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アリシアが身支度を整えたところでノックの音が聞こえた。


「おはようございます。アリシア」


扉を開けると女官の制服を着たメアリが立っている。


アリシアは現在王宮に滞在している。しかも、王族が居住する一画にある豪華な客室を借りているのだ。


てっきり女官の振りをして働くものだと思っていたのだが、国王夫妻はアリシアを働かせる気は全然ないらしい。


周囲を誤魔化すために一応女官の制服は着ているものの、これまでアリシアがしたことと言えば王妃とお茶をしたり、王子王女とお茶をしたりすることだけである。


王宮に来てから基本お茶しか飲んでいない。


メアリは女官として働きながらもピッタリとアリシアに付いている。


どうやらブレイクの指示で護衛も兼ねているようだ。


お茶だけでなく、アリシアは食事も国王一家と共にしている。


国王夫妻だけでなく、王子王女とも仲良くなったアリシアは食事の時間を楽しんでいるが、どうしても罪悪感が拭えない。


「あの……陛下」

「なんだい? アリシア?」


国王が慈愛の籠った眼差しで彼女を見つめる。


「皆様に大変親切にして頂いて心から感謝しています。でも、同時に心苦しくも感じてしまいます。何かお役に立てるようなことはないでしょうか? 良かったら、働かせていただけると嬉しいです。掃除でも何でも喜んでしますから」


「ではアリシアは私専属の侍女になって! 一緒に毎日遊びましょ? お出かけも一緒にしたいわ!」

「お姉さま、ズルい! 私だってアリシアに侍女になって欲しいわ!」


王女の姉妹喧嘩が始まり、国王夫妻は苦笑いだ。


「二人ともアリシアが困っているよ。それにアリシアを侍女にはできないよ」


王太子が穏やかに注意すると二人の可愛らしい王女たちは恥ずかしそうに口をつぐんで「アリシア、ごめんね」と謝った。


「いいえ、お二人でしたら喜んでお仕えしたいですわ! とっても愛らしいお姫様たちですもの」


二人はぱぁぁぁっと顔を輝かせた。とても可愛い。


やり取りを微笑ましそうに見守っていた王妃がアリシアに尋ねた。


「アリシア。では、明日から国王陛下の仕事を手伝ってくれる?」


「陛下のお仕事のお手伝い!? できることならば喜んでさせて頂きますが……私に何ができるでしょう?」


アリシアは突然不安になった。いきなりハードルが高くなりすぎやしないだろうか?


「ブレイクが出発前にね。『アリシアならきっと僕の代わりができるよ』って言っていたの。ブレイクはとても勘が良くてね。陛下は毎日多くの人間と謁見するのだけれど、中にはちょっと信用できない人たちもいるのよね。ブレイクはそういう人を見極めるのが上手なの」


「え!? ……大変申し訳ありません! でも、私にはそれは無理だと思います。お役に立ちたいのはやまやまですが、私には人を見極めるような能力はありません!」


(ブレイクのように『色』が見えない自分にはとても務まらない!)


アリシアは謝罪しつつ深く頭を下げた。


「ブレイクは人を見る目が本当にあるんだ。とても頼りになる。ブレイクが太鼓判を押したなら自信を持っていいよ。それに君がどう思ったかを父上に言うだけだよ。そんなに深刻に考えなくていい。最終的に判断するのは父上だから、責任を感じる必要はまったくないんだよ」


王太子も優しく言ってくれるが、アリシアはひたすら恐縮してしまう。しかし国王は諦めない。


「アリシア、ただ私の後ろに立って、謁見に来た者たちをどう思うか聞かせてくれるだけでいい。やってもらえないかな?」


国王にまで請われていなと言えるはずがない。


「恐れながら、私で宜しければ喜んで務めさせて頂きます」


不安を感じつつもそう答えるしかなかった。

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