第41話:操作された運命
「えっと、その...」
完全に言葉に詰まった。
ちゃんと考えてから発言するべきだなと改めて痛感した。
しかし本当に困った。
ナエラの死を他人にコロコロ伝えていいものなのだろうか?
しかし...。
「ナエラ。ナエラ・リライ。それが私の憑依相手の名前。もう現存してないけどね」
奈恵が自分から話し出した。
僕からしたらありがたいのだが、彼女自身の精神衛生上の事を考えると、あまり好ましくないことは確かだ。
「現存してない?」
「殺されたの。向こうの住人に...彼女は必死になって戦ったけど、ちょっとした慢心が致命打になったわ」
奈恵は吹っ切れない表情で語った。
そりゃそうだ。こんな短時間で吹っ切れる方がおかしい。
「待って、さっきから話が全然入ってこないんだけど...」
「だろうな、順番に説明してやるよ」
そう言って、僕はバーミアの事、エルフの事、ミレイ・ノルヴァの事など、僕が今まで経験してきたあらゆる事を冬弥に話した。
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「そうだったのか...」
話を一通り聞いた冬弥は、申し訳なさそうな顔になったが、自分の記憶共有現象がどういったモノなのかを理解したようで、さっきに比べて表情が柔らかくなっていた。
「んで、記憶共有現象が起こりたてのお前にこんなお願いするのもアレなんだが、記憶が繋がってる相手とコンタクトをとってもらえないか?」
僕がそう言うと、冬弥は俯き、相手側の記憶を探るような仕草をした。
「なぁ、ひとつ聞いていいか?」
シュンヤが俯いて作業中の冬弥に話しかけた。
え?え?と困惑した様子でシュンヤの方を見た冬弥にシュンヤが申し訳そうな顔をしていた。
「もしかしてお前の記憶共有相手って日常的に魔道書持ってたりする?」
「う、うん」
「やっぱりな」
シュンヤの考えてることが分かった。
日常的に魔道書を携帯して、僕等の事を知っていると言ったらアイツしかいない。
僕が【彼】と始めて会った時も魔道書を持っていた。
「決まりだ。冬弥の共有相手は【トウ】だな」
トウ。
シュンヤの記憶の情報が正しければ【トウ・ワニル】。
ナエラと同等かそれ以上の高度な魔法知識を持ち、常に自ら作り上げた魔道書を持ち歩いている。
バーミアの世界では知識を【まとめる】ことは禁忌とされているが、他人の創作物を【集める】ことは何の問題もない。
最も、それを【知識の集合体】として見たり、他人に【知識として渡した】時点で禁忌に触れる事になるのだが、トウはそこまで阿呆ではない。
爆弾の取り扱い方はしっかりとわきまえている。
そして冬弥の持っている魔道書はその本自体が一種の魔法陣のようなものになっており、魔法戦闘においてはかなり高い能力を発揮する。
彼は【禁忌の書撲滅団】に入って僅か数日で姿をくらませた。
理由は単純にリーダーであるシュンヤの団に対する態度が気に食わなかったと言ったものだったのだが、団そのものに何か【感じる】ものがあったらしく、彼はちょくちょく禁忌の書撲滅団に顔を出していた。
連絡手段がないからシュンヤからコンタクトを取ると言った事はなかったし、向こうから連絡を取ってくると言ったことも無かった。
彼とのコミュニケーションと言えば、気まぐれでたまーに禁忌の書撲滅団に顔を出す時ぐらいだったのだが、だからこそそんな彼とこうして繋がれたのは本当にラッキーだと思う。
シュンヤは電話台の上にあるメモ帳を一枚ちぎり、そこに文字を書き連ねた。
『久しぶりだなトウ。
さっきの俊介の説明聞いてただろ?
つまりはそう言うこった。
近々お前の所に行くと思うんだが、
それまでにエルフの挙動を出来るだけ調べ上げてくれ
いきなりですまんが結構急用なもんでな。
よろしく頼んだ』
シュンヤはそう書いた紙を冬弥に見せた。
10秒ほど見せつけていたのだが、その間冬弥は困惑の表情でその紙とシュンヤの顔を交互に見ていた。
「あ、ゴメン説明し忘れてたね。こっちの記憶は相手にも届いてるんだよ」
冬弥はプライバシーを侵害されてるとでも言わんばかりの引きつった表情をしていたが、僕も最初は同じ気持ちだった。
「じゃぁ、僕が聞いたこととかは全部トウ?って人に伝わっちゃってるの?」
「そうなるな」
「えー...」
「まぁ慣れだ慣れ」
しかしこれで話が進んだのは確かだ。
ナエラが死んでしまったのは辛いが、奈恵はナエラを取り込んで魔法を使えるようになった。
ナエラの記憶が鮮明に残っているから、実力はナエラと同じと考えていいだろう。
更にそこで冬弥に協力を仰ぐことが出来た。
ミレイ・ノルヴァのカギのおかげで過去に行くことが出来るようになった。
過去に行ければ僕の【ステンエギジス】でみんなまとめて【バーミア】の世界に送り込める。
最もそれをすると純也との結びつきが強くなりすぎるからあまりしたくないが、エルフを潰すためならそれも悪くない。
にしても話が進み過ぎている。
運命が僕に味方しているんじゃないかと思うほどに上手く進んでいる。
まるで誰かが運命を【操作】しているかのように。




