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墓王!  作者: 菊次郎
フィールの冒険者活動
93/129

王都散策

ご覧いただきありがとうございます。長らくお待たせして申し訳ありません。

これから13話ほど連日投稿いたしますので、お付き合いいただければ幸いです。


あらすじ ティアラとコロネと一緒にフィールからナルニール商会モリスの護衛依頼を引き受け、途中”赤の曲剣”と思われる集団に襲われるも撃退、無事に依頼を達成し王都に辿り着いた。

 すでに夕暮れ時の王都の中で、ナルニール商会の護衛を遂行し終えモリス達と別れた俺たちだったが、一番最初にやることが…再びモリスの元に戻り、「いい宿紹介してください」とお願いすることだった。苦笑いを浮かべたモリスだったが快く宿を教えてくれた。浮かべた苦笑いが、綺麗に別れたはずがすぐに再会したことによるのか、宿を教えていなかった自分の不明に呆れていたのかは定かではなかった。


 教えてもらった宿はフィールの音の鎖亭より値段が高い代わりに設備は良かった。ただ出された夕食は音の鎖亭のほうが美味しかった。調理人の腕か、はたまた素材の違いかは分からなかったが。


 さて、今いる場所はイカルス王国というフィールも所属している国の王都である。一応王都にも名前がついているらしいが、一々言わなくても王都だけで通じるため多くの人が名前を忘れたらしい。


 人口は50万以上と言われるが、国が発表している訳でもないため正確な数値を一般市民は知らない。主要産業は農業と牧畜と魔獣の素材…ではあるが、周囲の国家も皆同じであるため、産出物としては特筆すべき点は無い。ただ、イカルス王国は他の国より魔獣の森に接している面積が広いのと、森の魔獣が非常に強く数多いため、冒険者の質は他国より抜きん出ていると言われている。


 そもそも国家の成り立ちも300年ほど前、とある冒険者が森を切り開いたところから始まると言われ、現在の貴族達もその冒険者の仲間だったらしい。まだその流れが残っているのか、貴族であっても良く言えば気さく──他国曰く野蛮──で、特に魔獣の森に程近い領地を持つ貴族ほどその傾向が強い。しかし、質実剛健な貴族がいる一方、その先祖のせいで間違った方向に貴族たらんとする輩がいるため、変な選民意識を持つ貴族もいるそうだ。

 セフィリア曰く「良くも悪くもバラエティに富んだ貴族達の国」らしい。また王族はどんな人達かセフィリアに聞いたが、「あんな糞ガキなんざ知らん」とか言っていた。知ってるじゃねえか!とツッコみたかったが、セフィリアの渋い顔を見てやめておいた。


 翌朝、ちょっとした描画魔法を起動し、楽しみにしていた王都の散策を始めた。フィールで朝歩くと最初に感じるのは屋台からや民家からの朝食の香りだったが、ここ王都では人々のカツカツという靴音だった。今いる場所のせいか分からないが、しばらく歩いた限りでは屋台は見当たらず、その代わりに所々にカフェが見受けられるくらいだった。

 またフィールでは冒険者の数が多いため、武器や防具を装備している人がいて物々しい雰囲気が少しあるが、王都では剣を持つ人すら少なかった。しかし護身用のためか、短剣を腰に差したり懐に入れたりはしているようだった。


 武器を装備している人は少ないが、その代わりなのか服装はフィールよりずっと垢抜けていて、見ていて楽しい。また人種も多種多様で獣人やドワーフなど何人も見かけた。フィールにも獣人は何人もいたが、その土地柄のせいか戦闘に特化したような狼人や猫人、熊人の割合が多かった。しかし王都ではフィールより鳥人の獣人の比率が高いようだった。


 今いる場所が幹線道路のような場所であるため、裏道などに入ればまた状況はことなるかもしれない。美醜に関しては、人通りが多いここから見ても、ティアラやコロネほどの美少女は居なかった。頭ひとつどころかふたつみっつと飛び抜けていて中々誇らしい。


