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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第3章 「箱庭の連想」

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第25話




ー潮が写真を送信しましたー



潮

〔明けましておめでとう〕

〔今年も宜しくお願いしまーす〕


あまねん

〔あけましておめでと~!〕

〔今年もよろしくね!〕



蛍

〔あけおめ 今年もよろしくです〕

〔おお 初日の出美しい…寝ずにちゃんと見たのね〕

〔てゆうかどんなロケーション? 素晴らしすぎるだろこの景色〕


おその

〔カウントダウン前に寝落ちして、このトーク通知で起きたら〕

〔美しい初日の出が出迎えてくれた新年になりました、と〕

〔明けましておめでとー 今年もよろしくー〕


セリー

〔すご 最高の新年だね〕

〔明けましておめでとう 今年もよろしくね〕


かのあるふぁ

〔あけまして おめでとーーーーーーーー!!!〕

〔今年もよろしくぅーーーー!!!!FOOOOOOーーー!!!〕


潮

〔旅館で玉露と蕎麦もらったんで〕

〔帰ったら色々食べまっしょい〕


蛍

〔わーい〕

〔玉露とかいう一度も口に入れたことのない未知の飲み物楽しみにしてますね〕


おその

〔玉露未知マ?〕

〔今度うちのサービスで購入者の人にお茶淹れようと思ってるから、参考にさせてもらうわー〕

〔つーか誰か淹れられんの?〕


あまねん

〔潮がね!淹れてくれるんだって~!〕


セリー

〔えっ…潮ってお茶とか淹れられるんだ…?〕


潮

〔へへ まぁまぁ芹さん 任せてくださいよこの私に〕

〔逆に玉露しか淹れ方知りませんけど、良ければね〕


蛍

〔オンリーワンが特殊すぎる件について〕

〔やったー 潮の淹れてくれるお茶とかレアすぎて楽しみ〕


かのあるふぁ

〔ねぇそれ苦い?!苦かったら飲めないんだケド…〕


あまねん

〔すっごく飲みやすかったから、かのあでも行けると思うよ~!〕


潮

〔ま、飲めなかったらそれはそれで 蕎麦食おうぜ〕


かのあるふぁ

〔わーーーい!!蕎麦!蕎麦!蕎麦ーーー!!お月見にしてー!!!〕


蛍

〔あ、いいなぁそれ じゃぁわいは美味しいお揚げでも探して用意しときますか〕


おその

〔あ、商店街のお豆腐屋さんのお揚げ美味しいから、頼んどくよ〕

〔お揚げいる人ー〕


潮

〔はーい〕


セリー

〔はーい〕


あまねん

〔はーい!嬉しい!〕


蛍

〔やったぁ はーい〕


かのあるふぁ

〔ええええーーー!!じゃぁかのあもーーー!!!〕


おその

〔んじゃお揚げ6枚ね〕

〔蕎麦も玉露も楽しみにしてますー〕



セリー

〔初日の出が終わったってことは、スケジュール通りだと今からお正月のイベントが有るのかな?〕


潮

〔そうそう 旅館の中庭で色々やりますね〕

〔私も何年か振りの参加だからちょっと緊張しちゃうわ〕


蛍

〔ほえー 写真いっぱい撮っといてね〕

〔後で皆で見よう〕

〔その後は絵本カフェかぁ 盛りだくさんですなぁ〕


あまねん

〔ほんとに楽しみすぎる!〕


セリー

〔心配してたけど、周が楽しそうで良かったよ〕

