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記憶共有的異世界物語  作者: さも
第6章:真の預言者
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第51話:ハラペコ

二人でテキトーに歩いていたら、廃墟にたどり着いていた。

どこかで見たようなその廃墟には、どこか引き込まれる魅力があった。


「この廃墟って...」


後ろから走ってくる足音が聞こえて、私は振り向いた。


【ウッドソード】


気付くと地面から棘の様な鋭利なものがグサグサと生えてきた。

その棘の現れたり消えたりする様はまるで液体磁石だった。


咄嗟に浮遊魔法が使えたから良かったものの、後数秒反応が遅れたら死んでいた。


「何すんの俊介!」


私の呼びかけに答える気は無いようで、彼はウッドソードを使った攻撃を続けていた。


フゥ....スゥゥゥゥゥゥアアアア


呼吸音が聞こえた。


その呼吸音の正体はライリーであったが、その呼吸の吸い込む力の強さに、思わずクラッと来てしまった。

後ろにいるのにこれほど破壊力があるのか、と内心思いながら、その破壊力の高い吸い込みを直に喰らっている俊介の方を見た。


...無傷。


周りのものがバッコバッコ壊されてる中、俊介はビクともしてなかった。

少なくとも私に出来る芸当じゃない。


ライリーの呼吸が終わり、彼女は理解できないと言わんばかりの表情をしていた。


「純也すら飲み込めないなんて...」


俊介はライリーに向かって手を向けた。


【ステンエギジス】


俊介の詠唱が辺りに轟くと、目の前に血しぶきが上がった。

ライリーの足が消されたのだ。


「ああああああああああああああああああああああああ」


ライリーはその場にうずくまり行動不能になっていた。

その様を見て純粋な恐怖を覚えたのだが、一度にライリーそのものを消さなかったのは苦しめたかったからだろうか?それとも。


「ねぇ俊介!何やってるの!」


相変わらず呼びかけに答える様子は無く、俊介は気味悪く笑っている。


【ウッドソード】


彼が作り出した太い一本の棘は無慈悲にもライリーを貫いた。

ウッと一声漏らし、ライリーは動かなくなった。


「ライリー...」


覚悟は出来た。

俊介がどうして敵対しているのかは分からない。

冬弥の時みたいにエルフに憑かれたのかもしれないし、もしくは誰か別の神に何かをほのめかされたのかも知れない。


ただ一つだけハッキリ理解できていることはある。


【今の俊介は敵だ】


「壊れろ」


私は右手を地面において、魔法陣を展開した。

ナエラが幼少期に自分で編み出していた魔法だが、正直これが一番使いやすい。

よほど思い入れが強かったのだろう。


私の召喚した魔法陣は、複数に分裂し俊介に向かった。

俊介はその魔法陣全てを避けたが、この魔法の本当の攻撃はこれからだ。


魔法陣から石の様なものが物凄い速度で俊介に打ち込まれていった。


それこそ【機関銃】の様に。


ナエラが幼少期に編み出したこの魔法。

気付くと俊介は蜂の巣になっていた。

体中に穴があいており、傷口はもはや見るに堪えないものだった。


カッ...カッ...と空気音が出るなか、ひとつの奇妙な音がした。


ボンッ...


一瞬だった。

ほんの一瞬。俊介の体が光って見えた。

そう思うと、俊介の体は元に戻っていた。

穴だらけだった体は完全に治癒しており、まるでさっきの出来事を【消された】かのように思えた。


「残念だったな」


やっと喋った俊介の言葉には感情と生気がこもっておらず、まるで俊介から俊介が【欠けた】ようだった。


「貴方意識はあるの?」


私の呼びかけに答えるつもりは無いようだった。

突然俊介が消えたと思ったら、今度は顔面ゼロ距離で近づいてきた。

条件反射で避けたのだが、避けるのが遅かったようで、腹に重い一撃を喰らってしまった。


ガハッ...という空気音と共に、私は後ろに吹っ飛ばされた。

地面には棘が設置されており、浮遊魔法で回避しなければ今頃死んでいた。


私が地面にゆっくり降りるのと同じタイミングで、ライリーが何かを吐き出していた。

最初は血反吐に見えたのだが、どうやらライリーの血では無いようだった。


通常吐く時の音はオエーだとゲボーだのだと思うのだが、この時のライリーからは、鳴ってはいけない音がなっていた。


大きな塊を吐き出した彼女は腕で口元を拭い、そして棘から自力で脱出した。


「心配させてごめんなさいね、私って暴食じゃない?面倒くさい体質でね、食べれば食べるほど動きにくくなるのに食べなきゃやっていけないものだから...」


そう言いながらライリーの腹にポッカリ空いた穴はゆっくりと修正されていった。

足もいつの間にか復元されていて、私は恐怖を覚えた。

腹の傷が埋まっても俊介と違い服は復元できなかったらしく、ライリーは現代ファッションみたいな奇抜な格好になった。


「と言ってもここ最近食べたものが一気に出ちゃったものだから...私ね」


ライリーの顔に狂気じみた笑みが戻った。


「超ハラペコなの!」


フゥ....ブゥゥゥゥゥゥゥアアアア


さっきと音が違った。

地面が揺れ、さっきと威力の差が明らかに違うのが見てわかった。

しかし、後ろにいる私には一切影響がなかった。恐らく精度も物凄く上がっているのだろう。

狙ったものを確実に仕留めようとする彼女の狂気じみたその様に私は【強い恐怖】を覚えた。


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