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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第3章 「箱庭の連想」

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第26話





おその

〔バレンタインですね〕

〔というわけで今年は商店街でこんなものを用意してます〕


ーおそのがURLを送信しましたー


おその

〔うちの和菓子屋からは、抹茶とチョコのミニ柏餅を用意してまして)

〔洋菓子屋さんは勿論、青果店でもチョコレートフォンデュしてたり〕

〔喫茶店とかカフェでもチョコレートメニューがあるそうなんで〕

〔2月は是非商店街でお過ごしくださーい〕


かのあるふぁ

〔ファーーーー!!!バレンタインイベントキターーーーー!!!〕

〔行かなきゃ!!(使命感)〕


おその

〔バレンタインフェアは2月1日から14日までやってますん〕

〔ちなみにHPからダウンロードできるこのチラシは春祭りの時同様、栄さんが作ってくださいました 8888888〕


蛍

〔うおおおおおおバレンタインイベきたーーーーー〕

〔栄さんがマジで多才すぎる件について〕

〔そういえば花房くんが、バレンタインにチョコレートミルクを提供するって言ってたわ 楽しみ〕


あまねん

〔わ~!デザインできたんだ!めちゃくちゃかわいい…!〕

〔色々あるんだね!バレンタインフェア楽しそうすぎる!絶対行くね~!〕


潮

〔おぉ 何やらまた楽しそうなことやってますやん〕

〔お腹空かせて参加するわ〕


セリー

〔チラシかわいすぎ ダウンロードしました〕

〔今年もHPきちんと更新されてて、ここから全部確認できるの有難すぎる〕

〔てかズームして隅々まで見たけど、チキンとポテトのお店でポテトのディップソースにチョコレート味が期間限定で有るらしいよ 最高〕


蛍

〔おいおい 行くしかねぇなぁ…〕


おその

〔ちなみに試食で食べさせてもらったけどガチ美味いからおすすめ〕

〔チキン食ってチョコソースディップのポテト食って、またチキン食って…あれ?無限ループって怖くね?〕

〔国産の美味い品種使ってるからほっくほくで、塩も良い塩使ってるんで、ただでさえ無限ポテト編に入れるってのに…〕


潮

〔最強のタッグ組んでますやん〕


あまねん

〔栄さんがチラシ作ってる時から、何度か見せてもらったんだけどね〕

〔個人的に一番楽しみなのは、洋服屋さんのバレンタインTシャツなんだよね…!〕

〔3000円分購入した方に無料でプレゼントっていうやつなんだけど、これがめっちゃくちゃかわいいの!ズームして見てみて!〕


セリー

〔あ。春祭りで私が作品置いてもらった服屋さんじゃない?〕

〔Tシャツかわいすぎ 3枚くらいほしい…〕


おその

〔そこの服屋さんはね、後継ぎの志桜里ちゃんが今本格的にデザイン頑張ってて〕

〔その試しとして今回Tシャツを出すことにしたらしい〕

〔試作でもらったけど、生地しっかりしてて一生着れるで しかもかわいい〕


セリー

〔絶対買いに行こう〕


かのあるふぁ

〔え゛!ちょっと待って志桜里ちゃん?!名前かわよすんぎじゃん!!〕

〔かのあの架乃愛と並ぶかわいさじゃん!!〕


潮

〔お〕

〔そういえばひらがな呼びが基本だったから、名前にちゃんと漢字が当てられてたの忘れてたわ〕

〔久々に見た表記〕


かのあるふぁ

〔かのあもずっとひらがなで書いてたから久々に自分の名前ちゃんと見た!!感動!!〕


蛍

〔自分で書いたのに自分の名前で自分だけで感動してて草〕

〔お前1人で全部完結してるやん〕


セリー

〔かのあの名前ほんとに久しぶりに見た〕

〔本人が自分の名前で驚くくらいだから、私としては懐かしいまであるね〕


おその

〔あれ てことはさ、あもなちゃんも実は平仮名表記じゃないってこと?〕


かのあるふぁ

〔そだよーん! 愛萌那だにょーん!〕

〔架乃愛、愛萌那、那由多だにょーーーーん!!シクヨローーー!!〕


おその

〔平仮名でも「かのあもなゆた」だけど、漢字でもちゃんと繋がってるんだ いいねー〕


セリー

〔あもなちゃんも萌なんだね 何か親近感〕


かのあるふぁ

〔そだにょーーーーん!!〕

〔あれ???てか、かのあは架乃愛だけど、おそのって相良おそのだったっけ??〕


おその

〔タイムスリップものか?わいは〕

〔ちなみにわいは普通に平仮名表記やね〕

〔ばあちゃんが「りん」だったのよね おりんって呼ばれてて〕

〔だから平仮名二文字で「その」って名づけてもらったわいも自然に「おその」って呼ばれてる感じ〕


蛍

〔ほぇー ええやん〕

〔エモ〕


おその

〔ひらがなだけど、一応ばあちゃんは「麟」で、わいは「園」ってイメージではあったらしい〕

〔なんで、まぁ漢字表記するとしたら相良 園やね〕


かのあるふぁ

〔ふーーーーん??〕

〔園ちゃん♡)