〔引き続き楽しんで来てね 帰りも気を付けて〕


潮

〔何やかんや楽しんでもらってて何よりですわ〕

〔ほなもう少し楽しんで来ます〕


あまねん

〔めっちゃ楽しいよ~!お正月イベントもカフェも楽しみ!〕

〔じゃぁ、準備します!行ってきます~!〕


おその

〔行ってらっしゃいませー〕


蛍

〔行ってらっしゃーい〕


かのあるふぁ

〔いってらっしゃーーーい!!!〕











「新年明けましておめでとうございます。こちら、新年お祝い朝食御膳でございます」



ーーー開け放った大窓から、美しい初日の出をいつまでも拝んでいた潮と周。

こんこんと鳴り響いたノックの音に返事をすると、朝餉を配膳に来た望月がゆっくりと畳の上に正座をして頭を下げた。


2人も同じように頭を下げ、机の方へ移動する。

目の前に並べられていく御膳に感嘆していると、望月は控え目に聞いた。



「初日の出はいかがでしたか?」


「もう最っ高でした!大窓から眺める初日の出…一枚の絵画みたいですごかったです!」


「それは何よりで御座います。有明もかつて、この景色を酷く愛しておりました。お二方の門出が初日の出の神々しい光に照らされ、より明るく導かれるものでありますよう」



嬉しそうな望月に、周もにこにこと微笑みを返す。


並べられた御膳の上には、正月の縁起物がずらりと並べられていた。

鯛の塩焼きから始まり、紅白かまぼこ、栗きんとん、昆布巻き、海老、伊達巻。

その他にも小鉢で彩り良く置かれたそれらに、2人のテンションは尚も上がって行く。



「お正月の縁起物から、こちらは茸とはまぐりの炊き込みご飯、それからつきたてのお餅を入れておりますお雑煮も、合わせてお召し上がりください」


「おー、うまそすぎる…」


「10時からは中庭にてお正月御祈祷が御座います。お神酒や甘酒の提供も御座いますので、是非ご参加くださいますよう」


「参加します、ありがとうございます」


「お待ちしております。2月3日は節分祭も御座いますので、その時にもまた是非こちらにいらして、今日という日と同じ御祈祷を受けられてください。では、今年も何卒宜しくお願い申し上げます。失礼致します」



最後に淹れたての玉露をテーブルに置いて、部屋を後にした望月。

まずはそれを揃って口に含み、鼻から抜けていく余韻を楽しんだ。



「美味しい…」


「しこたま酒呑んだ体に染みわたりますな」


「ほんとに…贅沢だ~…」



味わった後、改めて御膳と向き直る。

「頂きます」と部屋にこだました2人分の声。


大窓から差し込む新年の日を浴びながら、2人はお正月御膳を口に運んでいった。



「縁起物に雑煮に、美味しすぎる炊き込みご飯…最高のお正月の朝だね~」


「全部美味くて泣けてくるわ…今年も美味いもので溢れる1年でありたいね。となれば今日のこの御膳は最強の縁起担ぎですわ」


「はまぐりもさ、確か貝殻が一対でぴったり合わないといけないからってことで、人間関係の良好さを願って頂くんだよね。神様も一対って話も聞くし、私たちもそう在りたいね~」


「はぇー…そうなんだ。マクロとミクロは繋がってるから、神様がそうならいずれ人間の魂も旅を続ける内にぴったり合うような人と出会っていくのかね。てか正月からこんな良い物食べてたら我々、このまま神世まで駆け上がっちゃうんじゃないの?」


