反乱開始
反乱の開始
翌朝は、日の出前に出発の準備を整えて全員が集合した。直ちに小隊は、上陸した場所に戻り、中尉の隊が上陸するのを待った。
相変わらず、貴族のお坊っちゃんが多い小隊の動きは遅く、グレイ達はのんびりと打ち合わせと準備をしながら待った。
「マッキントッシュ中尉。お待ちしておりました。」
「うむ、ご苦労。で、巣穴は見つかったのか?」
「は。少し歩きますが見つかっております。すぐに出発されますか?」
「うむ、すぐに行こう。案内を頼む。」
グレイとホーソンが先頭に立ち、二列縦隊で行進が始まった。
アレックスは、更に二百メートルほど先行し、ボブとフランク、コーダーが最後尾を歩く。
三十分もしないうちに道の先に小さな広場と三張りだけのテントが見えてきた。そのテントの前には酋長とホークが武装もせずに立って待っている。
その背後に先行していたアレックスが立っていた。
「お待たせしました。酋長。哀れな白人を連れて参りました。」
グレイがワイアンドットの酋長に挨拶する。
「やあ、グレイ殿。ご苦労様です。」
マッキントッシュ中尉が驚いてグレイに話しかけた。
「グレイ海尉。君は彼らの言葉を知っていたのか?」
「はあ、去年の航海中に、同じ種族の友人が出来まして、教わったんですよ。」
「では、早速だが彼らに貢物を用意させろ。」
「それが、申し上げにくいのですが、彼らの村は、貧乏で、今日食べる物にも困窮しており、貢物を出せる余裕が無いそうです。」
「そんな事は無かろう。おい、テントの中を調べろ!」
マッキントッシュ中尉が背後の部下に命じた。部下たちは、腰のサーベルを抜き、数少ないテントに歩み寄るとサーベルで入口の布を切り裂き、中に踏み込んでいった。
布が取り除かれ、露になったテントの中には、粗末な囲炉裏が置かれているが、その火も消えて、食料も、目ぼしい装飾品も無い。
囲炉裏の向こうには老婆が座りその老婆に縋り付き、ベソをかいている小さな子供が四人。
どのテントも人数に違いはあっても、同じ状況だった。老婆も子供たちもみすぼらしい衣服をまとい薄汚れていた。
「大人や若者はどこに行っておる?」
「御覧の通り、食料が少ないため、狩りに行けるものは狩りに、採集に行けるものは採集に出払っております。」とグレイ。
「では、そこの子供たちを全員艦に連行しろ!」
「待ってください。それでは人さらいじゃないですか!」
「親たちが代わりになるものを集めて持ってくれば子供を返すことも考えよう。さっさと連行しろ!」
兵士の一人が、老婆にすがる子供に手を伸ばそうとした。その時、兵士の喉元にサーベルの切っ先が向けられていた。
「その手をどけろ!さもないと喉を掻っ切るぞ!」
アレックスの声が静かな怒りを込めて響く。」
「反乱か?直ちにその不埒者を取り押さえろ!」
中尉の命令に従って他の兵士が動こうとした瞬間、グレイとフランクの近くにいた兵士が他の兵士の頭上に降ってきた。
コーダーとボブがマッキントッシュ中隊の連中に背後から襲い掛かった。
テントの中であっけにとられている兵士には、アレックスが襲い掛かり、気絶させていく。
グレイはその様子を横目で確認し、マッキントッシュ中尉の側にいた二人を殴り倒し、中尉を羽交い絞めにして、その喉にナイフを押し当てた。その時には、フランクの大暴れで、まともに立っている兵士は、一人もいなくなっていた。
「中尉、ご覧の通りです。おとなしく降伏して下さい。」
「海尉、これは国家に対する反逆だぞ。お前こそ部下をおとなしくさせて降伏しろ。今なら見逃してやることもできるぞ。」
「もし、だれにも迷惑をかけず、幸福に生きている人々に襲い掛かる事が、国家に対する使命であるならば、そんな国は、俺がつぶしてやるよ。」
「は、反逆だ!だれかこいつを逮捕しろ!」
わめく中尉が鬱陶しくなったグレイは、中尉の首筋を殴って気絶させた。
「おう、お前ら、こいつらを全員縛り上げろ。」
グレイの指示で全員の武装が解除され、後ろ手で縛り上げられた。
「しかし、ライフルを構えてた奴は、なぜ撃たなかったんだ?」
グレイの呟きにボブが答えた。
「そこは、ぬかりありませんぜ。こいつらの銃の火打石は全部抜き取ってあるんで撃とうとしても出来なかったんで。」
「そうか。ボブ、ありがとよ。でも、よくそんな手を考えたな。」
「いやー、アレックスの指示で…」
「だよな。アレックスも有難う。」
「グレイ。オコナー大尉が動き始めました。気を付けて下さい。」
ナナの警告が、突然頭の中に聞こえてきた。
「今はどこにいる?」
「オコナー大尉は、部隊員全員を上陸させ始めています。間もなく、大尉も上陸するでしょう。」
「大砲もあるのか?」
「はい。最初の方で下ろされています。」
グレイは、酋長の側に歩み寄って尋ねた。
「酋長殿、今、軍艦から新手の兵が上陸してきた。大砲も引き連れてるらしい。誰かにこっそりと偵察させられないか?」
酋長が口笛を吹くと、すぐにホークが現れた。
「直ちに偵察を出しましょう。お任せください。」
「重い大砲を運ぶのなら通りやすい道を選んでいるに違いない。」




