海軍士官候補生たち
海軍士官候補生たち
寮に戻ったチャーリー達は、食堂で夕食に取り掛かり始めた学生たちに今日の出来事を伝えていた。
「では、私たちで応援に向かおうではないか。」
アーサーが、すぐに反応した。
「だが、グレイは、寮で大人しくしていろ、と言っていた。」
チャーリーが答える。
「だが、我らが目指しているのは『ジェントルマン』だ。困っている人々を見捨てることは、出来ん。騎士道精神に反する。」
「でも、学校にばれると大騒ぎになりますよ。」と、カイン。
「うむ、全員で動くのは、問題だな。」
「では、教練の成績優秀者から、十人だけを選抜しよう。どうかね、諸君?」
「それなら、士官学校の制服で行った方が良くありませんか?この暗さです、軍の兵士に見えますよ。」
「なら、訓練用のサーベルも必要だな。刃引きのサーベルだが、それなりに格好は付くし、戦いの役にも立つだろう。」
「それでは、すぐに準備をして出発しよう。反対の者はいるか?」
アーサーが、食堂内を見回して尋ねた。
全員が、緊張した表情で頷いた。
「よし、それでは、十人はすぐに準備だ。残ったものは、学校の教員にばれないよう、点呼の時には、全員がベッドに入って眠っている様に細工を頼む。」
学生が、一斉にそれぞれの役割に応じて動き出した。食事の世話をしてくれていた従者にも口止めを忘れない。
「全員準備は良いな。」
「おお!」
勇ましい返事が返る。
「で、どこへ向かえばいい?」
「最初に鸚鵡亭だ。親父さんが取引場所の書かれた手紙を持っている。」
「よし、では出発だ。校門を出るまでは静かに行くぞ。」
いつの間にか、アーサーが指揮官に収まり、チャーリーが副官役になっている。
偽装工作に手慣れているカインは、留守番役の手ほどきで忙しい。
十人は、兵隊らしく、二列縦隊で街中を進んで鸚鵡亭に到着した。
ジャックは、落ち着かない様子で、店内をウロウロと歩き回っていたが、突然店に踏み込んできた兵士の一団を見て驚きを隠せなかった。
「やあ、親父殿。お嬢さんの救出に駆け付けたぞ。」
「何だ、アーサーかよ。驚かせるな。何だ、その恰好は?」
「うむ、実は、何を隠そう、我々は誉れ高き王国の海軍士官学校の学生だったのだ。その中でも精鋭十名が、急を聞いて、戦いに馳せ参じた。安心しろ。娘は我々が救出する。」
見栄を切るアーサーの背後から声が、かかった。
「待ちな。グレイの邪魔をするんじゃねぇ。」
驚いて振り向いた先には、初老の男が立っていた。しかし、男の鋭い闘気に全員が気圧されている。
「親父さんが受け取った手紙の場所には、グレイも娘もいねぇよ。」
「誰だ、あなたは。」
「グレイの味方をしているお節介焼きさ。
今のグレイは本当に無敵状態だ。必ず無事に娘を取り戻してここに戻ってくる。それまでは、大人しくここで待ってな。」