 そんな二人を見ると、ティアラは変わらず俺の後ろに控えていて、ぼんやりと視線を俺に向けている。ただぼんやりしているといっても、広く視界を広げているためそう見えるだけであって中身もぼんやりしている訳ではない。その証拠に俺がティアラに目を向けると、


「ご用事でしょうか?」


 と、すぐに聞いてくる。


「いや、ティアラも王都は初めてだよな?どこか見たい所とか無いのかなと思ってな」


「確かに初めてですが、私はご主人様の行きたいところについていきます」


「お、おう、そうか。コロネみたいにあっちこっち見てもいいんだぞ?」


 そう言ってコロネを探すと通り沿いの店の中を覗きこんでいた。店の中にはキラキラ輝く様々な魔石が並べられ、張り紙に「魔法陣の書き込み請け負います」なんて書いてあった。

 魔法具は魔石に刻んだ魔法陣を起動することで誰でも魔法を起動できるようにした物だ。詠唱魔法より魔力効率が良いため、火起こしや飲水収集など一般市民に幅広く使われている。魔石の大きさから使える魔法陣には制限が掛かるが、描画魔法という無数の魔法陣を使う俺にとってもいずれチャレンジしたい分野であった。その前に描画魔法でやりたいことが沢山あるため、まだまだ先になるだろうが。

 などと考えていたらいつのまにかコロネの姿が見えず、辺りを見渡すと一本脇に入ったところに市民用の市が立っていたようで、その中に突入していた。


「もう、コロネったら…」


 ティアラが少し怒り気味だったが、まあ俺も見てみたいと思ってたからちょうどいい。


「まあ怒るな、ティアラ。俺も見てみたいからな」


「かしこまりました」


 市場の元気の良さは古今東西どこも変わらないのか、そこかしこから威勢のいい掛け声が掛かっていた。表情がわかりにくいティアラではあるが、市場に入った途端目つきが狩人のごとく鋭くなったのを俺は見逃さなかった。


「ティアラ、小腹が空いたから何か適当に買ってきてくれ。何を買うかは任せる。そうだな…1時間くらいしたらさっきの入り口で待ち合わせるとしようか」


 ティアラに1000ゼルほど渡し、あまったら小遣いにでもしてコロネと何か買っていいと伝えた。


「ありがとうございます、では行って参ります」


 そう言い残したティアラは人混みあふれる市の中へ消えていった。その後姿はまるでバーゲンセールに突撃し、命に変えても戦果を得ようとする主婦の気概が透けて見えた。


「ティアラは主婦っぷりに磨きが掛かってきたなぁ…」


 少しティアラが遠くに行ってしまったような感慨にふけっていたが、よくよく考えればコロネはコロネでリアル格闘ゲームのような動きができるのだから、遠くに行ったという意味では似た者姉妹なのかもしれない。

