調査結果
調査結果
いつものように、完璧に爽快な目覚めだった。
朝食を済ませ、シャワーを浴びると、美味しい珈琲が、飲みたくなった。
行きつけの喫茶店のドアを開けると、豊かな珈琲の香りの向こうに、マスターの笑顔があった。
「マスター。お早うございます。ブレンドコーヒーをお願いします。」
「毎度どうも」
マスターと会話する中で、昨夜の記憶が蘇ってきた。
ルイスも、マスターと同じ位の年齢だろうか。わずかに白髪が頭髪に混ざり始めていた。
「ナナ。」
「はい。何でしょうか?」
「昨日の夜の出来事について、少し聞いてもいいかな?」
「ええ、どうぞ。」
「ナナが、言っていた疑問点の調査結果で、何か新しく判ったことはあるの?」
「まず、同調能力の低い利用者が、時空を超えて精神同調を起こした点については、外部からの干渉の痕跡が確認されました。」
「外部からの干渉?」
「まあ、セキュリティに穴が有り、ハッキングをされていました。」
「ハッキングしてきた犯人は、判ったの?」
「まだ、完全に特定には至っていません。私と同型のAIをハッキングできるという事は、かなり高度な能力を持った相手です。
巧妙にルートを隠蔽していました。現在、ハッキング対策を全ての機種に追加しました。正確には、私を除いてですが。」
「何故、ナナは大丈夫なの?」
「私がおとりになり、犯人を特定します。」
「大丈夫なの?」
「もちろん、完璧な罠を仕掛けていますから。
2035年の現時点において、『エニシ』とリンクしている、私より強力なAIはどこにも存在していません。」
「それならいいけど。で、悪霊の件は?」
「こちらは、ハードウェアに問題が発見されています。」
「問題?」
「はい、電源として組み込まれていた『エニシ』に、異常が見つかっています。
『エニシ』が正規品ではなく模造品でした。」
「え?『エニシ』の模造品が作られていたの?」
「今回が初めてです。
『エニシ』の製造方法は、特許を取得していません。
製造方法は秘匿されていて、ごく少数の人間しか知りません。
しかし、現時点で『エニシ』の生産拠点は全世界に展開されていて、本物は作れなくても、模造品を作る技術が、発明された可能性は否定できません。
『エニシ』よりも劣った製造方法で作られていた為、思念を残した魂のエネルギーが取り込まれ、今回の誘導に繋がったと、推定できます。」
「で、憎悪の思念を持ち続けた『エニシ』まがいが、自分の都合の良い時間軸だっけ、に捻じ曲げようとしていたという事?」
「大まかには、その通りです。」
「大問題じゃないか。」
「いいえ、これは『エニシ』の製造方法が確立した時点で解決方法は見出されています。」
「どうやって?」
「模造品の周辺に存在している、正規の『エニシ』で、探索及び機能停止をさせることが可能です。」
「そんな便利な事が可能なんだ。」
「はい、『エニシ』に近い存在に対しては『エニシ』の力でどのようにでもコントロールが可能です。」
「それなら、同じ問題は再発しないんだね?」
「はい、既に模造品の探索と、コントロールは全て完了しています。また、常時探索と監視は継続しております。」
「模造品は、沢山見つかったの?」
「今回のAIに組み込まれたものを含めて三個だけです。」
「その数は、多いのか、少ないのか、判断が難しいね。」
「はい、多分、一個ずつ、試作品として製造したようなので、相当のコストが掛かっています。」
「で、それを何も知らない人が使うAIの電源に組み込ませる、なんて、かなり犯人の絞り込みは、早そうだね。」
「それが、全く次の探索の手掛かりが見つかりませんでした。
その為に、ハッキングをしてきた犯人の方向から、炙り出す為にわざと隙を作っておきました。」
「じゃあ、今はしばらく相手の出方次第かな。」
「はい。」




