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Enisi  作者: 中田 敦
ブラックスワン号編
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無人島で

    無人島で


 翌朝も、マイクに早朝から叩き起こされることは変わらなかったが、

 「おう、見習い共。今日は、甲板掃除が終わったら、後は自由に過ごしていいぞ。」

 と、期待していた言葉が発せられた。

 「うし、さっさと掃除を終わらせるぞ。野郎共、かかれ!」

 なぜか、ルークが全員の指揮を張り切って取り出す。

 しかし、「自由にしていい」という言葉の前に、異を唱える者もおらず、元気一杯に掃除を片付けて行った。

 「よっしゃ!完璧。終わらせたぜ。これから自由だ!」

 歓喜の雄叫びが上がった。

 「でも、グレイが、暇そうにしてたら、ちょっかいかけてくるんじゃ…。」

 マシューが、不吉なことを言い出す。

 「だいじょーぶ!グレイなら、さっきボートでブラックスワンの方へ行ったぜ。」

 ルークが、胸を張って答える。

 「そっかー。なら、安心だね。」

 胸を撫でおろしたマシューが、側にいたはずのサムを振り返るが、どこにも姿が見えない。

 「あれ、サムはどこに行った?」

 「ああ、あいつなら、さっきサルみたいに見張り台に登って行ったぜ。」

 「あ、ホントだ。あいつ、何してるんだ?」

 見張り台を見上げたエドモンドが、大声でサムに呼び掛けた。

 「おーい。サム、何を見てるんだ?」

 すると、サムが下にいるみんなに向かって叫び返した。

 「マルジンが、部下たちを連れて、無人島で何かしてるんだ。」

 「何か、って何だよ。」

 「島の真ん中を掘り返して、何か埋めてる。」

 「宝箱か?」

 「いや、かなり小さい箱だ。」

 「俺たちも登って見て来ようぜ!」

 ルークが、そう言うと四人は、一斉にマストをよじ登り始めた。

 「あ、狭い所なんだから、みんなで来るなよ。」

 「独り占めはずりーだろ。」

 「落ちるなよ。」

 全員が、狭い見張り台に捕まり、無人島を観察する。

 「あ、今度は棒を立ててるぞ。宝箱の目印にするつもりかな。」

 「それじゃ、目立ち過ぎるだろ。」

 「もう一本、今度のは、少し短いな。」

 マルジンが、ブラックスワンの方を見て何かを叫んでいるが、こちらまでは、声が届かない。しばらく、地面に埋めかけた箱をマルジンがのぞき込み、また、ブラックスワンに声をかける。そんなことを二時間も繰り返していた。

 サム達は、延々繰り返される作業に見飽きて、早々に甲板に戻り、久しぶりの自由時間をのんびりと過ごし、羽を伸ばしていた。

 「あ、グレイが戻ってきた。やばい、みんな見つかるなよ。」


 「船長、お帰りなさい。」

 マイクが、出迎えた。

 「おう、ご苦労さん。」

 「どうですか、実験とやらはうまく行きましたか?」

 「うん、まずまずの結果が出ているらしい。ロンドンのトムとも話せたよ。」

 「これで、本当に地球の裏側とも話せるようになるんですかね?」

 「マルジンが、出来ると言ってるんだから、多分、出来ちまうんだろうな。」

 グレイが、周囲を見回し、マイクに聞いた。

 「見習いのガキ共は、どこに行った?」

 「あいつらなら、その辺にさっきまでいましたが…。」

 「マシュー君。そこに何か面白いものでもあるのかな?」

 甲板上のボートの陰に隠れているマシューを、グレイが目ざとく見つけて声を掛けた。

 「はい、船長。特に変わったものはありません。」

 マシューは、隠れ場所から出てきてグレイに答えた。

 「では、夕食まで少し時間が空いたから、見習いを全員集めてくれたまえ。」

 「はい。分かりました。船長。」

 マシューは、敬礼をすると駆け出した。

 マシューに引っ張り出され、次々と見習い水夫が集められる。

 「では、少しの間だが、運動でもしようか。」

 グレイが、腕まくりをしながら言った。

 「マシューの裏切り者。」

 「仕方ないだろ、見つかってしまったんだから。」

 ルークが、恨めし気に、マシューを責めた。

 「おい、みんな。五人で一斉に仕掛ければ、何とか戦えないか?」

 サムが、囁くように言った。

 「よし、じゃあ、全員で取り囲んで一斉に攻めよう。」

 エドモンドが、指示を出し一斉にグレイに攻撃を仕掛けた。

 グレイは、嬉し気に笑みを浮かべると、攻めてくる少年たちの攻撃を紙一重で避けながら、反撃を繰り出す。

 十分もかからずに、サムを除く四人は、が甲板に倒れこんでいた。

 サムは、慎重にグレイとの距離を取りながら、隙をうかがう。

 気絶した振りをしていたイースが、グレイの後ろから足元を狙って蹴りに行ったと同時に、サムは、左にフェイントをかけて右の拳でグレイの顔を狙って殴りかかった。

 しかし、グレイの足は、甲板に根を張ったようにびくともせず、サムの右ストレートを首の動きだけで躱すと同時にアッパーカットを放っていた。


 「おい、サム。死んだか?」

 その言葉と共に、顔に海水が浴びせられて、サムは目を覚ました。

 四人の顔が、上から心配そうにのぞき込んでいる。

 「畜生、また負けちまった。」

 サムが、悔し気に絞り出した言葉に、四人は笑い出した。

 「やっぱり、船長はバケモンだよ。束になっても全然敵わねえや。」

 「さすが、クレイジー・グレイのあだ名は伊達じゃないな。」

 その後、夕食の時刻まで、五人は、甲板に大の字になって笑いあっていた。


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