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第十一話 魔王の現実


「で?助けたは良いものの?休ませる場所が足りないと?」


「はい・・・とにかく助けるだけ助けたんだけどその後を考えてませんでした・・・」


「申し訳ありません影人様!こうなれば私の命で償いを・・・!」


サタンが責任を取ろうと自らの右腕を胸元に突き刺そうとするが、

後ろからフォレストウルフに羽交い締めにされ、止められる。


「ちょっと!?ご主人様の前でなにやろうとしてるんですか!?

子供もいる前でそういう物騒なことは止めて下さい!!!」


「離せェェ!!邪魔をするなァァ!!」


「いやー大変なことになったね主様。不満があるなら僕が夜の相手を・・・」


そんな騒ぎを横目に、アスモが俺に豊満な胸を露骨に見せてきて誘惑する。

止めろ!サキュバスだからって言ってもせめて時と場合を考えろ!


「いらんわ!もう俺のストレスが天元突破しそうだよ!」


どうしてこうなったかは少し前に遡る・・・。



ーーーーーーーーーーー



(影人ー!こっちの救助終わったから来てー!場所は郊外の東門!)


(分かった!今行く!)


俺は街の郊外を回っている時に喜美の報告を受けて街の東方向に

向かっている最中だ。一応、人がいる所を避けながら通ったが

所々息絶えた人を何人も見た。さすがに実際見ると来るものがあったことは

否定出来ない。フォレストウルフも何か来るものがあったようで時々暗い表情を見せていた。


「ご主人様!そろそろ目的地です!」


「分かった。じゃあここで降ろしてくれ。」


「了解です!」


俺が降りるとフォレストウルフが人型になった。

空間操作の魔法を実は喜美のを見たので使えるが正直こういうのも

好きなので今はこれでいこう。今、空間操作の魔法を使ったらフォレストウルフが

どんな反応をするかなんて予測できる。・・・可哀相だ。


「ご主人様には・・・その、他に従者とかいるんですか・・・?」


「ん、いるぞ。悪魔が六人」


「ええ!?悪魔!?それも六人も!?本当底が知れませんね・・・」


「ちなみに全員人型な」


そう聞いたフォレストウルフは沈黙した。

まぁ予想通りの反応だな。でももっと仲間を増やした方が

将来役に立ちそうだなー。あ、そろそろフォレストウルフの名前考えとくか。





ーーーーーーーーーーーーーーーー





「あ!やっと来た!こっちだよー!」


「悪い、ちょっと時間かかった。で何人いるんだ?」


ぱっと見でもかなりの人数を救ったことが分かる。ハデスが仁王立ちで

ドヤ顔をしているので多分ハデスも頑張ったのだろう。一応後で褒めておいた方が良いな。


「えーと・・大体100人ってところかな?」


「結構多いな。で、避難場所は何処にしたんだ?」


「え?」


「え?」


「影人様!救助した街の者を連れてきました!」


「は?」


そして今に戻る・・・・・・。




「はぁー・・・でも俺もそういうこと言ってなかったし、責任は俺にもあるな・・・」


「滅相もありません!全て我らの思慮が足りなかっただけの事!

責任は我々全員にあります!何なりと罰をお与え下さい!」


「謙遜は良いよ、サタン。それにさ・・・お前はそう思ってもそれ以外の奴が

どう思ってるかは分からないぞ。」


「何ですと!?」


だって俺から見ても嫌そうな奴が分かるし。主にベルフェとマモンだけど。

どれだけ従順なのかはやっぱり個人差があるみたいだ。


「貴様らぁ!何だその態度は!もっと影人様を敬え!崇め讃えよ!」


「いや、サタン。お前ちょっと真面目過ぎるだろ。もっと気楽に

自分のやりたいようにやればいいと思うなー。というかお前の忠誠心が怖いわ・・・」


「マモンの言うとおりだと思う・・・私は面倒くさいのは嫌い・・・」


「何だと貴様等!!!」


「ほら、ちょっと冷静になれサタン」


俺が肩に手を置いて冷静になるように言うとサタンは恐れ多いように


「影人様の手を煩わせるまでもありません!」


と言ってきた。

うん、サタンは純粋に俺に従ってくれてるしその思いが自分自身の

気持ちなのは見てきて分かってる。でもマモンやベルフェの考え方も

それはそれで良い。自分に正直になるのも良いと思う。

今回の場合はその辺の考え方の違いが出ているのが問題であって

お互いにちゃんと理解し合うことが必要になっただけなんだよな・・・。

・・・なんか俺まるで中間管理職の立場みたいだな。


「うーんとりあえず今はどうするか・・・。よし、アスモ!」


「何か用かな?主様?」


「後は・・・お前に任せた。悪魔の中で一番お前が大人だ」


「主様・・・まさか僕みたいな子が好み・・・」


「違うわ!どうしてそうなるんだ!あの三人の収拾はお前に任せるって言っただけで

どうしてそうなるんだ!?」


動きが気持ち悪いのに見た目が良いと何故か興奮してしまう・・・!

