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墓王!  作者: 菊次郎
フィールの冒険者活動
86/129

盗賊討伐の依頼

ご覧いただきありがとうございます


追記:投稿日を間違えて2話同時に投稿しました。

宜しければ一つ前の話もご覧頂ければ幸いです。

「フィールの街もすっかり元通りだなぁ」


「そうじゃな、被害が無かったこともあるがここは辺境の街じゃ。たくましさにかけてはどこの街にも負けておらん」


「だな」


 今日はセフィリアとフィールの街に来ている。ミストさん達は庵でお留守番という名の休暇を取らせている。どうしても俺やセフィリアがいると気になって休めないだろうという考えだ。会社の飲み会でいくら上司が無礼講だと言っても本気で無礼講にはできないのと似たようなものだろう。

 

 散歩がてら市場に入ると道の両脇には沢山の露店が並んでいた。色とりどりの果物や種類豊富な肉類、瑞々しい野菜、香り豊かな香草や薬味が大きなカゴや台に置かれ、所狭しと置いてある。


「お主は市場に行くのが好きじゃな」


「あーそうだね。なんでだろ、こういうのを見るのが好きなんだよね。旅先で市場を見ると地元と差を感じて、旅情を感じやすいってのもあるのかなぁ」


「ある意味お主は最も遠いところの旅人でもあるからの。お主の元の場所と比べてどうじゃ?」


 違う世界から来たことを知っている人はこの世でセフィリアのみ。ミストさん達にも話していないし、特に話す理由も無いため機会が無い限りは話すことも無いだろう。


「そうだね、露店じゃなくて建屋の中で売ってたり、すでに小分けにされてたり、品数自体は元の所のほうが多いかな。でもなんだろう、香りは圧倒的にこっちのほうが強かったり、品の彩色もこっちのほうが豊かなんだよね。賑やかさも上かな」


「なるほどのう」


 などと冷やかし雑談をしながら市場を抜け、冒険者ギルドに向かった。せっかくフィールまで来たのだからついでに冒険者ギルドで何か依頼が無いか探そうということになったのだ。そしてギルドに入り依頼表を物色する。薬草や魔獣の素材採取の依頼が特に多いがそれ以外にも盗賊の探索や行商の護衛補助など、大暴走の前よりかなり多いようだった。そんな選り取り見取りな依頼表を見ていると、後ろからギルドの副マスターであるシルクさんから声を掛けられた。


「セフィリア様、ソーイチローさん、お久しぶりです」


「こんにちは、シルクさん。仕事お疲れ様です」


「これはありがとうございます。うちのマスターは「シルク、たのむな」だけですからね。ソーイチローさんの爪の垢を煎じて飲ませたいです」


「あはは…」


「それでお二方、依頼を探しているのですよね?もしよろしければ受けていただきた依頼があるのですが」


 俺とセフィリアがお互いに目配せし答えた。


「話を聞いてからでもいいですか?」


「勿論です。ではこちらへ」


 そう言ってセフィリアとともにギルドの会議室に案内された。今回は小さめの会議室で、二人がけのソファー二つに小さなテーブルがあるだけのこじんまりした部屋だった。


「それで依頼とは?」


「盗賊の探索です」


 セフィリアが小さく「きたか」と呟いたのが印象的だった。


「盗賊ですか」


「はい。大暴走がソーイチローさんのお陰でほぼ無傷で終焉しました。それで滞っていた物流が一気に活性化したのですが、それを狙った盗賊が出てきたようです。確認されただけで、ここ1ヶ月で一組の行商人と旅人数名が行方不明、一組の行商人が未遂でした」


「その未遂で盗賊がいることがわかったと」


「その通りです」


「あれ?確か表の掲示板に盗賊探索の依頼表があった気がしますが、それのことですか?」


「いえ、掲示板に貼ってあるその依頼はハッタリです」


「ハッタリ?」


「ええ。盗賊は馬鹿ですがゴブリンよりは上です。街中に内通者を入れて動向の監視くらいやるでしょう。ギルドの掲示板は誰でも見ることができますから、盗賊の討伐なんて依頼表があったら普通逃げます」


