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白いカトレアの花言葉(旧題:白いカトレア)  作者: 由布 叶
第2章  ペルガニュス学園編
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【17】   学園生活二年目6

お待たせ致しました。





「さあ、頑張るわよぉ……と言っても課題はもう充分よね?」

「ええ、角ウサギの角と皮が獲れましたし」

「薬草は少し使ったが許容範囲だろ」

「カトレアが見つけてくれるのでたくさん採取できてましたからね」

「ゼリムもよく動けてたから他の素材もけっこう獲れてたし」

 ジャンは褒めて伸ばすタイプか。

「まあ、あとは適当に散策して時間までに戻ればいいだろ」

「そうですね、気楽に参りましょう」

 課題がすでに達成確定だからかみんな気が軽いようだ。

「もう少し奥まで行ってみるか」

「この付近は危険な魔獣もいないですしね」

 午前と同じ隊列で歩き始める。

「角ウサギは完全に予想外だったけれどねぇ」

「ここに角ウサギが生息しているなんて知らなかった」

 ルールー・ルッカもジャンも驚きを隠せないでいる。

「こんな天気のいい日は絶好の採掘日和ですのに……皆さん、少々穴堀りに興味はございませんか?」

「ない!」

 間いれずに異口同音で返されるリリー。

 シュン、と儚げに肩を落とす様は罪悪感を誘うが、カトレアとゼリム以外の全員が断固拒否の姿勢を崩さない。

(即答だったけどいいのかな?)

 オロオロトと両者を見比べるちびっ子組。

(でも、なんとなくリリーの性格が分かってきたよ)

 深窓の令嬢を装ったアウトドア派だ。外見で判断してはいけない。

「今リリーに付き合って穴堀りを始めたら帰れなくなるだろ」

「そうよぉ、集中したら外部の音なんて受け付けなくなるんだから」

 どうやら過去に同じようなことがあったようだ。

「そうですか……残念です」



 軽口を叩く間も周囲への警戒を怠らない。

(ん?)

「あの、何だか甘いが香りしませんか?」

「甘い香り?」

「あ、歩く樹木」

 ルールー・ルッカの視線の先には根子を脚のように動かして木が歩行していた。

「怒り顔ですね、攻撃的なので注意してください」

 まだ向こうはこちらの存在に気づいていない。奇襲が可能だ。

 歩く樹木、根子を脚のように使い移動する。

 ヴィーが言ったように三つ空いた虚が顔のように喜怒哀楽を表現しているかに見える。

 表情からその特性を知ることができ、怒り顔は攻撃的な特性をしている。

 共通の特性としては燃えやすいこと生命力が強いこと、それと間抜けなこと。知能が低いのだ。

 ボー、と空洞を風が通り抜ける音を発しながら手に見える枝をワサワサと揺らし歩いている。

「甘い香り! 雪イチゴです! あの歩く樹木雪イチゴを生やしてます」

 興奮気味にカトレアが言う。

 鳥か虫が種を運んだのか真っ白な雪イチゴが実っている。

 雪の味がするイチゴ。要するに味のないイチゴで色も白いことからその名がついた。

 色はないが染まりやすく味も沁みやすい。香りも良いため他のベリー類と一緒にジャムにするととても美味しい。

「実を潰さないようにしないといけないわねぇ」

「ここで燃やしたら火事になるだろうからな。ゼリム、向こうはまだ気づいていない。どうする?」

 他のメンバーは手を出さずゼリムに任せるようだ。

 燃やしたらだめ、生えている雪イチゴを潰してもだめ。

「風の魔術を使い根子を切断して動きを止めます」

「よし、やってみろ」

「はい!」

『風の刃』

 3つの風の刃が歩く樹木へ飛び、手に見える左右の幹と脚のような根子を切断する。

「ボーッ!? ボッボッ!」

 突然のことに、怒り顔で抗議なのか文句なのか分からないが音を発する。

 左右の幹は切断されたため、頭の方の葉を揺らす。

「よし、よくやった!」

「命中率が上がったわねぇ」

「ありがとうございます」

 ユーとルールー・ルッカの二人に褒められてゼリムは嬉しそうだ。

「さすがゼリム、ありがとう、収かk……採取してくる!」

 カトレアはゼリムなら一発で仕留めてくれると思っていた。

 なんたって角ウサギを一緒に仕留めた仲だ。こちらの存在に気づいてなくて、素早さもない的なんて余裕綽々だ。



 鼻歌を歌いだしそうなくらい機嫌良くカトレアは雪イチゴを採取する。

 ボー、と音を発するだけの歩く樹木なんて無視である。

 学園から借りたアイテム袋はもう上限が近いためこちらはお弁当を入れてきた袋へ入れることにする。

(あまり量は入らないな。たくさん欲しかったのに)