おその

〔は?〕

〔キモ♡〕


かのあるふぁ

〔名前呼んだだけなのにウルトラカウンターで草♡〕


蛍

〔声掛けで一発アウト♡〕


潮

〔やめてやめて〕

〔一定期間トーク内でハート流行りだすからやめて〕

〔うんち流行った方がまだいいわ〕


かのあるふぁ

〔うんち♡〕


潮

〔合わせ技使ってくんなボケ♡〕

〔あーーーだめだ使っちゃった〕

〔今の無し〕


セリー

〔潮♡〕


潮

〔ファッ?!今の無しを無し!!〕

〔芹♡〕


セリー

〔えー 使ったことなかったけど、ハートかわいいなぁ あまね♡〕


あまねん

〔はーい♡セリー♡〕


蛍

〔セリー!!!わいは?!セリー!!!〕


セリー

〔呼ばない♡〕


蛍

〔あああああああああああ〕

〔逆に良い…♡〕


おその

〔ちょっと待て 落ち着けお前ら〕

〔セリーとあまねん以外がマジでキモすぎるからやめよう一回〕

〔トーク見返してみ?酷いから〕


蛍

〔うーん メロいな〕


潮

〔メロいのは芹とあまねんだけで、それ以外は見返さなくても大体酷い定期〕


セリー

〔いや メロいの定義だいぶゆるすぎない?〕

〔今どっかメロかった?〕


おその

〔ほら、あなたたち存在自体がメロいから〕

〔ハート使ったり、「呼ばない♡」とか言っただけで激メロになるよね〕

〔我々は激キモになるけど♡〕


潮

〔キモ♡〕


おその

〔ウザ♡〕


セリー

〔単語次第じゃないの…?〕


おその

〔呼ばない♡〕


潮

〔うお…〕


蛍

〔キモ…〕


おその

〔おい せめて♡つけろや〕



潮

〔うん さすがに横道逸れ過ぎたから話を戻そうか〕

〔とりあえずバレンタインは商店街で過ごそうということで〕

〔何日に行く?〕


あまねん

〔チラシ見てみたけど、特定のイベントは日にちが限定されてるんだよね~〕

〔☆Tシャツは無くなり次第終了(早めに行かなきゃ!)〕

〔☆青果店のチョコフォンデュは土日限定(1、7、8、14日!)〕

〔☆パン屋さんは1週目がショコラパン、2週目がチョコレートエピ!(美味しそう!)〕

〔☆喫茶店のバレンタインメニューは2週目から(9日から14日!〕

〔☆おそののチョコ柏餅は14日まで定休日以外毎日数量限定提供!(神!)〕


かのあるふぁ

〔そうだった!!あもなが「ショコラパンもめちゃうまだけど、チョコエピ有り得ないくらい美味いから食べに来てねーん」って言ってた!!〕

〔というわけで、フォンデュ食べたいからかのあは2週目の8日か14日で!!〕


おその

〔ちなみに試作食べさせてもらったけどどっちも美味すぎて飛んだよ〕

〔あとあもなちゃんが可愛すぎた〕


セリー

〔分かる あもなちゃんかわいい〕

〔私はTシャツ欲しいから前半に行こうかな ショコラパンも買いに行こう〕


あまねん

〔私もTシャツ欲しいから前半にしようかな~!〕


蛍

〔わいは喫茶店メニュー食べに行きたいんで 後半で〕


潮

〔えーと?〕

〔前半が芹とあまねんで〕

〔後半がかのあと蛍ですか…〕

〔おそのは?〕


おその

〔え?わい?〕

〔木曜日に適当にうろちょろしようかなーくらいに思ってたけど〕


潮

〔じゃぁ木曜に一緒に行こうず〕


おその

〔ファッ…?!?!?!〕

〔今の感じだったら絶対「じゃぁ芹と行きたいんでわいも前半に行きますね^^」とか言いそうだったのに…?!〕

〔突然選ばれて動揺してます〕


潮

〔いや〕

〔前半1後半3とかだったら少ない方にするかーって感じだったんだけど〕

〔綺麗に割れたから、それなら2:2:2にしとくかと思って〕

〔ただそれだけっすね〕


おその

〔まぁ理由はともかく…じゃぁ一緒に行きますか?〕


潮

〔あい よろしく〕


セリー

〔良い感じに分かれて楽しそう〕

〔前半どんな感じだったか写真送るね〕

〔周、1日は空いてる?〕


あまねん

〔空いてるよ~!1日楽しみにしてるね!〕


蛍

〔んじゃ8日空いてるんで、かのあちゃん一緒に行きますか〕

〔うちらも写真送りまーす〕


かのあるふぁ

〔はーーーい!!!8日よろしくーーー!!!〕


潮

〔我々はその写真見ながら回りますか〕


おその

〔おけーい〕


あまねん

〔ちなみにバレンタイン当日は、この前旅館の料理人さんに教えてもらったレシピを参考にしながら考えたバレンタインデザート作って置いておくので!〕

〔皆楽しみにしててね~♡〕


潮

〔わーい♡〕


かのあるふぁ

〔うわーーーーーーーーーい!!!♡♡♡〕


セリー

〔神すぎる感謝♡〕


おその

〔あまねんマジ天使♡〕


蛍

〔お前が最強♡〕



おその

〔んじゃ それぞれバレンタインフェア楽しんでもろて〕

〔よろしくー〕


蛍

〔ほーい〕


セリー

〔おそのも無理せず頑張って〕


おその

〔あんがとねー〕


潮

〔よろしくお願いしまーす〕














「はい、これ。チョコ柏餅」



ーーー来る2週目の木曜日。

商店街の駐車場に車を停めて和菓子屋で合流した潮は、早速受け取ったチョコ柏餅に深々と頭を下げた。



「チョコ柏餅様…ありがとうございます…」


「いや、下げるなら製作者に頭下げてほしいな?」


「マジで正直このチョコと柏餅とかいう組み合わせ神すぎる。感謝」


「執筆の時とか、甘いもの欲してる時に食べて」


「ありがたく頂戴するわ。すまんね」



わざわざ用意してくれたおそのに改めて頭を下げて、大事に鞄へ入れる。

それから、まずはパン屋さんに移動を始めた。



「チョコ柏餅、有難いことに大好評でさ。セリー達も買いに来てくれたんだけど、全然ゆっくり対応できなかったんだよね。買いに来てもらうんじゃなくて、今日みたいに後から渡せば良かった」


