ミストさんと
ご覧いただきありがとうございます。
やっと辿り着いた。
バナナを食べる表現が含まれています。嫌いな方は読みとばすことを
おすすめします。
散策を終え宿に帰るとすでにセフィリアは部屋に戻っており、中で書き物をしているようだった。前の一人部屋の時には机は無かったが、セフィリアとの二人部屋に変えたら室内には小さな物書き台が置いてあって、手紙や少々の書き物には困らない。しかし本を広げながら書き物をするほど机の面積は広くないため、セフィリアは若干窮屈そうにしていた。
「ただいま、セフィリア」
「戻ったか、ソーイチロー。用事はなんだったんじゃ?」
「ん?ほら、セフィリアにお土産で宝石箱渡したでしょ。あれが欲しいって言ってきた魔法使いがいてさ、意地でも寄越せって言われたけど断ったんだよ。その後、ちょっと頭来たこと言われてさ、威嚇射撃しちゃったんだ。それを官憲に見つかって怒られて終わり…と思ったらその魔法使いが街中で範囲攻撃魔法の詠唱を始めたから、『ショットガン』で気絶させて官憲にお引き取り願ったんだ」
「お主もよくよく騒動に巻き込まれるのう…」
「ほっとけ。で、捕まった魔法使いは無罪放免になって、俺に危害加えてくる可能性があるからって注意を促してくれた。その後はちょっと散策してた」
「なるほどの。まあ何かあったらワシも出張るから言ってくれ。それで明日はミストの家に泊まるが構わんか?」
「明日?」
「うむ明日じゃ、頼むぞ。しっぽり楽しめ」
しっぽりってオヤジ臭え。
しかし明日はとうとうミストさんかぁ…セフィリアに対する罪悪感は勿論あるが、これで魔力欠損症が治るならそんな罪悪感が吹き飛ぶほどの快挙だ。人一人の人生…どころか一家の行く末が大きく変わる。そんなことは言ってられないのだ。
…正直になろう。罪悪感とは別にミストさんを抱いてみたくないか?と言われれば、yesと答える俺がいる。なんのかんので俺も雄なのだ。
「分かった。これで治るといいね」
「まあな。あくまで対症療法ではあるがな。じゃが0と1では段違いじゃからな…なんとかなればよいのじゃが」
セフィリアはもう80年以上魔力欠損症に関わっている。その間に彼女は様々な失敗や挫折を繰り返しつつ、それでも諦めずに今に至っている。セフィリアと出会って数年の俺には彼女の心を全て慮ることは出来ない。出来はしないが…
「本当に、治るといいね」
本当にそう願うことだけはできた。
「…うむ」
会話はそこで終わり、俺達はその晩は何もせず、ただ同じベットでゆっくりと過ごし朝を迎えた。
宿の女将に今晩は帰らないことを伝えるとセフィリアと俺を交互に見て、「がんばんなよ!」と応援してくれた。勘違いしているようで全てが間違いじゃないため否定しづらく、ただ「ありがとうございます」とだけお礼を述べておいた。
朝市の喧騒の中を抜け、ミストさんの家で朝食を頂く。食材は事前に買ってあったそうで朝市での買い出しは必要なかった。いつもと同じようにティアラとコロネが朝食を作ってくれたが、メニューが山芋の包み焼き、アボガドとチーズのサラダ、豆類のトマト煮込み。しかも俺の皿だけは山芋やアボガト、豆が山盛りだった。深い意味は無いだろうが直球な意味合いはあるのだろう…
ミストさんの家での過ごし方は隣にセフィリアがいる以外は以前と変わらず、俺は大暴走対策の描画魔法作りに専念していた。強度を持たせたライフリング有りと無しの筒、角度や方向の調整機構などなど描画魔法を作り上げていると、俺と同じように椅子に座り書物をしていたセフィリアが、
「ソーイチロー、足元が寒い」
と言ってきたので黙ってセフィリアの足元に描画魔法で『ヒーター』を出す。セフィリアは書物をしながら足を使ってヒーターの角度を調整し、気に入った角度に出来たのか満足した様子でまた集中し始めた。少し喉が渇いたと思うと、近くで待機していたティアラがすかさず飲み物を注いでくれる。魔法みたいな以心伝心ってティアラはどうやって習得したんだろうね。
そんな会話らしい会話を殆どせず日は落ち夜も更け夕食が終わり、ティアラとコロネは自室に戻っており、とうとう時間になった。
「ミストは私室におる。魔力欠損症のことなど忘れてしっかり楽しむんじゃぞ。今夜のお主の相手はただのミストじゃ。そのことを忘れるでないぞ」
と、言われてハッと気づいた。いくら魔力欠損症の治癒のためとはいえ、相手の事を考えずただ精を注ぎ込むだけというのは…ミストさんに失礼だろう。今ばかりはミストさんの事だけを考え、ミストさんをどうやって悦ばすか、そのことだけを考えよう。
「ありがとう、ちょっと目が覚めた気分だよ」
「お主は魔法に対してはあれだけ自由な発想するんじゃが、ことこういうことについては頭が硬いからのう。これからも同じような状況があるじゃろうし、それで足をすくわれるかもしれん。相手を必ず見てやるんじゃぞ」
「分かった。じゃあちょっと…行ってくる」
「楽しんでこい」
そう笑顔でセフィリアは送り出してくれた。ミストさんの私室の前に着き扉をノックすると中から返事が返ってきた。
「どうぞ、ソーイチローさん」
了承を得られたので俺はそのままミストさんの部屋に入った。初めて入るミストさんの部屋は居間と同じく極めてシンプルでベッドと小さなテーブル、衣装の入ったチェストがひとつあるきりだった。ミストさんはそのベッドの上で正座をしながら俺を待ちうけていてくれた。
「ソーイチローさん、今晩はどうぞよろしくお願いしますね」
と言いながら、初めての睦み合いが始まった。そうして幾らかの時が過ぎると、お互いが中々人から見られない格好になって気がついたことがあった。
「ミストさん、体調は大丈夫ですか?ここまでやっておいてなんですが、あまり良い体調じゃなかったんですよね?」
本当に今更だった。
「ええ…大丈夫ですよ。殆どソーイチローさんがリードしてくれましたし。久しぶりに心地良い疲れと気持ちよさを感じることができました」
そう言ってミストさんはまた俺を胸元に抱き寄せて、
「でもそのせいで私も女だったことを思い出しちゃいました。だから…責任取って下さいね?」
「頑張ります」
否と言うはずもなく、俺の返事と一緒に触れるだけのキスをし疲労を抱いて眠りについた。
翌朝、俺はなんとなく隣が寂しいと思って目を開けると、すでに彼女は起きているようだった。
ミストさんは上半身だけ起こし、左手の甲を見ながら涙を流していた。
魔力が回復したのだ。
該当箇所を削除&改定2/5
袋に入ったバナナのお話でした。深い意味はありません。
でもそろそろ怒られる気がしてきました。
これは駄目だろ!という意見が多かったら減らします。
でもバナナを上と下で食べる箇所の表現ってミストさんの
努力の結晶の一部なんだよなぁ。
あれができるのって簡単な話しじゃないし、特に締め付けとか
日々の鍛錬が…え?ノクターン行け?節操無くなるから駄目です。