 そんな事を考えながらぼーっとしてると、往来の邪魔だったのか後ろから男にぶつかってしまった。


「おう、兄ちゃん!ぼーっとしてるな!!気をつけろ」


 と、男は言い捨て人混みの中に消えていった。


「なんだ、まったく…」


 乱暴な男がいるもんだなんて思っていたら、近くにいた主婦が俺に気遣わしげに声を掛けてきた。


「ね、ねえ、あんた、財布スられてないかい?」


「あ、ほんとだ、あらら、やっちまいましたね…」


「あんなぼーっとしてたら盗まれてもしょうがないだろ?次から気をつけなよ?」


「ご忠告ありがとうございます」


 忠告をくれた主婦に一礼すると、その主婦は財布を無くしたのにちっとも焦っていない俺を訝しながら、人混みの中に消えていった。


「おにいちゃん?財布盗られたの?追いかけようか?」


 いつの間にか戻っていたコロネに声を掛けられたが、俺はそれを不要だと言い切った。


「いいよ、追いかけなくて。だってあれ…描画魔法で作った爆弾だもの」





 男は人混みに紛れ何度も辻を曲がり裏道に入りスラム街に至り、後ろから追跡してくる者が居ない事を確認し一息ついていた。


「へっ、お上りさんとか楽勝すぎるぜ。金貨持ったゴブリンと同じレベルだな」


 スリ取った財布は厚く、中でジャラジャラと音を立てているため否応にも期待が膨らむ。そんなニヤついた男を同じスリ仲間が見つけ声を掛けた。


「お、ピーターじゃねえか。その表情だと一山当てたか?」


「おう、青いローブを来たとっぽい男がいてよ、俺たちに「スッて下さいお願いします」って言ってたから、ちょっとお願いを聞いてやっただけだぜ」


 ニヤニヤと笑いながらピーターと呼ばれた男は自慢気に話をしていた。


「へー、青いローブか、俺も見つけたら狙ってみるか」


「やってみるといいぜ。だけど今頃泣きながら田舎に帰ってるんじゃないか?」


 もう一人の男と「それもそうか」と言いながら、お互い笑っていた。


 一応スリ仲間の流儀として、相手の財布の中にいくら入っているかは聞かない。ただ、大金だったら一杯おごってもらおうと考え、もう一人の男はピーターから少し離れた所から見ていた。そしてこれが功を奏した。


「さてと…じゃあお宝拝見っと」


 ピピッという何かの音とがした後、開いた財布の中に青い数字が現れ10から始まり、6,5になると黄色に変化し、3,2になると毒々しい赤色の数字でカウントダウンしていった。


「な、なんだ?」


「っ!ピーター!それを捨てろ!」


「す、捨てられるかよ!」


 男は何か嫌な予感がしたのだろう、ピーターに捨てるよう言ったが…欲深い彼はそれを聞き入れず持ったままであった。”0”、そう表示された瞬間、ボンッ極めて小規模──ソーイチロー基準ではあるが──な爆発が起き、スラム街に悲鳴が響き渡った。


「ギャアアアアアアアアアア!指、指があああああああああ」


「ヒッ、なんだよ、一体なんなんだよ?!」


 ありえない事が立て続けに起き、男は取り乱しピーターは痛さにこらえきれず地面にうずくまっていた。


 この一件でピーターは指を失いスリ家業を強制的に廃業し、またもう一人の男の口により「青いローブの男には手を出すな」という話が広がることになる。




 スリがどのような結末に至ったかは現場を見ることが無い俺には知る由もないが、まあろくな事にならないことだけは確かだろう。そんな俺の様子をコロネはまじまじと見ながら、


「おにいちゃん、おにいちゃんの笑顔って段々セフィリアおねえちゃんと似てきたね…」


 一体どういう意味か詳しく聞いてみたかったが、余計なツッコミは藪蛇になりそうだからやめておいた。

 なお、偽の財布には加速度センサーやら色々付いていて、一度落下したものは爆発しないようにはなっている。スッた財布を落とす間抜けなスリがいるか分からないが、一応他人に迷惑にならないよう配慮はしてある。また、カウントダウンが10からと時間を多めにとっているのは警告の意味を持たせ、しかも危険色まで使っているのだがら、よほどの強欲か馬鹿でない限りは捨てるはずだ。


 コロネと雑談をしながら市場の入口で待っていると、待ち合わせの時間より少し早くティアラが戻ってきた。ティアラは任務をやりきった戦士の顔をしており、胸には果物や惣菜など様々な物を抱えていた。


「お待たせして申し訳ありません」


「いや、大して待っていない。それにしても…随分と買い込んだな?」


 ティアラは俺とコロネに小腹を満たすどころか夕食にもなりそうなほど沢山買い込み、食べさせてくれた。余ったお金はティアラとコロネの小遣いにし、果物をかぶりつきながら街を歩いていた。

 市場の様子はティアラ曰く、「定番の商品はフィールより安く沢山売っているが、品数はフィールの方が多い」とのことだった。品数がフィールのほうが多いのは不思議だったが、フィールだと森から採れた一品物の商品が多いためらしい。そういえば日本に居た時も、漁港に近い市場だと見たこともない魚が売られていたりしていたため、それと同じような事が起きていると推測した。