「まぁまぁ。皆和菓子屋で頑張ってるおそのが見たいんだから。イベント成功して忙しくしてるおそのも見れて、チョコ柏餅も美味しくて。結果オーライでしょ」


「そう言ってもらえたら嬉しいけどさ」


「我々だって、今からあもなちゃんに会いに行くけど。チョコエピめっちゃ売れててあもなちゃんが笑顔で頑張ってるの見れたら嬉しいでしょ」


「それはそう」


「一緒ですよ」


「そか。なら、いいか」



納得した様子のおそのに、潮は何度か頷いてみせる。

程なく進んだ先で、パンの焼ける良い匂いが漂ってきた。



「うおー、良い匂いー」


「イートイン、チョコエピ食べてる人結構いたね」


「我々も早く食べなきゃ」



列に並んでパン屋へ足を踏み入れると、気が付いたあもながにこにこで手を振ってくれた。

控え目に手を振り返して、人の波を縫いながら好きなパンを2人で1つのトレイに乗せて行く。

中央でひっきりなしに補充されていくチョコエピをそれぞれ2つほど確保してレジへ向かい、嬉しそうなあもなと対面した。



「こんにちは!来てくださったんですね!」


「チョコエピとあもなちゃん目当てで来ましたよっと」


「やばー嬉しー!セリーさんとか蛍さんたちも来てくださって!ほんっとめっちゃ嬉しかったです。またいつでもいらしてくださいね!これ、おまけのカフェオレです♡」


「えええ良いんすか…!?」


「もちろん!ゆったり回られてくださいね」


「かわいい…感謝…」



パンとカフェオレを受け取って、パン屋を後にする。

イートインは人で溢れていた為、2人は外のベンチに腰掛けてチョコエピを食べることに。



「おっふチョコエピビジュ神」


「カフェオレまでありがたいですなー」


「じゃぁ失礼して…おあ゛!ウマ!」


「うーん、試作で食べたけどやっぱ改めてうんまーーーー」


「ふぁー…カフェオレも落ち着くわぁ…」


「これは良いハッピーバレンタインだわ」



食べ終わってほっこりした後は、続いて喫茶店へと向かう。

カップルが多い道中、ちょっと気まずくなりながら歩く2人。



「何か気遣って私と来てくれたけどさぁ。これ2人で来たのやっぱ微妙じゃない?」


「いやでもあなたこれ、この中を1人で歩くつもりだったんでしょ?わいと歩くのとどっちが良いのよ」


「1人で歩いたらそれはそれであれだけど、2人で歩いたらこれはこれでちょっとだけ気まずいよ」


「まぁ分かる。じゃぁ、いっそ手繋いでみる?こう、中途半端な距離感だから気まずいんじゃない?状況的に振り切ってみた方が意外と楽かも」


「いや、バイバーイってした後にえげつない羞恥に襲われそうだからやめとく」


「うーん懸命ですわ…」


「セリーとあまねんだったらきゃぴきゃぴ!女子同士で来てみました!って感じで全然違和感ないし、かのあと蛍も別に、かのあが小学生みたいだから姉妹で来たんかな?って感じになりそうなところだけどさ」