きっとこれはサキュバスの魅了か何かだ、そうだそうに違いない。俺は悪くねえ!


「えー・・・あの三人の収拾をつけるのは骨が折れるんだけど・・・。

分かった、僕に任せて。・・・あとで夜這いして良いかな?」


「駄目に決まってるだろ!?」


もうやだこいつら・・・。かなり脱線したし、もう真夜中だよ・・・。

はぁ寝てしまいたい。そして何もかも忘れて自由になりたい・・・。


「あのー?ご主人様?それでこの人達どうするんですか?」


「ああーそうだった・・・。・・・とりあえず中心部の噴水ある所に運んでくれないかな?

あそこなら多少はスペースがあるだろう・・・」


「分かりました!それで私は人型で運んだ方が良いでしょうか?」


「うーん・・・いや、獣の方でやってしまって。説明は・・・。喜美!説明は頼んだ!」


「え!?ちょっと待って!?」


なんか言ってたような気がしたが眠たくなったので獣の姿になった

フォレストウルフの頭の上に寝させて貰うことにする。

後は任せた諸君!なんか興奮したような狼の荒い息はきっと気のせいだ・・・。




ーーーーーーーーーーーーー




おはようございます、魔王に成り立ての多田影人でございます。

どうしてこんな堅苦しい挨拶をしているかって?

なんか気づいたら噴水の所にいて、他の皆さんや救助した人達が寝ていました。

問題は・・・


な ん で 俺 の 周 り で 女 性 陣 は 寝 て ん だ


正確に言うと喜美が俺の右側に寄りかかりハデスはその反対側、

フォレストウルフが俺の右足を掴み、ベルフェが左足を掴んで寝ている。


・・・どっからどう見てもハーレム状態です。本当にありがとうございました。

というか動くに動けないし、かなり寝たと思ったのにまだ夜明け前だった・・・。

とにかく動けないし暑苦しい今の状態をどうにかしなければ・・・。


「・・・おはよう、主様。気持ちよさそうに寝ていたね」


「・・・ん、アスモか。頼むどうにかこの状況を打破する策を・・・」


「ふふふ・・・普通はこの状況に興奮するところじゃないかな?変わってるね。主様は」


そう言った彼女は何処か妖艶な雰囲気を出していた。興奮しないんじゃなくて

こんなところで欲望に身を任せて興奮したらどんな修羅場になるかは

想像に易いからしないようにしているだけだ・・・。


「うっせ。我慢しているだけだよ。それよりも助けてくれないか?

結構力強く握ってきたもんで、俺の体がなんかギシギシ言ってるんだけど?」


「はいはい、さすがに四人に同時に掴まれたら辛いよね」


「分かってるならもっと速くしてほしかったかな・・・」


どうにかアスモの手を借りてあの包囲網から抜け出したが正直、今やることがない。

あとはまだ行方不明者の捜索くらいだな。

そっちの方はギルドに所属していた人にぶん投げることにする。

面倒なことは嫌いだ。


「主様、まだ寝起きで気分が良くないと思うから散歩なんてどうかな?」


「うーん、まぁ良いか。目覚ましには丁度良いし」


「では私も同行します!」


「ああ・・・サタンも起きてたのか・・・」


「はい!悪魔は主人の命を守ることが指命ですから!」


うん、それは悪魔というよりは執事とかだと思うんだ。でも仕事は出来るから

この程度は気にすることもないか。


「じゃあ街の周りでも回るか」


「うん!」「分かりました」




ーーーーーーーーーーーーーー




「んー!目も覚めたし、もう朝だから他の人も起き始める頃だな。

二人は様子を見に行ってくれないか?」


「分かったよ!」「了承しました!」


日の出を跨ぐ形で散歩をしたが偶にはこういうのもいいもんだな。

目が覚めて頭もすっきりした感じがする。

今日も一日頑張りますかね。・・・ん、なんか門の近くに誰か居るな。


「~~~♪!」


そこにはベンチに座って鼻歌を歌っていた若い女性がいた。

見たことは無いが、彼女も恐らくこの宿場町の住民なのだろう。

こんな時間に門の近くまで来て歌う理由が何なのか気になるけど。


「あのー、おはようございます」


「ん!おはよう!君はこんな朝早くから何をしていたの?散歩かな?」


「ええ、そんなとこです。あなたは?」


「私も同じだよ!朝の散歩は気持ちが良いからね!