「神世か~…でもほんとに、神様の世界が有るとしたら…きっとこんな風に愛されて愛されて、愛に溢れた、とっても穏やかな世界なのかも」


「なるほど。じゃぁそこに住むには、その御魂も愛を知り穏やかでないといけないってことかぁ」


「此処は、人間界でも有数の神世に近い場所だったりして!」


「おいおいマジかよ…じゃ、穏やかさと愛を分け与えて貰って帰らないとだね」


「うん。此処を出ても、この暖かさを忘れないように過ごそう」


「大丈夫。忘れたって、また何度でも来ればいいさ。せっかくだから節分祭の時にも来ようよ」


「うん!楽しみにしてる」






ーーそれから、食事を終えて。

10時から行われるという御祈祷を受ける為、本館の中庭へと移動した2人。


既に多くの宿泊客がその時間を待っている屋内に、理路整然と並べられた御座。

スリッパを脱いで赤い絨毯に上がり、先に座っていたお客さんに倣って腰を落ち着かせた。



「わ~…!何か、緊張しちゃう…」


「あのお社に向かって、祝詞が奉納されるんだよね。巫女さんによる舞も一緒に」


「有難すぎるからもう先に拝んでおこう…」



そんな話をしていると、10時を合図する太鼓の音が響き渡った。

背筋を伸ばして中庭を注視する2人の前に、神職の衣装に身を包んだ望月が現れる。


礼と拍手が丁寧に成された後、中庭に建てられた小祠の前にて祝詞が奏上された。


望月の声が響き渡る旅館の中。静寂が寄り添った空間で、続いては太鼓が打ち鳴らされる。

巫女さんによる舞が奉納されると、美しい鈴の音が天高く届くようだった。


続いて、袈裟を纏った男性によって小堂の前にてご祈祷が執り行われる。

地より深く響き渡るような声音で唱えられるお経は、再び太鼓の音と共に空間を圧倒した。

一連の儀と錫杖の音で浄められた場に、清々しい風が舞い込んでくる。


悠久とも思えるような、荘厳で豊かな時間が続く。

全ての神事仏事が滞りなく済まされ、望月は改めて宿泊客へと頭を下げて口を開いた。



「皆々様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。本日はお集り頂きまして、誠に有難う御座いました」



礼に始まり、礼に終わる。

神聖な儀式の全てに全員が心を落ち着かせ、祈るという時間を共にした。



「素敵だったね…!旅館の中でこんな体験ができるなんて!」


「すごいよね。また参加できて良かったわ」



小堂の前に並んで線香をあげ煙を浴びた2人は、続いて小祠の前で振る舞われたお神酒と甘酒を味わった。

それぞれが感謝を述べ、参加した全員に地元特産品と工芸品の福袋が配られると、旅館での新年御祈祷は終了。


解散して各々の次の予定へと向かい始める宿泊客を見送りながら、周は配られた福袋を開いて笑顔を浮かべた。



「色々入ってるね~!わ、この紅白お猪口かわいい!」


「おお。私のと合わせて4つあるから、はなやぎで争奪戦ですな」


「なんでそうなるの?!平和に行こうよ!人数が4人の時とかに酒盛りしよ~」


「まぁそういう方法も有ります、か」


「血の気が多いよ…!」



地元の職人さんが作った縁起箸や手ぬぐい、特産品を使って作られたジャムや干物、お茶など。

先ほど振る舞われたお神酒や甘酒が入っているのを確認して、皆で飲もうと2人にこにこ話していると。


旅館スタッフの間を縫って、料理人の服を着た男性が歩いてきた。

厳つい顔つきとがっしりした体格のその人は、驚いた周に深々と頭を下げてみせる。



「……此度はご宿泊頂きまして、有難う御座います。料理長を務めております、洲橙(しゅうとう)と申します。そちらの潮から『レシピがほしい』と頼まれ、簡単にではありますがまとめて参りました。良ければお納めください」