 小腹を満たすどころか大腹を一杯にしつつ、続いては冒険者ギルドに向かった。王都の冒険者ギルドはさすがにフィールより大きく、扉も倍ほど厚いため中々に迫力があった。そんな重い扉を押し中に入ると、室内はフィールより綺麗で随分と広い空間が取られていた。ただその広さの半分くらいはギルドに併設されている酒場で占められていた。

 そして酒場にいる冒険者達の無遠慮な視線はどこでも同じだった。そんな視線が向けられるのは最初にティアラ、次にコロネ、そしてオマケに俺という順番だった。


「ひゅぅ、すげえ美少女だな」

「おい、お前声掛けてこいよ」

「一応男がいるだろ、ほら青いもやしみたいなのが」

「うっわ、弱そうだな。あれならちょっと小突けば女貸してくれるんじゃね?」

「小突いたら死んじまってそれどころじゃなくなるだろ」


 ギャハハハと品のない酒臭い笑いがギルド内に響いた。なんというか、どこに行っても絡まれるのがデフォなのがどうにかならないもんかなぁ…なんて思ってたら、ティアラが無表情に青筋を立てていて、コロネは指を鳴らして今にも飛びかからんとしていた。


「まて二人共、俺なら有象無象の戯言など気にも掛けん。男の嫉妬など俺への賛美に他ならんからな」


 この場を穏便に済まそうと考えティアラとコロネを抑えたが、何故か周囲の男たちが殺気立っている。


「おにいちゃん…ちょっと頭に来てる?」


「あ、あれ?」


 一触即発か、という時にギルドの門が開かれ、新たな冒険者がやってきた。


「お、ソーイチローじゃねえか!依頼見に来たのか?」


 そう気軽に声を掛けてきたのは昨日まで一緒に護衛依頼をしていたペタッキだった。


「こんにちは、ペタッキさん。王都だとどんな依頼があるのかなと思いまして」


「なるほどな、王都は王都で特色あるから面白いぜ。それにしても…なんだこの雰囲気は?妙に殺気立ってるな」


 ペタッキは周囲を見渡し、酒場でいきり立っている男たちを見て納得したようだった。


「ははぁ…お前らまた新入りに絡もうとか考えやがったな?」


「へへ…ペタッキの兄貴、ちょっとだけ新入りに世の中の道理を教えてやろうと思っただけですぜ」


「お前らなぁ…まったく、なあソーイチロー、今時間あるか?」


「ん?いいですよ、フィール行きの護衛依頼辺りが無いか探そうと思っただけですから」


「分かった、それは俺が見繕うからちょっと一杯飲まないか?あいつらがお前さん達におごるって言ってるからよ」


「ええ?!兄貴それはちょっと!」

「なんでそんな青もやしに!」

「女はいいけどな!」


 絡んできた男たちは椅子から立ち上がり口々に文句の声を上げていたが、ペタッキがギロリと一瞥すると一斉に座り直した。青もやしって俺のことなんだろうなぁ…と、若干残念な気持ちを持っていると、ペタッキは男たちが座っていた机の隣にあった他の机をくっつけ、一つの大机にして俺たちを手招いた。


「おーい、そこのウェイトレス、エール人数分…は無理か、エール6、オレンジ2持ってきてくれ。で、だ、ソーイチローたちに絡んできた四人は右からアガサ、ベルト、カール、デルドだ。たまに一緒に護衛依頼を受けたりする。今は護衛限定Dランクだったはずだな」