 シルクさんはそう話したが、「その程度もしない盗賊もいますが」と補足した。


「まあそりゃそうですね」


「同じようにして盗賊の探索の依頼表を貼っておくと、探索エリアは警戒して近寄らなくなることもあります」


「でも冒険者側がハッタリって知ってたら盗賊側もハッタリって見破るんじゃ?」


「その通りです。ですが、そこに気を配ってると盗賊側に思わせることができますし、本当に盗賊の探索がされこともあるのでハッタリとはいえ無視できなくなります。その結果、この近辺を根城にするような盗賊が出にくくなることを期待しているんですよ」


 ようはコンビニとかに貼ってある”警察官立寄所”のシールみたいな物だろうか?

 一方、根城を持たない通り魔的な盗賊はどうにもならないらしく、そのため護衛の依頼が無くなることもない。しかし、護衛をケチる行商人がいるのも事実でそういった弱めな所を狙う盗賊がいるため、盗賊が居なくなることもまた無いらしい。

 この話を聞いた時、なんとなくじゃんけんを思い出した。盗賊→商人→冒険者→盗賊→…と。しょうもないことを考えていたら、シルクさんが話を続けた。


「確度が高い情報が上がってきた場合、個別に依頼を出して依頼を出すようにしています」


「それで俺に声が掛かったと」


「その通りです。そしてソーイチローさん達にお願いしたい事は盗賊の探索及び殲滅です」


 そういえばシルクさんは俺の探査能力を知ってたな。それで声を掛けてきたのか。それにしても…


「捕縛ではなく殲滅、ですか?」


「はい。盗賊と確定した段階で捕らえる必要はありません。危険を犯さず自身の身の安全を最優先にしてください」


「いくつか確認させてください。まずは必達目標、探索エリア、相手の規模、こちらのメンバー、報酬ですかね」


「相手のアジトを見つけるのが最低限の目標でその情報で1万z(ゼル)、できれば盗賊達の壊滅で10万z、報償金は相手規模や難易度によって多少上下があります。探索エリアは王都街道の近くにある魔獣の森近くらしいという程度しか分かっていません。相手規模は7名程度ということだけで詳細な人数までは不明です。メンバーはソーイチローさんが必要だと思われる能力を持つ冒険者を集めましょう」


 報酬はパーティー単位なので人数多すぎると安くなりますが、とも付け加えられた。


「あと見つけられなかった時や盗賊に逃げられた時のペナルティはありますか?」


「特にありません。見つけられなかった時の他の冒険者の雇用費はギルド側が持ちますし、盗賊に逃げられても追い払えただけでフィールに価値はありますから。他にもソーイチローさんに負わせるペナルティは無いと保証します」


 盗賊が他の街に流れても、よそはよそでどうにかしてくれ、ということか。しかしそれにしても話が美味しい気がする。若干美味しすぎる気がしないでもない。


 あとは…俺が実際に人を殺せるかどうかだろう。そう考えた時、昔ミストさんと話したことを思い出した。




 何が切っ掛けでこの話になったかは定かではないが、この世界の命はとても軽いよねと、命の扱いについて少し話題に上がった。

 その話の中でミストさんも人を殺したことがあると教えてくれた。人さらい達から子供たちを守る時に手加減をせず殺しきったという話だった。その時に躊躇わなかったのか、と少し意地悪な質問をした。ミストさんの返事は、


「躊躇いはありません。何が大事か考えれば迷いは出ませんよ。勿論余裕があるならそこまではやりませんが、相手は職業的人さらいでしたから。こちらに手を出せばしっぺ返しがあると思わせることが肝要でした」


「なるほど…」


 そんな風に返事をした俺を、ミストさんはじっと見つめた後、


「ソーイチローさん。あなたはお優しい、とてもとてもお優しい。私達のような者に対しても平等に考えて頂けますし心配りもして頂ける。ですがどうか優先順位をお間違い無きようお願い致します」