「カトレア、よかったらご使用下さいませ」

そう言いながらリリーが手にしていたのはなんとアイテム袋だった。それも学園から借りたものより上等な。

「こ、こここここれはっ!? こんな高価なもの借りられません!」

「まあ、そんなつれないこと仰らないで。たくさん採れた方がいいのでしょう?それに体は正直なようですわ」

「……はっ!? 体が勝手にー」

 くすくすと笑うリリーに言われて視線を下げると、カトレアの手はガッチリと差し出されたアイテム袋を掴んで離さない。

「遠慮せずに借りておけ。どうせ課題のついでに採掘できたら、とでも思って持ってきたんだろう」

「見た目に騙されるな、リリーはちゃっかりしてるぞ」

「本人がいいと言っているのだからぁ借りときなさいな」

ユー、ジャン、ルールー・ルッカに言われたらカトレアも断れない。ヴィーも頷いている。

「じゃぁ、お借りします」

「はい、どうぞ。そうですね、もし気になるようでしたらその雪イチゴで何か作るのでしょう? わたくしにもお裾分けをくださいませ」

「あ、いいなぁ。私もカトレアの手作りお菓子食べたいわぁ!」

「手作りお菓子か、羨ましいな」

「そうですね」

「俺もお菓子食べたい!」

 ゼリムまでもが挙手をして主張する。

「いやいやいや、カトレアはリリーにアイテム袋を借りたからで、気にやまないようにっていうあくまでもリリーの提案だろう?」

ちょっと待て、とジャンが制止をかける。

「何言ってるの! 可愛い後輩(女の子)の手作りお菓子よぉ! それを食べられる機会を逃すなんて馬鹿の所業よ」

 酷い言われようである。

 そうだそうだと他のメンバーも追随するし、リリーはそれを見て笑っているし、ただの雪イチゴでちょっとした混沌状態だ。

 ジャンも4対1ではさすがに部が悪く

「すまない、カトレア。あの四人にも何か作ってあげてくれないか」

 何故か菓子製作を頼まれた。正論のはずのジャンが押し負けた。

「いいですよ、分かりました。ジャンさんにも作りますね」

 リリーは多めに作るか他のものを作って差別化を計ろう。

「あ、いや俺は……」

「ここで一人だけなしは寂しいですよ。私が作りたいので貰ってください」

 彼は絶対苦労性な体質だと確信したカトレアだった。

 頑張れと負けるなっと言う気持ちを込めた視線を送る。

「ありがとう」

「いいえ~。では、ちゃちゃっと採取しちゃいますね」

「ああ、手伝おう」

「私も手伝うわぁ」

「ありがとうございます!」

 根子を切断されて低くなったとはいえカトレアからしたらまだ高い。手伝ってもらえるならとても助かる。

 ユーとヴィーに周辺の警戒を任せて残りのメンバーで採取する。

 食べられる実を全て採取したらけっこうな量になった。これならたくさんお菓子ができそうだ。思わぬ収穫にカトレアは内心ホクホクだ。

「さて、そろそろ戻るか」

「そうですね。今朝の場所に着く頃には丁度いい時間になってると思います」

「帰りはまた隊列を変えて行きましょう?」

「そうねぇ、帰るだけだしいいんじゃないかしら」

「二人ともまだいけるか?」

 ジャンがカトレアとゼリムに訊く。

「まだ大丈夫です」

「俺も平気です」

「よしっ!」

 ニカッと破顔しユーが指示を出す。そういう顔をすると幼く見える。



 その後、恙無く残りの行程を終えて今朝出発した場所に着いた。

「よし、課題を提出してくるからちょっと待ってろ」

「おれも行きます。ユーさん一人じゃ不安なので」

「お、そうか。じゃっ、行くぞ」

 塔の近くに教師陣がいる。そこへ持って行くようだ。

「あそこで課題を提出して、教師が一つ一つ採点するんだ。そして、その合計点が今回の俺たちの点数で成績になる」

「今回は角ウサギの角と皮があるから評価が高いわよぉ」

「お肉はたいへん美味でしすし、角と皮はとても高価。良いところしかないですわ」

「採取したときの状態や質も影響してきますか?」

「するな。魔獣ならどれだけキズをつけずに仕止められているか、薬草なら処理の仕方だな」

 こういう時、薬草に詳しい母や姉に師事しておいて良かったと思う瞬間だ。

(我が家の教育方針万歳。面倒臭いけどねっ)

「でも、アイテム袋に入れたら劣化はしないから薬草なんて変わらないんじゃないないですか?」

「そんなことはない、ゼリム。茎から切り離したら劣化は始まるんだ。俺はそこまで詳しい方ではないけれど、不要な部分を取ってしまうだけで劣化の具合も違うし評価にも関わってくる」

