ウッドソード】



o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o


特に何も起こることなく朝がやってきた。


教会に行くと、そこでは奈恵と馬場さんが朝食を作って待っていた。


「おはよう俊介」


「お、おはよう」


意外だった。

奈恵に料理ができるとは思ってもいなかったのだ。

いや、まぁ基本スペックが高い女だったのは確かなのだが、料理をするイメージが無かった。


「お前料理作れたんだな」


「随分失礼な事言うのね...結構昔に作ってあげたことあったでしょ?」


...思い出せない。


「なんだ俊介。もう認知症か?俺より早くに老いてどうすんだよ」


そう言った馬場さんの元気そうな笑い声が教会に響き、あたりの空気は一気に軽くなった。


「おはよー」


ライリー・ノルヴァが起きて来た。

髪がボッサボッサになっていたが、席に座るな否や目にも止まらぬ速さで整えていた。

数秒もしないうちに髪が結われ、その謎すぎるスキルに僕は困惑した。


トウ、冬弥、そしてシュンヤが教会に入ってきて、後はバリッシュさんだけだったが、バリッシュさんは食材を調達してくれているみたいだった。


個人的な興味でバリッシュさんの元に向かったのだが、そこには面白い光景が広がっていた。


【ウィルブック】


バリッシュさんがそう唱えると、目の前にいた猪なのか豚なのか分からない生物は宙に浮いて、あっという間に焼肉になった。

丸焼き?と困惑したのだが、バリッシュさんが串を通して「うん、焼き加減OK」なんて言うものだがら、ちょっと笑ってしまった。


しかしその生物を焼くまでの工程の美しいこと。

ウィルブックは本当にキレイで幻想的な能力だなぁ...と内心憧れた。


■※◇◆※□■※◇◆※□


頭痛が走った。

昨日の夜からちょくちょく偏頭痛が起こっている。

急に環境を変えたのが原因なのだろうが、悪化しないように気を付ける事にしよう。


バリッシュさんと一緒に教会に戻ると、料理が完成していた。


瑞々しいサラダ。見ただけでヨダレが出そうになる程のトロリとしたスープ。

パンのガーリックの香ばしい薫りが僕の食欲を爆速で上げていく。


今ならライリーの異常なまでの食欲を納得できる。


「「いただきます」」


...見た目通りの味だった。


うますぎる。

最高に美味しい。


フランスパンの様な形をしていたパンには、微量のバターが生溶けしており、その微量のバターが舌に絡みつく。


トロリとしたスープはまるで口の上で溶ける氷の様にじんわりと口全体を包んだ。


サラダに関してはもう最高以外の言葉が出てこなかった。

具材同士が引き起こすハーモニーがサラダを最高に美味しいものにしている。


「美味しい....待って、家の料理より旨いんですけど...」


「だろ?」


そう言って馬場さんは満面の笑みを見せていた。

その笑みは今まで見てきた狂気じみたものとは違い、とても優しい笑い方だった。

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