「え、え~!お忙しいでしょうに、昨日の今日で…!お手数おかけしました!ありがとうございます!」


「…料理をお褒め頂きましたこと、心から嬉しく思っています。お菓子作りの才に長けていらっしゃると常々聞いております。少しでもお力添えできましたら幸いです」



洲橙と名乗った男性は、外見に反してあまりにも畏まった態度で、周へ恭しくレシピの入った封筒を差し出した。

レシピを丁重に受け取り、胸の中に大事に抱き留める周。

その様子を満足げに見つめた洲橙は、姿勢よく頭を下げた後、厨房の方へと戻って行った。



「め…めちゃくちゃ申し訳ないんだけど…!家宝にするよこのレシピ…」


「いやぁ、めちゃくちゃ嬉しそうだったねぇ…洲橙さんは嬉しいし、あまねんはレシピが増えるし、あれ?ウィンウィンじゃんか」


「また泊まりに来て御礼しなきゃ。節分祭の日絶対空けとくね!」



ーーーそれから、荷物を回収後、チェックアウトの手続きを済ませた潮と周。

別館の前で待っていた望月に見送られてタクシーに乗り込むと、ちらほらと粉雪の舞う中、発進した車中から旅館を振り返る。

望月はただ静かに、タクシーが見えなくなるまで頭を深々と下げていた。


潮たちもまたその姿を最後まで見送って、次の新年イベントへと向かった。






「てなわけで、パンケーキとチョコレートベイクドチーズケーキ、どっちが好き?」


「えっ…えーと…潮はどっちが好き…?」



ーーーイベントカフェ『絵本の世界』にて。


招待状の通り予約していた席へ案内された2人は、ランチメニューを食した後、早速課題に激突していた。

予約していたパンケーキとチョコレートベイクドチーズケーキを前に、机の上で両手を組んだ潮が深い思案を始める。



「ふむ。潮はどっちが好き…?と聞き返してきたということは、どっちもそんなに好きじゃなかったからそっちの好きな方でいいよ?説が濃厚だな…」


「いやいや!そうじゃなくて、潮はどっちを食べるつもりで予約したのかな~と思っただけ!深読みやめて!」



慌てる周を横目に、潮は2つのスイーツを見つめながら続けた。



「違うんよ。別にどっちかが私の好きなものだったわけじゃなくて、実際予約取る時は3択だったのよ。①パンケーキ ②チョコレートベイクドチーズケーキ ③苺のスフレだったのよ」


「う、うん…」


「でね?あまねんはいつもピンク系が好きだけど、スフレのイメージがあんまりなかったのよ。そうなると、ふわっふわのパンケーキは苺も乗ってるから好きそうだし、チョコレートベイクドチーズケーキは普段そんなにケーキ屋さんで見かける感じでもないから特別な感じするじゃん?だからその2択で好きな方選んでくれるだろうと思ってたのね」


「なるほど…!」


「でもその反応だと、多分苺のスフレが正解だったんだなって悟りました。あーーー今日どうする?新年早々だけどやめとく?」


「いやちょっと待って、潮!判断が早すぎる!早すぎるよ!」



席を立ちあがって店を後にしようとした潮を必死に引き留めて、もう一度座らせる。

スイーツ1つ食べるだけでこの問答をしている自分たちを改めて笑った後、周は潮をしっかりと見つめて言った。



「あのね、パンケーキとチョコケーキがいやだったわけでも、苺のスフレの方が良かったわけでもなくって。私はほんとに、せっかく連れてきてくれたから潮が好きな物を食べてほしいだけなの。だから、潮が好きな方を選んでほしい!それだけ!」