 よし、男A、B、C、Dで覚えておこう。


「それでてめえら絡んだ三人だが、ソーイチロー、ティアラ、コロネだ。てめら、フィールで大暴走あったの知ってるか?」


「そりゃ勿論ですぜ。一時期えらい噂になりましたからな」


「大暴走の防衛の立役者がそこのソーイチローだ。彼が居なかったら今頃フィールは灰燼に帰していたとも言われている」


「またペタッキの旦那は俺たちを担ごうとして…フィールの英雄は身の丈2mの大男って聞いてますぜ」

「いや俺は高笑いを上げながらゴブリンを焼き払いまくった白い男って聞きましたぜ」

「俺は街中で乙女の血を使った魔法陣で倒したって聞いたような」

「いやいや、戦鎚を担いだ魔法使いが一人で切り込んだって話だったが」


 一部セフィリアの噂が混じってるな…というか滅茶苦茶だ。ペタッキも若干呆れながら噂の訂正を行った。


「てめえらの話は嘘ばっかだぜ。そこのソーイチローがゴブリン20万匹を一人で倒しまくったのが本当だ。実際フィールに行ってみれば分かるぞ」


 ゴブリン20万匹ってどんだけだ。というか最初ペタッキも俺のことを大男と勘違いしてたじゃないか。


「「「「…」」」」


「まあそんなフィールの英雄に絡んだら…どうなるか分かるな?それとその女の子二人も糞強いぞ、お前達じゃまず負ける」


「「「「…」」」」


「あと、俺達が昨日の護衛依頼で襲撃受けたって話も知ってるだろ?」


「え、ええ、酒場でえらい噂に登ってましたし。敵40名からの襲撃受けて被害0って奇跡みたいな話だったから、思わず興奮して話聞いてましたよ。まさか…」


「ここにいるソーイチロー達三人が敵の半分を受け持ってくれなかったら、今こうしててめえらと話すことなんかできなかっただろうな。どうだ、この三人に奢りたくなっただろ?」


「「「「奢らせて下さい」」」」


 現金だな、こいつら…。で、それからは男ABCD達に色々と話を聞かれた。誇張された所は訂正したり、どんな魔法を使ったのか等など根掘り葉掘りで、話してる間は飯や酒もどんどん頼めと薦められたがティアラが市場で買ってきた物が腹に残っていたため、俺はあまり食べられなかった。ただ、コロネだけは別で俺の倍くらい食べていた。

 そしてまあ突発的に発生した宴は昼過ぎには終わり、無事お開きとなった。終わり頃には俺達が兄貴と姉御呼ばわりされたのは少し閉口したが…。そしてペタッキの約束通り、三日後に出発するフィール向けの護衛依頼を見繕ってくれた。


「よし、この依頼の中だとこの商会の護衛依頼がいいぞ。報奨金は少し安いが移動中の飯は商会持ちでトータルにするとこっちのほうが儲けが大きいんだ。あと御者のおっさんも面白い奴だから道中も退屈しないぜ」


 依頼票をペリッと剥がし俺に持たせてくれた。俺はその依頼を受けることを決め受付してもらった。


「ペタッキさん助かりました、ありがとうございます」


「なに、命の恩があるからこれくらいじゃまだまだ返せてない。何かあったら言ってくれれば手伝うぜ」


「そう言ってくれると頑張った甲斐がありましたね。そういえばさっきの四人組からさんざんおごってもらったのも構わなかったんですか?」


 そういうとペタッキは少し苦笑いを浮かべていた。


「あいつらが絡んで悪かったな。悪いやつらじゃないんだが、幸せそうな男女を見るととりあえず絡みたくなるとか言うんだ。んで、おごりなら気にするな、どうせ今日の話をネタに他の奴らから今日の分以上の飲み代は取り返すんだからよ」


 どうして俺の話が必ず誇張されて伝わるのか、仕組みが理解できた瞬間だった。


「あ、そうだ、もし分かったら教えてもらいたいんですが…この小剣のところにある紋章ってどこの人か知っていますか?」


 盗賊討伐の時に手に入れた小剣をカバンから取り出し、ヤギが二頭描かれた紋章をペタッキに見せた。するとペタッキは少し考えた後、答えてくれた。


「ヤギの紋章か…この国でヤギ関連の紋章は一箇所しかないぜ」


「そうなんですか、どこですか?」


「イカルス家、つまり王家関連だな」



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