第48話:異世界の土地
「加護って具体的にどんなモノなんだ?」
僕の質問に、ミレイ・ノルヴァの口元がにやけた。
「ノルヴァ家の能力が使えるようになる...って言っても分からないよね、簡単に言えばお互いの場所がなんとなくで分かるって言う話」
場所が分かる?
「これを受け取った生命体はノルヴァ家の【分家】に入る事になる。ノルヴァ家は家の人間の場所がなんとなくでわかるのよ。『あ、こっちに近づいてきた』とかいった感じでね」
場所が分かるっていうのは具体的な場所が分かるという訳じゃなくて、近づいたり離れたりという事を理解できるという事なのだろうか。
「つまり僕等の場所をすぐ見つけるために渡すと?」
「えぇ」
そう言ってミレイ・ノルヴァは宝玉を机の真ん中に置いた。
「この宝玉に手をかざして、私が上から抑えてあげれば契約は成立。この宝玉が割れるまで貴方達はノルヴァ家の人間になる」
悩みが無いといえば嘘になる。
ノルヴァ家の人間になる。
神の家に入門するという事はすごく魅力的だ。
最もそれは【リスクがゼロ】の場合のみだが。
ヴァレン家との闘争が勃発しており、側近が何人も殺されてることを踏まえると、僕等の命が狙われる可能性はかなり高いのだ。
ヴァレン家から僕等を守る為の契約であり入家なのだが...。
しかしリスクだけではない。
それと同等、それ以上のメリットもある。
ノルヴァ家の人間に認知されるという事はノルヴァ家の他の神とも出会えるわけだ。
目的を達成するための情報を手に入れるには、とにかく【かき集める】必要があるのだが、こちらから沢山の有益な情報と【コンタクト】が取れるというのは、これ以上ないほどに好都合だ。
そんな事を考え、僕は宝玉に手をかざした。
奈恵、冬弥、シュンヤ、そして馬場さん。
みな順番に手をかざして、最後にミレイ・ノルヴァが僕等の手を上から抑えた。
すると宝玉は光だし、その宝玉に【飲まれる】感覚があった。
最もそれは感覚だけで実際は何も起こらなかったのだが...。
しかし、心なしかミレイ・ノルヴァとニーナ・ノルヴァが鮮明に見えるようになった。
ホワホワと明らかに【浮いていた】それが、ハッキリクッキリ見えるのだ。
「おめでとう。これで貴方達はノルヴァ家の人間。この宝玉は貴方達にあげるわ。割らないでね?」
宝玉はガラスのような素材だったが、コンクリートの様に固くそれでいてゴムの様な伸縮性があったので、そう簡単に割るようには思えなかった。
ミレイ・ノルヴァがそういうのと同時に、二人はスッと消えていった。
今度はハッキリと、そこから【居なくなった】というのが分かった。
まだそんなに遠くには居ないが、すごい速度で離れていっているのを感じる。
これがノルヴァ家の能力なのだな。と理解するのと同時に、僕は何とも言えないワクワク感に心を躍らせていた。
「じゃぁ僕等もそろそろ行く事にしよう。【バーミア】に」
僕がそう言うと、この場にいた全員はコクコクと静かに頷いた。
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それから一週間程経ち、僕等は再び集まった。
バーミアに行く準備も整い、僕らの心は最高に踊っていた。
自信が沸き上がってくる。
体がウズウズし、武者震いが起こる。
最高の感覚だ。
「じゃぁ....いこうか」
そう言って僕は自分の部屋の鍵を開けた。
その向こうには荒れ果てた部屋が存在しており、ナエラが死んだあの日に飛んだ事が分かった。
奈恵の表情が若干濁ったが、もう既に吹っ切れていたようだ。
記憶の共有が始まる。
一度に記憶のやり取りが行われるから頭痛が凄い。
ミレイ・ノルヴァが近づいて来るのが分かった。
入家したのは未来でだが、過去でもその効力は続くようだった。
「貴方達何をしたの?....あー」
ミレイ・ノルヴァは僕が手に持っている鍵を見て全てを理解したようだった。
「なるほどね、また私か」
そう言って大きなため息を付いた彼女の表情は若干笑っていた。
「とりあえずニーナに頼んでこの時間の僕等から僕等の記憶を消しといてくれ。少なくとも僕の未来ではそうなってるから」
「貴方達ニーナの事も知ってるのね、もうホントに私何やってんの...」
そう言って彼女は額に手をやって困惑していた。
そんなうろたえている彼女を初めて見たのだが、それは入家した事で彼女のことがハッキリ見えるようになったのが原因だろうか?
入家によって本当のミレイ・ノルヴァが見られるようになったのなら、それはそれで悪くない。
いや、最高だ。
「じゃぁ、行くよ」
【ステンエギジス】
僕がそう唱えると視界が物凄く歪んだ。
立ちくらみに視覚障害が加わったようなそんな感覚。
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空が緑色のようで、雲が赤色。
どう考えても地球じゃないこの世界。
僕が初めてこの土地に足を入れたときは恐怖の感情しかなかったが、今の僕は最高にワクワクしている。
心がはち切れるほどのワクワク。
今ならこの世界で血まみれになったって全く恐怖しないだろう。
それほどに精神が高ぶっている。
さぁ、トウとバリッシュさんに会いに行こうか。




