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ブレイクはさすが仕事が早い。翌日には必要な情報を集めていた。


アリシアはまったく知らなかったが、ギャレット侯爵家とギルモア侯爵家には過去に深い因縁があった。


***


現当主であるジョージ・ギャレット侯爵(継母グレースの兄)は十年程前にスコット王国の王女と結婚するために前妻を離縁した。


その離縁された前妻がウィロー・ギルモア侯爵令嬢だったのだ。


一人娘で爵位を継ぐ予定だったウィローは、若かりし日のジョージ・ギャレットと婚約していた。


ジョージは次男だったので結婚と同時に婿入りし、二人でギルモア侯爵家を継ぐ予定だった。


しかし、ギャレット侯爵を継ぐはずだった長兄が事故で亡くなり、急遽ジョージがギャレット侯爵の後継者に据えられた。


ジョージがギャレット侯爵位を継ぐことになったので、ウィローには別な婚約者を捜した方が良いのではないかという議論も浮上したのだが、ジョージはウィローとの婚約破棄はしないと断言し、一途な熱愛だと世の女性の胸を熱くさせた。


その結果、ウィローの父親である前ギルモア侯爵は養子を検討し始めた。


しかし、ジョージがギャレット侯爵位を継ぐ時に大変な騒動が持ち上がった。


ジョージが、妻のウィローはギルモア侯爵の跡取り娘なのだから、彼女が継ぐギルモア侯爵領をギャレット侯爵領が併合すべきだと言い出したのだ。


ギルモア領もギャレット領も広大で裕福な領地である。


つまりそれが実現すると、公爵をも凌ぐ大貴族がこの国に生まれることになってしまう。


貴族間のパワーバランスを崩しかねない状況に、王家や他の貴族らは猛反発した。


すったもんだ揉めた結果、前ギルモア侯爵、つまりウィローの父親が、縁戚である公爵家の次男を養子として迎え、ギルモア侯爵位を継ぐことで何とか話は落ち着いた。


それがスカーレットの父親である。


つまり、スカーレットの父親は元公爵令息であるということだ。公爵という最高位の貴族と血縁の深い環境に生まれたことも、彼女が傲慢に育ってしまった原因の一部なのかもしれない。


スカーレットがギャレット侯爵邸を訪れたのはウィローが侯爵夫人だった頃で、彼女の実家であるギルモア侯爵家との交流があったからである。


しかし、ギルモア侯爵領を併合して大貴族になる野望を打ち砕かれたギャレット侯爵は、ウィローに辛く当たるようになり、最終的には隣国の若い王女と結婚するために彼女を離縁して、息子たちと一緒に追い出した。


「離縁されたさきのギャレット侯爵夫人なら、屋敷の内部のことを良く知っているはずだ」


ブレイクに言われて、アリシアとジョシュアは頷いた。


「離縁した後のウィローの消息はほとんど知られていない。両親も既に亡くなっているし、親族に引き取られた形跡もなかった。調べてみたら、現在のギルモア侯爵がウィローと息子たちを世間から匿っていたことがわかったんだ。彼女たちは現在、ギルモア侯爵領で幸せに暮らしているそうだ」


「まぁ、そうなんですね。それは良かったですわ」


「ギャレット侯爵は女性関係の評判も悪かった。今、幸せに暮らしていらっしゃるなら僥倖だ」


ジョシュアも同意した。


「それで君たちに頼みがある」


ブレイクの顔が真剣になる。


「なんだ? 俺たちでできることなら任せておけ!」


「ああ、ウィロー夫人にギャレット侯爵邸の内部について尋ねて欲しい」


「彼女に会いにいけということか?」


「ああ。僕が行くとどうしても目立ってしまう。ギルモア侯爵領は日帰りできる距離だ。スカーレット嬢と一緒に領地に遊びに行く、という体裁をとるのが一番自然だろう。令嬢二人だと危ないから、アリシアの婚約者のジョシュアが護衛につく、と言えば、それほど不自然ではないと思うのだが」


「なるほど……そうですね。分かりました。スカーレットにお願いしてみますね」


「頼む。ギルモア侯爵には話を通してある。スカーレット嬢にはある程度事情を話しても構わない。ただし、機密事項として絶対に他言しないように伝えてくれ」


「分かりました」


アリシアとジョシュアは気合を入れた。

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