「いや、違うね。苺のスフレが食べたかった顔だねそれは」


「拗ねないでよ~!」



中々嚙み合わない2人だったが、結局その後周がパンケーキ、潮がチョコレートチーズケーキを食べることになって落ち着いた。

瑞々しい果物が周りを囲み、蜂蜜と生クリームのかかったふわふわのパンケーキ。

「いただきます」と一口食べた周が頬を緩ませたのを見て、潮は一つ安堵の溜息をつく。



「これ、絵本のスイーツそのままなんだよね?めちゃくちゃかわい~」


「そうだね。頼んだスイーツと対応した絵本を、この後小さいサイズで貰って帰れるらしい」


「え!嬉しい…!潮と初めての旅行記念で大事に飾っとこう」


「かわいいこと考えつきますなぁ。私もはなやぎ思い出コーナーに飾っとくわ」



サンプルで置いてあった『ふしぎなはなちゃん 著者:柴田秋樹』と描かれたB5の紙をめくり、楽しみだねと微笑み合いながら食べ進めていく。

絵本の世界に入ったかのようなメルヘンな店内で、潮はスイーツのチョイスを再び話題に挙げた。



「で?ほんとに苺のスフレの方が良かったわけじゃないの?」


「えっ?いや、うーん…!」


「何でこう私は外であまねんの好みのものを選べないのかなぁ…」


「そうだよね?!はなやぎにいる時は好きな物買ってきてくれるもんね。何が違うんだろう…」


「いや、セリーとか蛍とかあのへんがあまねんに買ってきたものを覚えてて、間違いないものを買ってる節はある」


「なるほど…」


「でも何でか応用できないんよなぁ」


「ううん、でも私も潮の好きなものをピンポイントで当てるの本当に難しいなと思ってるし、お互い様だよ~」



他のテーブルでスイーツの可愛さに盛り上がったり、店内の可愛さにはしゃぐ雰囲気と相反して、潮と周のテーブルにだけややしんみりとしたような雰囲気が漂っていた。

これはまずいと周が空気を変えて、今度は特典について話し始めた。



「待って、小さい絵本もそうだけど、絵本キャラクターのミニマスコットも持って帰れるんじゃない?」


「あ、そうだっけ?勢いで予約したからあんまよく見てなかった」


「サイトに詳しく書いてあった!え~めちゃくちゃかわいい。7つの中から選べるんだって、どれにしようかな~」


「『森のサボテンくん』のビジュ結構好きなんよなぁ」


「『パンダのパンくんはパンがすき』って聞いたことある!私萌ちゃんに絵本買ってプレゼントしたかも…萌ちゃんに渡そうかな?」


「お。じゃぁ、私は芹の好きそうなもの選んでプレゼントするか…これどう?」


「えっ…」


「あ、やめますね。ははは、こっちだったか」


「う、」


「ってそんなわけないじゃーん。分かってるって、何年一緒にいると思ってんの?これでしょ」


「……どう、どうだろう…」


「っていう冗談ね?今のはダウトで、正解はこっちってワケ………………無言やめてね?」



ついに何も言わなくなった周を、4連続で外した潮が無気力に見つめる。

じゃぁどれにすればいいのさ!とスマホの画面を下にして突っ伏してしまった潮の腕に、周がそっと手を添えた。



「セリーはね、潮が選んだものは全部貰ってくれると思う。でもね、セリーは多分…『らいおんのるいるい』が好きだと思うよ…」


「何で分かるのさ…!」


「エゾモモンガとかもそうだけど、セリーは白い動物が好きなイメージだなぁ。この『らいおんのるいるい』は白い毛並みだし、おめめもキラキラで可愛いし、多分好きだろうな~と思って」


「くっ…確かにそう言われたらシマエナガとかエゾオコジョとかのガチャガチャやってたわ…」


「じゃ、じゃぁ、パンダのパンくんとらいおんのるいるいにしよっか…」


「うん…」



どう足掻いても潮が落ち込んでしまうと悟った周は、諦めてスイーツと一緒に提供されたおしゃれな飲み物を飲む。

クッキーがちりばめられた紅茶のシェイクに舌鼓を打っていると、それを見た潮が爆速で回復してうんうんと頷き始めた。



「だよね?あまねんは基本的に紅茶が好きなイメージなのよ。うんうん、良かった良かった」


「うん!これ美味しい。紅茶って飲んでると落ち着くんだよね~」


「……やっぱあれだわ。何か、人の好きな物ってさ、覚えゲーじゃん?私自分の小説の設定で脳のキャパ使っちゃってるから、その人の主要な情報以外あんま入っていかないんだよね」


「むしろあれだけ色んなもの書いて、日常生活の色々なことまで頭に入ってるのがすごいと思うよ…無理しないで…」


「ありがとう…まぁできないなりに、人の喜んでる顔と貰ってるものを結び付けて覚えてるのね。だから、微妙だった時の状況までインプットできてないし、喜んでる時の状況もピンポイントで覚えてるから他のものに応用できないみたいな」


「うんうん」


「セリーが『エゾオコジョ』が好きなのは知ってるんだけど、その場の選択肢に『エゾオコジョ』が無かったら詰みって感じなの。『白い動物』ってとこまで思考が行けないみたいな。分かる?」


