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空を飛びたい魔法使い  作者: ヨウレ
三章 新たな生活
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十三話 エイミーの魔法

 エイミーの勉強、


 勉強にはうるさい兄ちゃんだと思う。だいぶお尻を叩いた。実際に手でお尻を叩く事もあった。その甲斐あり人並み以上の成績を取ってくれる。

 しかし魔法は覚えてくれない。殆ど喧嘩しながら風水土魔法を覚えさせ、火魔法、炎の魔法まで覚えさせた。ここで僕も気を抜いてしまい、その先に進まなかった。


 僕は平民が魔法を覚えない理由を深く理解した。エイミーの友達は誰も魔法を使わない。だからエイミーも魔法を使いたいと思わない。教会も半数が使えない、使えるのは台所仕事をする女性が火魔法を使うぐらいだ。猟師も火魔法と風魔法以外は使える人間は殆どいないだろう。



 エイミーの魔法、


 休みの日を兄ちゃんの猟を手伝う日と決めた。もちろん週に二日ある休みの内一日だけ。村の中は誘惑が多すぎてエイミーが魔法の練習に集中出来ないと考えたからだ。


「兄ちゃん、私猟師にならないよ!」


「そうか、何になりたい?」


「先生」


「そうか」ちょっとにやける。


「だから帰ろうよ!」


「ダメ、メインの目的は魔法の練習だから」


「なんで、魔法の練習するの?」


「兄ちゃんの妹だから」


「良く分かんない」


「まあいい、練習始めよう」


「じゃあ、右手出して。分かる?」


「分かるよ」おずおずと右手を出した。


「おお、ちゃんと分かってるね!」

 僕は水筒からエイミーの手のひらに水を掛けた。


「水魔法で水を玉にして手のひらの上を転がして」

 おっ、きれいに転がせてる。


「ふ、ふ、上手でしょ」


「思ったより上手だね! 次は左手を出して」


「うん」今度はサッと左手を出す。

 水を掛けると水玉を作りきれいに転がす。顔を見ると余りにも自慢気に笑うので、ほっぺをツンツンした。


「何よ! 兄ちゃん」


「あまりにも自慢げだったから」


「だって、上手にできたでしょ!」


「うん、上手にできてる。でも訓練は次からだよ。両手を出して」

 今度は、何も悩まず両手を出した。


「両手に水を掛けるから両手のひらに水玉を作って」


「あれ、出来ない」

 片方の水玉はできるが、もう片方の手に注意を向けるとできてた水玉も崩れる。


「兄ちゃん、できない」と、エイミーがあきらめた。


「できないから練習している」


「兄ちゃん、できるの?」


「もちろん、できなきゃエイミーにやらせないよ」


「ほんとう?」

 水筒を手渡し。


「水を掛けて」

 両手の上に水玉を一個ずつ転がした。


「もう少し水を掛けて」

 右手に二個、左手に二個、計四個の水玉を手の上で転がしてる。


「どう? なかなか上手でしょ」


「うん、すごい。本当に私もできる?」


「もちろん、兄ちゃんの妹だから間違いなし。もう少し練習しよう」


 額にしわを寄せながらエイミーは黙々と練習する。


 週一回のエイミーを連れての猟に、コツコツと魔法の同時発動の練習をさせている。一月ぐらいは真面目に練習していたが、それ以降は露骨に嫌な顔をし、最近は憎まれ口を叩く。