「我々のこの微妙な空気感が、周囲に『ん…?あの二人は…友達…?それとも…?』みたいな風に思わせてるんじゃないかっていう、この感じね」


「女子っぽくも盛り上がれないし、姉妹って感じでもないし…おい、気まずくするなよ潮」


「あのさぁ、年末から今まででどんだけ気まずいって単語私にぶつけてくるんですかお前らは。気まずい代表やめろや」


「よしよし、この感じで行こう。殴り合いな感じで行こう」


「一旦アリ」



話しながら喫茶店に到着して、忙しなく働いていた花房によって空いていたカウンターに案内される。

バレンタインメニューを注文すると、花房は笑顔で応えた。



「ありがとうございます!他の皆さんも来てくださって、フェア用の写真も撮らせて頂いたんです。レジ横に飾ってありますので、良かったらご覧になってください!」


「お。了解です」


「いいね、見よう」



料理が到着する前に、2人でレジ横を眺める。

そこには、バレンタインメニューを中央に芹と周が2人で片手ずつ合わせて1つのハートを作って微笑む写真。

それから、引き気味の蛍に寄り添って全力でハートポーズを作るかのあの写真が貼ってあった。



「蛍、無言で写真送って来てたけどやっぱ2人で出かけるの大変だったんかな…」


「テンション差があるからね。疲れてたら5才児の相手するのってしんどいよね」


「それに比べてこのセリーとあまねんは…女神か?」


「はなやぎの女神組はいつ見ても平和ですなぁ」



2枚の写真をぱしゃりと収めて、トークに送る。

〔あ、こんな感じに飾ってもらったんだ~!うれしい!〕〔蛍とかのあこれ…どした?〕

〔わーーーい!!!うちら最強にかわうぃぃぃぃ!!!〕〔違うんよ、こいつ写真撮るって言われてテンション上がってゴリゴリ近寄ってきてさぁ〕

などなど席に戻って反応を見ていると、机の上に並べられたバレンタインメニュー。



「お待たせしました。こちら、ハンバーグプレートでございます。デザートは食後にお持ちしますね」


「うおー…!か、かわいい…ありがとうございます」


「あの、もし良かったらお2人のお写真も…」


「まぁ…芹たちも撮ってもらってて、私たちだけ撮らないのはちょっとあれか…」


「じゃぁ、お願いします…」


「すみません!ありがとうございます!」



ポラロイドカメラで撮ってもらい、すぐにレジ横に貼られた写真。

いそいそと3枚が並べられた様子をもう一度トークに送ると、再び反応が返ってきた。


〔気まずそうにしてて草〕〔控え目のピース…〕〔ハートポーズするのかと思ったけど、しないんだね…!?〕〔何遠慮してんのさー!!〕

〔いや、恥ずかしすぎてやらずにいたら逆に恥ずかしい感じになっちゃった…反省…〕〔こんな感じでずっとカップルとカップルの間歩いてるけど何か質問ある?〕

とそれぞれ送った後、改めてバレンタインメニューに向き直る。


ハートの形をしたトマトソースの煮込みハンバーグに、ハートの形に盛られたご飯。

ハッピーバレンタインと書かれた旗が刺さっているのも微笑ましく、添えられたリボンサラダのミニトマトもハート型で愛らしい。



「ごゆっくりお楽しみください!」



眩しいほどの笑顔で去っていった花房に軽く頭を下げて、早速手を合わせる。

いただきます、と声を揃え、2人はまずサラダから口に運んだ。



「うめぇ…」


「かわいいし美味い…」


「これ確か、ハンバーグのトマトもサラダのミニトマトも栄さんのところのお野菜って聞いたわ」


「そうなんや。何か、色んなとこで繋がってて良きですなぁ」



続いてハートのハンバーグを食べ進めていく。

美味しさが口の中で溢れて、思わず唸る。



「う゛まい…!」