「うーん、潮って、人間関係の学習の仕方が独特だよね…小説だとすごい語彙だったり人間模様だったりするのに」


「現実世界と想像世界がどっちも同時に脳みその中に存在してるんだけど、こう…それぞれで思考する時の分岐の仕方とか、キャパまで多分全然違うんだよね。だから小説書いてる時に現実世界の話されても、ふぇ?って感じの対応になってると思う」


「なるべく執筆中は声掛けないようにしてるけど、そんな潮レアだから今度話しかけてみようかな~」


「現実世界の思考回路に戻るまで数秒ラグがあると思うけど、それでも良ければどうぞ」



そんな話をしながらスイーツも飲み物も空になり、一息ついて。

各々絵本を選び、帰り際にミニマスコットを受け取ってカフェを後にした。



「美味しかったね~!今度のおやつ、パンケーキにしよっか」


「お!蛍のじいちゃんから苺届いてたんだっけ」


「そうそう!キウイとか蜜柑もたくさん入ってたから、かなり豪華にできるよ~」


「パンケーキ♪パンケーキ♪」



ご機嫌になった後ろ姿を見て微笑みを浮かべながら、お土産を少し買ってタクシーに乗り込む。



「あー。何か、初日の出見たのがめっちゃ遠い昔のようだわ…」


「分かる!すごく密度の濃い年末年始だったな~。素敵なお正月を迎えられて幸せです!ありがとう!」


「蛍たちが写真送ってくれって言ってたけど、あれよあれよという間に楽しい時間が進んでいったから、写真撮る暇なかったわ」


「あ、私意外と撮ってるよ!こんな機会滅多にないから、思い出に残さなきゃって必死だった。後でトークの方に送っとくね~」


「マジかよサンクス。でもそれって私しか映ってないんじゃ…?」


「大丈夫!潮が気付いてない内にインカメで撮ったりしてたから」


「いや声掛けていいんだよ?写真撮るからこっち向いてとか声掛けていいんだよ?」


「潮、一生懸命食べてたり、一生懸命作業してたりするから、それはそれでいいな~と思って!」


「絶対めっちゃ察し悪いやつ映ってるやん…」


「あ、でもほら。望月さんが気を利かせてくださって、ツーショットも何枚か撮ってもらってるし。カフェでも店員さんに撮ってもらってるし!良い写真残せて幸せ~」


「そう言われたら確かに。トークに送ってくれる写真私も楽しみに待ってよっと」



にこにこと写真を見返す周。

はなやぎへの帰路を進みながら、潮は楽しそうな周を横目で確認して、静かに微笑んだ。








*   *   *   *   *   epilogue








(お帰り。ちょっとちょっとお2人さん、見ましたよトークの写真。仲良いじゃないっすか)


(おお、ただいまー。だから仲良いっつってんだろ。不仲認定やめてね?)


(てっきり新年から気まずいまま過ごしたかと思ってたよ。安心したわぁ)


(まぁ途中危うかったけど…)


(危うかったんだ…)


(で、でも大丈夫だったよ!何とか!てなわけではい、お土産だよ~)


(わーいお土産だぁ)



(おっかえりーーーーー!!!どうだった?!どうだった2人旅行!!)


(詳しくはトークの写真を見てくれ)


(え゛!まだ見てないや今から見る!)


(かのあただいま~!これお土産ね)


(おっきゃりーー!!!ありがっとーーーーん!!!)


(どういたしまして!)


(えっ…ちょっと待って?!何かあまねんがインカメ撮ってるのに全然こっち向かない察し悪い人いるんだけど…?!?)


(うわ!ツッコまれるとは思ってたけど一番言われたくないやつにツッコまれた…)


(違うの、この一生懸命な感じが潮らしくていいな~と思って、あえて声掛けなかったパターンだよ!)


(あ、そういうパターンか、ならしょうがないか!!てっきり気まずいまま過ごしたのかと思ったよー!!)


(お前ら揃いも揃って気まずかったかどうか気にしすぎでワロタ)


(私たちホントに仲良いよ…!?ね、潮?)