「そうよぉ。中には根子ごと必要な薬草もあるのよ。花弁だけ要るとかねぇ」たかが草と軽んじてはいけない。カトレアは激しく首を縦に振る。ゼリムは頷きながら真剣に話を聞いている。



「ジャン、お前たちも戻ったのか」

「ついさっきな」

 片手を挙げながら一人の男子生徒が近づいてきた。どうやらジャンの知り合いらしく同じく手をあげて応える。

「それならまだ聞いてないか?」

「何かあったのか?」

「オレも聞いた話なんだけど、赤毛狼が出たらしい。それも単独の」

「赤毛狼!? 何でこんな所に?」

「赤毛狼ってぇ群で行動する魔獣でしょう?」

「それが単独ですか……」

 赤毛、と名がついているが実際は赤銅色に近い色をしている。群で行動する魔獣で統率のとれた狩りをする。

「群からはぐれたのかしらぁ」

 口元に手を添え、考え込むルールー・ルッカ。

「丁度巡回をしていた教師が参戦して事なきを得たらしい」

 運がいいのか、悪いのか。

「危険度の低い魔獣が多いと油断していたのもあるだろ。実際にあまり強い魔獣は生息してないと思ったんだけどな」

「俺もそうだと思ってたんだが、ルールーの言う通りはぐれて迷いこんだってのが有力じゃないか?」

「わたくしもそう思います」

「だいたいがその意見みたいだ。ジャンのところは何かあったか?」

「俺のとこは……」

「うふふ、私たちはぁ」

 口元に添えていた手はそのままに引き結ばれていた唇が弧を描く。

 ジャンの言葉を遮ってルールー・ルッカが含み笑いをもらす。楽しそうだ。

「角ウサギが出たのよぉ」

「角ウサギっ!? 仕留めたのか! 食べたのか! 羨ましすぎるだろ!?」

 ジャンの肩をつかみ前後に揺する。

「たいへん美味しゅうございました」

 リリーの素敵な笑顔と言ったら……。

 ジャンの友人は地団駄を踏む勢いだ。

「オレも食べたかった。残しておいてくれてもよかっただろ~」

「無茶言うなよ。角ウサギの肉はその場ですぐに食べてこそ旨いんだろ」

「そうだけど、そうなんだけどー!」

 分かってはいるけど、羨ましいものは羨ましい。

「ほら、もう戻れ。そっちも課題の採点が終わったみたいだぞ」

 あんなに激しく揺すられたのに全く動じない。酔わないのだろうか。

 けれど、ちょっとウザくなったのかもしれない。扱いがややぞんざいだ。

 だが、実際に友人さんの後方に彼のパーティーメンバーと思われる人たちがこちらを見ている。

「畜生、次こそは一緒に角ウサギを食べてやるんだからな」

 謎の捨て台詞を残して友人さんは去っていった。

「ジャンさん、仲良しなんですか?」

 カトレアの素朴な疑問に、何もきいてくれるなと言うようにジャンは無言で首を横に振った。



「ただいま、戻ったぞ」

「今回は相当期待出来そうだ」

 こちらも課題の採点採点に行っていたユーとヴィーが戻って来た。

「なになに、そんなにいい点数だったのぉ?」

「あぁ、素材の品質が良かったのと薬草は種類が多かったことが評価されたな」「この辺りで採取できる薬草が全種揃っていたらしい」

 ヴィーが補足する。

「薬草に詳しいカトレアのお陰ですね」

「母に叩き込まれたので」

 シゼリウス家で一番薬草に詳しいのは彼女である。

「素敵なお母様ですね」

「あとは、やっぱり角ウサギが大きいな。これも上手く仕留めてあると高評だったぞ」

「やったね、ゼリム!」

「おう!」

「さて、そろそろ時間か」

「そうねぇ、みんな集まり始めてるわぁ」

 言われて周りを見回すと、散らばっていた生徒たちが朝のように白い塔の近くへ集まっている。

「学園へ戻ったら今日はもう解散でいいんじゃないですか?」

 ジャンがユーとヴィーに提案する。

「おれもそれでいいと思います。初参加の二人は疲れているでしょうし」

 もうすでに大人なユーとヴィーに比べまだ子供なカトレアとゼリムは当然体力も劣る。

「うむ、再度集合するのはまた後日と言うことで」

 課外活動は今日だけではない。何度も(おこな)って経験を積むのだ。

「連絡役は任せてぇ」

「あぁ、任せた」

 来たときと同じように戻ってた学園で宣言通りその日は解散と相成った。









ジャンが空気過ぎて困ってます。

どうにかセリフを増やし中。

黒蜂、歩く樹木、赤毛狼、唄う花、などなど。

敢えてルビは振りませんのでセルフで脳内にてそれっぽく振ってみてください。(他力本願)

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