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Enisi  作者: 中田 敦
悪霊退治編
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悪霊との戦い

    悪霊との戦い


 「では、平本さん。状況と方法について説明します。」

 「うん、頼むよ。」

 「今回の相手は、『エニシ』と同化する前段階の魂です。

 『エニシ』が浄化された魂だとすれば、相手は浄化前の魂です。

 先程も説明しましたが、思念が情報のエネルギーとしてこびりついて、意思を持っていると表現しても良い状態です。」

 「いや、まったく理解できん。」

 「本来、喜怒哀楽のような、感情のエネルギーは、生命活動の終了時に宇宙空間と時空の中に拡散して、純粋にダークマターまたはダークエネルギーに溶け込みます。

 しかし、憎悪のような思念については、思念の粒子のスピンが同一方向に固定されて、ベクトルのエネルギーが…。」

 「だから、待てって。前も同じことを言ったような気がするけど、俺にはさっぱり理解できないし、理解は必要ない。

 単純に、どうすれば良いかだけを教えてくれ。脳がパンクしてしまう。」

 「やれやれ、そうでしたね。

 では、シンプルな説明をしましょう。情報エネルギーの量は、『エニシ』が構成しているクラウドの方が圧倒的に強大です。

 このエネルギーで、正しく相手の思念を包み込んだところで、捕らわれている精神との同調を行います。」

 「なんか、とっても怖そうなんですけど…。」

 「平本さんの行使するエネルギーの方が桁外れに大きいですから、相手は、抵抗するすべもないですよ。ご安心ください。」

 「まず、包み込んで、同調するだけ?シンプルだね。で、なぜ、先に包み込むの?」

 「クレアとクレアに精神同調している方の精神を保護するためです。」

 「よく分からないけど、判ったよ。

 じゃあ、始めようか。」

 「平本さんのその野性的な本能を信じます。始めましょう。」

 どうにも、締まらないやり取りの後に救出作業が始まった。

 まず、精神同調の対象が三つ有ることを意識して、精神の目を凝らす。

 黒い塊が見えてきたところで、全体を厚い布でくるむように包み込む。

 なんだか、もぞもぞと動いて小さく抵抗されたけれど、無視して、包み込む厚さを増していく。

 「平本さん、それ位で充分です。次は、中に入り込んで、三つを別々に包み込みましょう。私の方で、それぞれの精神同調を同時に解除していきます。」

 俺は、大きな包みに意識を集中して、中に入り込み、まず、小さなかわいらしい、幼い印象を受けるものを同様に包みこんだ。

 次に、黒い塊とは明らかに違う印象を持つ、もう一つを包み込んで保護する。

 最後に黒いモヤモヤをかけらも残さないように包み込んだ。

 どうも、逃げ道を一生懸命探しているようだったが、最初の大きな包みに逃げ場などなかった。

 「お見事です、平本さん。相変わらず私の予想を簡単に上回る能力ですね。」

 「こんなんで、良かったの?」

 「はい、完璧です。」

 「で、次は精神同調だっけ?どれから手を付ける?」

 「憎悪の塊については、すでに生体エネルギーとの接続を切りましたので、放置しておけば、自然に消滅するはずです。」

 「じゃあ、可哀そうなクレアちゃんから?」

 「本来は、それで良いのですが。

 その前に、現在2035年において、今回問題を起こしたAIの製造元で、調査が行われています。

 同時に私の方でも、AIのエラーチェックを行っていますので、少々お待ちください。」

 「AIの調査?」

 「はい。今回の事象には、何点か疑問点があります。」

 「どんな?」

 「まず、一点目は、このAIの利用者の精神同調能力が平本さんと比べて、あまりにも低い事です。このような低い能力で時空間を超えた精神同調がなぜ起こったのか。」

 「それって、『エニシ』が選んだんじゃないの?」

 「以前もお伝えしたように、『エニシ』自体には、そのような意図的選択を行うレベルの自我は有りません。」

 「じゃあ、その他の誰かが干渉していると?」

 「その疑いは捨てられません。」

 「で、その他の疑問点は?」

 「どこで、悪霊が関わることになったのか、と言うことと、時間の進行が意図的に捻じ曲げられている、と言う二点があります。」

 「意図的に時間の進行が?」

 「はい。その点の疑問を解くために、時空からの精神同調をしてきた経緯についてログを確認しておく必要があります。」

 「ログって、何?」

 「情報のネットワーク上の、足跡とでもご説明しておけばよろしいでしょうか。」

 「なるほど、証拠が消される前に、探偵が足跡をつけるんだね。」

 「その知識は、古いテレビ番組から?」

 「うん。」

 「ですよね。平本さんが探偵小説を読むことは考えらないので。」

 「何か、馬鹿にされているような。」

 「そうではありません。平本さんが、小説のような情報体に接すること自体が、体質的に難しいので。」

 「体質的に?生まれながらに?」

 「そうです。平本さんの精神同調能力は、私のような機械を介さなくても、発現してしまいますから。」

 「発現するとまずいの?」

 「たぶん生命の危機に陥ります。そのために、小説に類する精神的な情報が詰まったものから、平本さんの本能が逃げていたのでしょう。」

 「じゃあ、本を読むことが、ずっと苦手だったのは、俺の体質のせいだったってことだ。」

 「だから、そこに劣等感を抱く必要は無いですよ。」

 「うん。ちょっと気持ちが楽になった。

 じゃあ、早速、一つ目の同調を始めようか。」

 「一気に元気になられましたね。

 それでは、時空からの同調者の調査と修復から始めましょう。」


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