(いややめてやめて、それ逆に仲良くないけど仲良いフリする為に何か言わなきゃみたいな感じになってるからやめてやめて)



(おそのと芹はまた次会った時に渡そう。お、写真の感想来たぞ)


(おそのが「何かインカメツーショットでノリ悪いやついるけど大丈夫そ?」って言ってるけど大丈夫そ?)


(セリーも「おかしいな?周のスマホで撮ったような写真しかないのおかしいな?」って言ってるけど、大丈夫そ?!)


(「おかしいな?めちゃくちゃ楽しかったはずなのに総ツッコミ喰らってておかしいな?」送信っと…)


(私も何かフォローしとこう…!2人でめっちゃくちゃ素敵な時間過ごしたのに、何か誤解させててほんとにごめんよ潮~!)


(ええんや…わいがこんな楽しくなさそうに写真映ってるのがあれなんや…気にするな…)


(でもマジですごいよなぁ、この旅館の写真とか。大窓からこんな景色見れるの神じゃん)


(ご飯も全部おいしそーーーう!!素敵なところすぎる!!)


(イベントカフェもええなぁこの仕様。私の作品もいつかこんな風にしてもらいたいわ)


(え!そんなイベントあったら10回は通ってグッズ集めに行っちゃうよ~!絶対お願い!)


(かのあ、蛍の作品だったら凛推しなんだよねー!!イベントカフェするなら凛メインで頼む!!)


(凛メインマ?まぁそんな話が有難く来たらね。凛もお願いしてみますか)


(那由多の為に寧々さんも!寧々さんもお願いね!!)


(おけ、任せろ。何も決まってないどころか話すら出てないけど任せろ)


(あ、ちなみに言ってなかったけどわいは権藤(ごんどう)さん推しなんで。頼んだ)


(ふぁ…!?おい待て潮って権藤推しなん…?!マジでお前の好み分からんすぎる件について…!)


(権藤さんが巨石の上で精神統一するシーンが格好良すぎたんや)


(あ゛!空から声聞こえたシーンでしょ!その後出てくる凛がカワイすぎた件について!!)


(小首傾げた凛の「おむすび握って待ってるよ」よな?あれは神)


(え~!待って、その後出てくる澪標(みおつくし)さんの結界張ってるシーンが一番好きなんだけど分かる?!ちなみに私は澪標さん推し~)


(「私たちはもう充分守られた。この先は、自分たちで守ってゆける」よな?あれも神)


(おいおい、作者の前で盛り上がらないでくださいよ…へへ…ありがとなお前ら…)



(そうだそうだ。色々貰って帰ってるから、色々やろうぜい。紅白お猪口4つあるし何か呑む?)


(何やそれ可愛いな)


(わーい!!梅酒ある?!)


(あるよ~。かのあが梅酒しか呑めないから、5種類くらいストックしてるんだよね)


(お猪口で梅酒て。食前酒かい)


(お神酒も貰って帰ってるから、新年のお祝いも兼ねて乾杯しよ~)


(日本酒もありまっせー)


(お神酒は呑みたい!!)


(んじゃ適当におつまみ用意して、乾杯しますか)



(てなわけで改めまして、去年はお世話になりました。今年もよろしくお願いします。明けましておめでとう!かんぱーい)


(((明けましておめでとう!かんぱーーい!)))


(うま!)








第二十五話 了




ーーーーーーーーーーーーー


小説内の情景について、

以下の動画を参考にさせて頂きました


チョコレート

*https://youtube.com/shorts/IMOAF89eV34?si=s5mhxsZjj1nV_wMt

ーChocolate Cacao チョコレートカカオ 様


おしゃドリ

*https://youtube.com/shorts/SzHcFLSXGZo?si=OdX9R4LK3EzmuMIK

*https://youtube.com/shorts/eg6h5rg8ekk?si=rASb_z30JqV2dxr_

ーともカフェ もか 様






2026.2.11 日三十(ひさと) 皐月(さつき)







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