「エイミー、手を出して」

 最近は肌寒いので手に水を掛けるのも嫌がる。そこを宥め賺(なだめすか)しやらせる。左手に水玉を作らせ、更に右手の手のひらにもうひとつの水玉を作る練習。

 でも嫌々ながら素直に練習するところはまだまだ可愛い。


「……」エイミーが手のひらを凝視してる。


 釣られて覗き込むと、ころころと両手のひらに水玉が一個ずつ転がってる。


 弾けるように立ち上がると、

「やったー! できた。できた。できた」と、跳ね回ってる。


「おっ、きれいにできてる。頑張ったな」と、言いながら頭を撫でてやった。


「兄ちゃん、ちゃんと見た? きれいにできてたでしょ?」


 やはり出来ると嬉しいようで、いつもより顔のニコニコ具合が高かった。


 喜んでる妹を見ると僕もとてもとても嬉しい。習得まで三月みつきかかった。練習開始から習得までの日数は十八日で僕と変わらない、個人差は無さそうだ。

 *この世界の一週間は六日



 年末まで一月ひとつき


 「兄ちゃんのバカ、大嫌い」エイミーが泣いて家を飛び出してしまった。


 僕が馬鹿だった。物心ものごころ付いてからずっとここに住んで友達も沢山いる、簡単にこの地を離れられる訳がない。どうすれば良いか?


 エイミーは夕食の時間を過ぎても戻ってこなかった。あと十分過ぎても戻らなかった捜しに行こう。あと十分、あと十分、あと十分とジリジリして待ってると。


「こんばんは、シオンさん」と、玄関から声をかけられた。


「あ、こんばんは」良かった。エイミーの友達の母親だ。


「エイミーちゃん、うちにいます。今夜はどうしても帰りたくないと言ってるので家に泊めますね」


「すいません、ありがとうございます。ご迷惑をお掛けしますが今晩はエイミーを泊めてやって下さい。申し訳ないがよろしくお願いします」僕は情けなくて下げた頭を上げられなかった。



 翌日、エイミーが帰ってきた。


「ごめんな、エイミー。お前の気持ちを考えないで勝手に決めて、……」


「……」


「でも、どうしても行きたい。恩を返さないといけないんだ」


「……」


「エイミー」


「……誕生日過ぎたら行く」


「ありがとう、ごめんな」



「兄ちゃん、何で川に行くの?」


「今日は、猟でなく漁をします。それと、エイミーも七歳になるから兄ちゃんでなく兄さんまたは兄さまと呼ぶように」


「変なの。兄さまなんて恥ずかしいよ」


「恩返しに行くお家は騎士爵様だから『兄ちゃん』では恥ずかしい思いをするぞ」


「え、そうなの」


「そうだ。挨拶の練習も必要だな近いうちに始めよう」


「え~」



 小川に到着、


「兄ちゃん、どうやって魚を捕るの?」


「また、兄ちゃんと言う。普段から言いなれておかないと襤褸ぼろが出るぞ。じゃあ、やって見せるな」


 僕はスタンガン魔法で電気を川に流し込んだ。「パッン」と軽い破裂音が鳴り、四、五匹の魚が腹を見せて浮いてきた。


「どうだ、雷様の子供だ。昔話してあげた『始まりの王』がドラゴンを足止めしたときの魔法だぞ。威力は全然ショボいけどな。エイミー、この魔法は剣で切りつけたり、こん棒で殴るのと同じだ、だから使うときは好く考えて使いなさい」と、話しながら魚を回収してる。


「兄ちゃん凄い! 私もやる!」


 それからエイミーに雲母の作成、攪拌を教えるとすんなりと覚えた。しかし発動までの時間、雲母の粒の大きさや攪拌のスピード等の制御や精度はまだまだ練習が必要そうだ。この世界の魔法は同時発動だけ難易度が高いのはなぜなのか少し不思議に感じた。


 半日ほど練習してやっと「パチパチ」と小さな音が出るようになった。

 僕がスタンガン魔法で魚を浮かせて回収していると、エイミーが兄ちゃんにスタンガン魔法を当ててきた。このバカ妹は暢気のんきに笑って反省しないので頭グリグリをして泣かせた。