「優先順位ですか。言葉に出すのは何ですがちゃんとしていますよ」


「セフィリアさんが一番、と言うのですよね?」


「…」


 ミストさんは一時も視線を外さず、全てを見透かしていた。


「それは間違いです。まずは御身を零番とし、その上で出来ることをなさってください。最初はセフィリアさんを、その後出来るならばティアラかコロネを。それでも余裕あったら私も助けて欲しいですけどね?」


 と小さくウィンクしていた。しかしまた表情を引き締め、


「ソーイチローさんは冒険者として活動するならば盗賊など手に掛ける場面が出てくるでしょう。ギルドでは盗賊に温情を掛け見逃せば、無辜の市民が泣きを見るから殺しておけ、と言われると思います。ですがそんなことは本当は気にしなくても良いのです」


「…え?」


 ミストさんは市民がどうなろうと気にするな、と言う。


「先程も申した通り、まずは御身を零番とし自身の心を傷つけてまで、見も知らぬ市民を助ける必要はありません。また市民の為と咎を偽る必要もありません」


「…」


「冒険者の仕事として相手を殺す、それで構わないのです。もしそれでソーイチローさんが命の重さに潰れそうになるなら、それは私達全員が背負う重さ。私達はソーイチローさんのお陰で生きていられるのですから」


 そう言いながらミストさんは胸に掻き抱いてくれた。わずかに甘い香りを嗅ぎながら胸の谷間に抱きしめられると、原初の安らぎを得られる気がする。そう、羊水に浮かびまるで息が吸えないような…吸えないような…い、息が吸えない。

 あまりに苦しくなってむーむー言いながらミストさんの背中をタップした。

 

「あ、あらごめんなさいね?」


「ぷはぁ!はぁ…はぁ…嬉しいんですけどね?これで死んだなら死因はなんて言うんだろ、おっぱい死?」


「男として最高の死に方よね?」


「いやそれはどうかと」




 優しいのか厳しいのかイマイチ分からないが、それでも光明を見た気がした。

 冒険者を続ける限り、もしくは大事な人を守りたいと思う時、いずれ誰かを手にかけなくちゃいけないかもしれない。ほんの僅かな躊躇いで生死を分けるなんてざらにあるし、それで俺は後悔したくない。


「分かりました、この依頼を受けさせてもらいます」


 と、シルクさんに返事をした。


「受けて頂きありがとうございます。それでは何かご要望はありますか?」


「そうですね…」


 そう考え、自分に足りないスキルを持つ人をピックアップした。


「まず土地勘が無いため対象付近の森に詳しい人、次に罠の知識を持つ人、でしょうか」


「それだけですか?戦力は要らないのですか?」


「俺とセフィリアがいれば十分です」


 断言するとシルクさんは俺とセフィリアを交互に見て納得したようだった。


「それもそうですね。お二人を倒すには軍隊くらい必要になりそうです」


 シルクさんは冗談のように言ったが、割りとそれは冗談じゃない気がする、特にセフィリアは。軍隊とセフィリア、どちらと戦いたくないかと言われれば迷わずセフィリアと答えるだろう。


「おいソーイチロー、また失礼なこと考えておるじゃろ?」


「…気のせいじゃない?」


「後で覚えておれよ…」


 半眼なセフィリアが念押ししてきたが、絶対に逃げよう。俺とセフィリアのやりとりが落ち着いたのを見て、シルクさんは話を続けた。


 「それだけでしたら今日中に招集掛けられますので、明日の朝に出発ということでいかがでしょうか?」


「俺は構いません」

「ワシも問題なしじゃ」


 ということで、人生初の盗賊退治が明日に決まった。

次話は重い話&人死&残酷な描写などが出てきます。

苦手な方は次の次くらいに要約を前書きに記載しますので

そちらを御覧ください。

R15タグは伊達じゃありません。

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