「こんな彼女からしか貰えなさそうなハートのハンバーグをお店で食べられるなんて…!幸せの極み…!」


「これが愛の味かぁ…」



そうして、最後の一粒まで残さず身体に取り入れた2人。

綺麗に食べ終えた2人の前に、続いてバレンタインデザートが置かれた。



「アップルパイと、チョコレートミルクでございます!」


「ほわーーーー」


「あざすあざす」



甘すぎないアップルパイと、甘いチョコレートミルク。

ちらりと周囲を見渡すと、カップルがアップルパイを食べさせ合ったり、チョコレートミルクに「あまいねー♡」と言い合っていたり。

デザートに向き直って、潮とおそのはそれぞれ最後のバレンタインメニューを楽しんだ。



「美味しいです、な…」


「潮、きょろきょろするな。食べさせ合いっこしとく?」


「いや……うーん…やめとこうかな…甘いねー♡くらいしとくか…」


「おけ」


「うん、チョコレートミルク甘いねー♡」


「超あまーい♡おいしー♡」


「やめるか」


「やめようか」



そんなやり取りをして、綺麗にデザートまで綺麗に食べ終えた2人。

無言で立ち上がってレジへ行くと、花房がにっこにこで対応してくれた。



「ありがとうございます!バレンタインメニュー、いかがでしたか?」


「我々には勿体ないくらいめちゃくちゃ美味しかったです、ご馳走様でした」


「愛がいっぱい詰まってて、独り身の我々でも幸せなバレンタインを過ごせるって幸せだなって思いました。ご馳走様でした」


「い、いやいや!!美味しかったなら本当に!幸いです!またごゆっくりいらしてください」


「ありがとうございます」


「また来ますー。お互い14日までフェア頑張りましょう」


「ありがとうございます!頑張りましょうね!」



眩しいほどの笑顔を浴びた喫茶店を後にして、カップルが歩く通りに戻る。

顔を見合わせた後、2人は駐車場を目指した。



「楽しかったね。バレンタインフェア」


「あのさ。実は服屋さんのTシャツ…試作で貰ったの、お母さんと2人で2枚貰ったんだよね。で、せっかくだから今日潮ちゃんに着てもらって!ってお母さんがくれたんだけど…」


「う、うん…」


「着る?」


「……もう此処まで来たら着ようぜ」


「よしキタ」



通りの隅で、服の上からお揃いのバレンタインTシャツを着る。

上着を着直して向き合った時、遠くから聞き慣れた声が響いてきた。



「おや?!おーーーーい!お2人さん!」


「お。おじさん」



写真館の店主が手を振りながら近付いてきて、お揃いのTシャツを着た2人を生暖かい目で見つめる。



「おやおや、今日は2人かい?お揃いのTシャツなんて着ちゃって!」


「すごいタイミングで出会いますね…」


「写真撮ろうか?今バレンタインフェアでポラロイド写真配ってたんだよ!」


「じゃぁもう、いっそお願いしよう」


「飾っちゃおう」


「おじさんに任せて!!最高の一枚をプレゼントするよ!スマホでも撮ってあげるからね!」


「恥ずかしがってたけど、此処で一気に振り切ろう潮。腕組む?手繋ぐ?」


「いや…此処はさっきの反省を生かそう」


「潮…!やるんだな!?今!ここで!」


「勝負は今!ここで決める!」



ーーーそうして撮影された、お揃いTシャツでハートポーズを決める2人の写真は。

はなやぎ館の中央ホールへとしっかりと飾られ、毎日のように誰かの目に微笑ましく映ることとなった。









*   *   *   *   *   epilogue








(ハッピーバレンタイン!じゃーん、栄さんと一緒に考えたレシピです~)


(ふぁーーーーー美味そう)


(栄さんと一緒に考えた、だと…?)