「兄ちゃんの意地悪」とまだ分かってないので、その場で正座をさせた。どうも冗談でなく真面目にすごく怒られていると分かって来たのか涙目でシュンとしてる。


「手を出しなさい」


 妹の手を握り弱くしたスタンガン魔法を流した。


「キャーッ、痛い」


「エイミー、大丈夫か?」


「大・丈夫・じ・ゃな・い」と本泣きで訴えてくる。


「エイミー、さっき言ったばかりのことをなぜ守らない? お前は今人に怪我を負わせることをしたんだ。お前はこの先ずっとこの魔法を人に向けて使うな! 分かったか?」


「ごめん、兄ちゃん、ごめん、もう使わないよ!」と、まだ泣いている。



 しばらくして、

「今日は、もう帰ろう」


「うん」


 しばらく歩いてから、

「エイミー、負ぶってやる」


「え、いいよ」


「泣きながら歩いてると転びそうだから、ほらこっちに来い」


 エイミーを負ぶって歩き始めた。

「ごめんな、兄ちゃん、エイミーが魔法を覚えてくれたのが嬉しくて、つい舞い上がって危ない魔法を教えたのがいけなかったな。まだ早い魔法を練習させたり、痛い思いさせてごめんな」


「そんなことない、私が間違ったことしたから。ごめんなさい」


「ありがとう、ごめんな」



 年が明けたある日、


「エイミー、誕生日に何食べたい?」


「何でも好いよ」


「もう少し、考えろよ!」


「だってまだ一月ひとつきも先だよ!」


「だから、あと一月しかないだろ!」


「? 兄ちゃん、何言ってるの?」


「お前、ちゃんと聞いてなかったな! 誕生日にお前とお前の友達に兄さんが好きなものご馳走してやる! あと、兄さんと呼べ」


「兄ちゃん、自分で兄さんて言って恥ずかしくない?」と、ニヤニヤしながら聞いてくる。


「……恥ずかしい。でも、エイミーも直しなさい」


「うん」


「……」


「なに?」


「な・に・た・べ・た・い・の!」


「あ、ごめん。……お肉」


「お肉? 毎日食べてるよね」


「他に何かある?」


「ごめん、兄さんが考えるから、あとで人数を教えて」


 僕自身の料理のレパートリーが少なくエミリーに色々な種類の料理を食べさせなかった僕のせいだ。



 隣の街に来てる、


 誕生日には出来る限り色んな料理を出してあげたいと思ってる。その為の料理方法のリサーチと、調味料の購入だ。領都の市場もよく見ると色々ある。村の食卓にあまり上がらないソーセージ、ベーコン、チーズ、ジャガイモ等、子供が喜びそうな食材がいっぱいあった。

 村の農産物は日持ちしない野菜がメインだ。肉も生の状態で領都に運ばれるから加工肉がない。牧場は領都の反対側の草原にあるから乳製品も村には入ってこない。もう少し食生活を豊かにする努力をすればと悔やんでいる。


 ある日の夕食、

「このポトフ、美味しい」


 ある日の昼食、

「このカリカリベーコンと葉野菜のサンドイッチ、普通」


 ある日の昼食、

「このシチュー、美味しい」


 ある日の夕食、

「兄ちゃん、このソーセージとジャガイモのチーズ焼き、大好き!」


「ありがとう、兄さん(・・・)な」


 ある日の昼食、

「兄ちゃん、このミルクトースト(・・・・・・・)すっごく美味しい! 何で今まで作ってくれなかったの!」


「気に入ってくれたみたいだ。そりゃ、これだけハチミツ使ったら美味しいよ」



 誕生日のお食事会、


 エイミーとエイミーの友達もみんな喜んでくれた。エイミーが泣いてる。友達も涙ぐんでる。僕はバカな兄ちゃんだ。何にも見てなかったし、何も知らなかった。ごめんな。



 数日後、


 馬車を仕立てて今日この村を離れる。

 エイミーの友達、その家族、教会の人間、沢山の人が見送りに来てくれた。


 ありがとう、さよなら、


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