混乱
高水君とのやり取りは面白く、毎日が楽しく思えた。
しかし、仕事に行けば工事中。
仮の社務所も出来て、取り壊し作業に移っていた。
頭がガンガンする音の中、社務所は合同になり、メッセージを送れなくなった。
もどかしい。
家に帰ると、旦那と娘がいるし。寝静まる頃コソコソとメッセージをする。
寝不足が続いた。
ある日、高水君からメッセージが来た。
「もし、偶然再会したら、それは運命だよね?」
私は無理矢理でも、運命を信じたかった。
「そうだね。私もそう思う。」
そう返信を返すと
「でも、教室に習いに来るとかは無しだよ。」
と、心を読まれたかの返事が来た。
「わかってる。」
そう返信して、またおやすみを送り眠る。
その日から、私は偶然を探しに仕事が終わるとデートした場所を探し回っていた。
当然、旦那より帰宅時間が遅くなる
「結衣、どうしたの?帰りが最近遅いけど。」
旦那が本気で心配し始めてしまったので、ここはしばらく大人しくしとこう。
そう思い、大人しく仕事をする。
紗和ちゃんは相変わらず、鮎川さんにべったりだった。
同じ部屋になれたのが余程嬉しかったのだろう。
でも、その幸せも長くは続かなかった。
鮎川さんの奥様が差し入れを持って来たのだ。
たまたま、鮎川さんの膝に乗りふざけていた紗和ちゃんに奥様は激怒。
上がってくるなり、紗和ちゃんの胸ぐらを掴み頬を思いっきり引っ叩いたのだ。
「人の旦那に何してんだ!?」
奥様は大変気が強そうな人だった。
「ごめんなさい。ちょっとふざけてただけで。」
紗和ちゃんは直ぐに謝った。
「土下座して謝れ!あんた慰謝料もんだよ?」
奥様は怒鳴り散らした。
鮎川さんは、
「この子とは何も無いよ。ただの悪ふざけだから、帰りなさい。」
と、奥様を連れて外に出て行ってしまった。
騙されたのだ。
紗和ちゃんには、何のフォローも無く、奥様には外で優しく抱きしめているのが、窓から見えた。
私も騙されてるのだろうか?
そんな事を思いながら、紗和ちゃんに近づいて様子を聞く。
「冷やす?いたくない?」
「痛い。」
紗和ちゃんはポロポロと泣いた。
私は冷蔵庫から、氷を出すとハンカチで包み叩かれた頬を冷やした。
「バレたら殺される。」
紗和ちゃんが怯えながら言う。
「誰に?奥様はフォローしてるから、大丈夫だよ。」
私が言うと
「旦那。」
と、予想外の返事が帰って来た。
私もバレたら、殺されるのかな?
頭の中で自分と重ねる。
その日の帰り道、高水君とデートでよく行った展望台のある海へ寄った。
秋が近いはずなのにまだ、天気は暑い。
私は靴と靴下を脱ぎ海の中に足をつけた。
ズルズルと波が足を引き寄せる様で気持ちが悪い。
海の中に入ったら?
どうなるのだろう?
そのままゆっくり海に向かい服のまま歩みを進める。
胸の辺りまで浸かると服が纏わりついて、尚気持ち悪い。
水温は生暖かく夕陽が水面にキラキラと輝いていた。
何故か、もう少し中に入りたくなった。
歩みを進めると、突然足場がなくなった。
そのまま泡だけ立って消えた。