昨日はあんなことがあったからね・・・ちょっと気分を紛らわす為に」


「そうでしたか・・ちょっと失礼でしたかね・・・」


「いやいや!大丈夫だよ!大分気持ちに整理がついてきたし、

気にすること無いよ!それじゃ私は街の中心の方に戻るから!」


「あ、はい」


なんというか不思議な女性だったな・・・と思った。

でも、話していて楽しい、というか面白い感じの人だった。また会えると良いな・・・。


「あ、そうだ、・・・強いからと言って力を使いすぎないことだ。自分も周りも。

力には代償が伴うからね。よく覚えておくんだよ、新米の魔王さん♪」


!?・・とっさに彼女が去っていった方向を見たが誰もいなかった。

何だったんだ今のは・・・!?俺が魔王であることを何故知っていたんだ?

それよりも今の声をどこかで聞いたような気がするのだが、後少しの所で出てこない。


ただ今のは忠告なのか、それともまた別の意味があるのか気になるところだ。

予想外の事もあったが、概ねこの散歩は良かったと言えるだろう。

俺は今の事を考えながらも中心部に戻っていった。





「あれが今回の魔王の保有者かぁ・・・!面白くなりそう・・・!」


そんな彼女は霧のように霧散し、そこから消えていった・・・。




ーーーーーーーーーーーーー




襲撃があってから一週間が経った。

あれ以来、魔物の襲撃は無く、街は復興に向けてあちこちで人が

行き交っている。本来であればこういった仕事はギルド本部の職員が

中心となって行うのだが、あの事件によって本部の職員の殆どが行方不明、

また街に存在する四つのギルド、冒険者ギルド、魔術師ギルド、商人ギルド、

工匠ギルドの幹部クラスのメンバーも行方不明ということになっており

襲撃後二、三日はまともに対策を練ることも出来なかった。


恐らく消えた人物はマタザの息がかかった奴らだろうが今、そんな事を言ったところで

パニックになるだけだと判断したのでまだ街の人々には言っていない。


「はぁ・・・復興が進んでやっとゆっくりできますなー魔王様ー」


「いやいや、まだまだこれからですよー女神様ー」


「・・おい、どうしたらそんなすぐに平和ぼけするんだ・・・。

もっと自分の称号に合った立ち振る舞いというのをすべきだろう!」


「まぁまぁハデス、お前もお茶でも飲んでゆっくりしよう・・・」


「そうだよー姉様ー。ゆっくりしようよー・・・」


「誰が姉様だ!・・・しかしお茶は頂くぞ。・・・ずずっ・・・はぁー」


口うるさいハデスも喜美が出したお茶を飲ませれば即沈静化。

やっぱり平和が一番だよなー。そんな積極的に戦争だ、戦えだ、言ってる

のは良くない。うん、平和が一番!


「だったらちょっとは私の仕事を手伝ってくれませんか!?」


三人でゆっくりしていた所に声を荒げて入ってきたのはクスだった。

実はクスは今は数少ない本部の職員で、現在臨時のマスターとして働いているのだ。

つまり、実質的な街のトップ、要は町長的なお仕事をしているのだった。


「えー・・・?クスが必要だ!って言った街の被害情報の奴はもう出したぞ?」


「それに関しては本当にありがとうございます!お陰で仕事が少し減りました!

でもその情報を元に方針を固めるのは全部私なんです!それに四つのギルドの

再建だってサポートしなくちゃいけないんですよ!?

マイさんが言ってましたよ!もう魔王様の手だって借りたいと!」


「ちょ!?クス!その話はあまり大声に出して言うな!今は気づかれてないけど

もしこのことが表になったとき被害を受けるのはお前達もなんだぞ!?

というかなんでクスがマイさん知ってるんだ。」


「そんなことよりも今は街の復興です!元から頭良い上にスキルでさらに向上できる

影人さんは喉から手が出る程欲しいんです!さぁ逝きますよ!」


「ちょ!?スキルはあくまで思考速度が上がるだけだって!?それになんか嫌な言い方

してなかったか!?」


「気のせいです♪」


「うわぁあぁあぁぁ!!!」


見た目と裏腹に悪魔みたいな性格してるクスに絶望だぁ・・・!


「いやー魔王様は大変だねー。人気者で」


「そうだな。しかしお茶は良い物だな。またくれ!」


「はいはい、今出しますよ~」


「あ、お二人にも後で手伝って貰うことがあるので来て貰いますよ!」


そんな悪魔みたいな狐の娘(クス)の死亡宣告を聞いた二人は硬直し、

冷や汗が止まらなかったという。ちなみに四人は一週間外に出る暇もなかったそうな・・・。


今回でとりあえずチュートリアル的な話は終わりです。

次回はちょっと伏線回になります。

主人公’sが魔王や女神らしいところを見せるのその後ぐらいからのはず・・・。

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