(ちなみに夜は一緒に夜景見に行くんだ~♪)


(ちくしょう!!!末永く幸せになぁ!!!)


(ちなみにワイも今日は花房くんと夜の水族館に行くで)


(うるせー聞いてねーよ!末永く幸せになぁ!!!)


(口悪いけどちゃんと幸せ願ってくれてて草)


(で?そのラブラブなレシピがこれですか。なんて幸せなバレンタインだよ)


(ハートの形のフォンダンショコラケーキと、いちごのジェラートです!どうかな~?)


(じゃ、ラブラブレシピのバレンタインデザートいただきまーす)


(いっただっきまーす!!!う゛ま゛あああああああああああ)


(おいしい…神…)


(良かった~!栄さんも喜ぶよ!)


(美味すぎるわ…毎年最高のバレンタインをありがとうございます…)


(えへへ!節分祭の時にもう一回潮と旅館に行って、試作して料理長さんに食べて頂いたの!すっごく褒めて頂いて自信ついたから、自信満々で作りました)


(これは…個人の域を超えてますな最早)


(めちゃくちゃ美味しいケーキ屋さんのケーキですよこれは)


(ジェラートもなめらかーうまー)


(ほんとだよね!レシピ様様だよ~)


(幸せを分け与えてもらえて幸せですわ…みんな、楽しいバレンタインを過ごしてくれよな)


(うんうん)


(待って今気づいたけどおそのと潮今日お揃いTシャツ着てて草wwwwwwこっちみんなwwwww)


(当たり前だろ、せっかくのバレンタインTシャツなんだから。今日着なくていつ着るんだよ)


(えー。ちなみにパーカー着てて見えなかったと思うけど私も着てるよ)


(え~!かのあ着てないの?私も着てるよ?)


(ちなぬくぬくパジャマの下にわいもちゃんと着てました)


(えっ…かのあが少数派マ…?!)


(おら、着てこんかい)


(はぃぃぃぃぃぃぃぃ今すぐぅぅぅぅぅ)



(てなわけで、これではなやぎでお揃いTシャツが増えましたということで)


(那由多コーチがくれたお揃いTもたまに6人全員着てるタイミングあるじゃん?あの時のアドレナリンえぐない?)


(分かる。今日全員集まるし着てみるかーって着て、1人また1人と揃っていくあの感覚…たまんねぇ…)


(バレンタインTシャツ揃って着てんの誰か撮ってくんないかなーインカメじゃ入らないし)


(前にはなやぎT揃った時、めっちゃタイミング良く虎哲さんがお米届けに来てくれたんだよね)


(あー。あったあった。有無を言わさず写真撮らせたよね)


(虎哲さんマジで良い人すぎる)


(さぁ、今日は誰が来るかな?)



《ピンポーーン》



(とか言ってたらマジでインターホン鳴って神展開キタコレェェェーーーー!!!)


(誰?誰が来た?)


(こんにちはー)


(栄さんキターーー!!!)


(あ、そうそう。此処でバレンタインメニュー作るから、良かったらはなやぎで食べてからお出かけしませんかってお誘いしてたんだった!)


(そういえばそんなこと言ってたな。最高のタイミングじゃん)


(栄さんいらっしゃいませーーー!!!お写真撮ってくださいなーーー!!!)


(おわびっくりした!!お邪魔します…わ、皆お揃いのTシャツ着てるんだ)


(早速ですけど写真お願いしますー)


(勿論勿論!)


(いやぁ、すみませんねぇ)



(じゃぁ並んで……はい、ハッピーバレンタイン!)


((((((ハッピーバレンタインー!))))))









第二十六話 了








ーーーーーーーーーーーーーー



物語内のバレンタインメニューについて、

以下の動画を参考にさせて頂きました


チョコレートエピ

*https://youtube.com/shorts/21rkeqbLofY?si=cjoX-KTmBBNxNpmb

リボンサラダ

*https://youtube.com/shorts/mxk1UtKtcjA?si=CxY3XoFIN0mchUWN

ーともカフェ もか 様


アップルパイ

*https://youtube.com/shorts/WSCgxazILx0?si=TIOXSXhR4RsCgIf-

ーKabu tabi 様





2026.2.15 日三十(ひさと) 皐月(さつき)







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