大会終了! あたしたちの戦いはまだ始まったばかりだ!
「リリッサ、優勝おめでとー!」
パン! パン! とクラッカーの音が鳴り響く。
ルネ兄妹の家にて、今日は祝勝会だ。無事あたしが優勝したことにより、兄妹二人は退部を免れたということで、それを祝う会ということである。
「それだけじゃないよ、リリッサが優勝したってことは、リリッサの力が認められるチャンスだってこと。これからはバンバンリリッサの優勝を学内で宣伝するから、そしたら新入部員が入ってくるかもしれない」
グレンがワイングラスに入ったジュースを回しながら言う。
成程確かに、そういう効果もあるって言ってたような……。
「あとは単純に優勝おめでとって意味もあるわよ~。いや実際凄いわよ? あの《ウィッチ》を打倒して一位! これでリリッサの実力は大人を入れてもトップクラスだってことが判明されたわ」
上機嫌でチキンを齧りながら、ヴィーネが言う。
やっぱあの人相当な実力者だったようで、有名人らしい。
まーあれだけ美人で、しかも虹色の瞳なんていう珍しい目をしてるのにモブキャラなわけが……うん?
待って、なんか思い出しそう……あっ! ああっ! 思い出した!
(あの人、チュートリアルキャラだ!)
完全に思い出した。ゲームの序盤に出てきて、カードゲームのルールや定石について教えてくれる師匠キャラだ!
わざわざ会いに行かないとストーリーにもあまり絡まないし、あたしは一切お世話にならず攻略サイトを頼っていたから完全に忘れてたわ……。
そういえばあんなキャラ居たなぁ……。
師匠キャラになる筈のキャラが、ライバルか。原作との乖離を感じるなぁ大丈夫かこれ。
まあ何とかなるかとチキンを食べる。
「そういえば優勝賞品で何か貰ったの?」
「ん? ああ、レアカードと……副賞に賞金貰ったよ」
レアカードは、正直レアリティこそ高いけれど実用的かと言われれば微妙、みたいな性能のカードだったから、とりあえずコレクションしてる。
「正直お金はありがたかったわ……見たことも無いような金額だったし」
「はん、わたくしにとってははした金ですけど庶民にとっては大金なのね」
「そうだね、とりあえずこれで明日食べるものには困らないかな……」
何気なく放った言葉に、ヴィーネは驚くような表情でこちらをぐるんと向いた。
「え? 何? 明日食べるものにも困るくらい貧乏なの?」
「んと、まあ、カード作ってるとどうしてもね……」
カードを作る……まあつまりガチャをするのもタダではない。
普通にお金がかかるものなのだ。ヴィーネたちが沢山カードを部に寄付してくれたけど、あれはあくまで借り物だし。
「……リリッサ、このパンも食べなさい」
「シチューも美味いぞ、うちの使用人が作った料理は格別なんだ」
「え? 何急に、頂くけど……」
「食べきれなかったら持ち帰ってもいいからね」
なんか急に優しくされた……何故……?
「あ、ありがとう……」
「しっかし強かったわねー、【無限ビルドアップ】。大会でも普通に通用したし、皆びっくりしてたわね」
「ああ、俺も【無限ビルドアップ】組もうと思うんだが、リリッサ、後で詳しいレシピもっかい見せてくれないか?」
「勿論良いですよ~、決闘部のデッキレシピやプレイングは共有資産ですから」
最初は使い方難しいかもしれないから、ちょっと練習しなきゃいけないけどね。
「ヴィーネは? 【無限ビルドアップ】組んでみる?」
「うーん、いや、わたくしは『アイニーヘッツ』を使いたいから……」
アイニーヘッツかぁ、確かにあれを一番上手く活かせるデッキは現状の【ドラゴン】がいいかなぁ。
王子がくれた大事なカードだもんね、活かしたいのは当たり前か。
「それじゃあアイニーヘッツをより活かせるように構築を考えてみようか」
「はいっ!」
元気に頷くヴィーネ。嬉しいよね、思い出のカードを活かして戦うのって。分かるよ。
「で、『次』はどうする?」
グレンがあたしに視線をやりながら問う。
次、とは。次に出る大会のことだろう。
「出れる大会には全部出ましょう。実戦に勝る練習は無いし、実績稼ぎにもなる」
あたしの言葉に、二人も頷く。
決闘部の戦いは、まだ始まったばかりだ。
完結です。ここまで読んでいただいた方ありがとうございました。