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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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『告白 アニメのことなど』


久々の休みの日のこと、『うちの子ニッポンで元気ですか?』という番組を見た。

スリランカの女の子が日本のアニメに憧れ、日本の専門学校で学び、業界に就職しようとして悪戦苦闘する様子を密着取材したものである。


就職試験で、「絵を描いてください」というくだりで、嫁さんが「描くんだ」と言っていたが、ほかに方法は無いだろう。

内定が出て目を潤ませていたが老婆心ながら先のことを心配したものである。

わたしの時代でいえば給料は3万円。仕送り不要までに3年かかるのが普通だった。


実はわたしもT先輩に同行し、一度だけアニメスタジオに話を聞きに行ったことがある。

そこでは昨年の試験で「馬」を描かせたという。

たまたまわたしはその年の年賀状にユニコーンとヒルダ(『太陽の王子ホルスの大冒険』)の版画を作っていたから、それらしいものは描けただろうが、その課題は難しすぎると思ったが、練習しておけという意味だったのだろう。


そのスタジオでは主にタツノコプロの仕事を請け負っていたようだ。

担当者が「吉田竜夫先生の描く女性は最高だよ」と原画を見せてくれた。

(アニメでいう原画とは動きの最初と最後のカット。1枚絵として見せるためのものではない。動きの中の一コマに過ぎない)

 自慢するのも無理はない。圧巻であった。上手いを超えていた。何しろ魅力的であった。


後日、先輩が就職した背景スタジオ(虫プロ出身の二人が立ち上げた。当時、カルピス劇場・名作劇場と呼ばれた。高畑勲、宮崎駿らがシリーズを手掛けることもあった)に差し入れを持って行ったところ、いきなり机に座らされ、「模写してみろ」と『ペリーヌ物語』の背景を渡された。

「合格。卒業したら来なさい」。

仕事を早々に切り上げ、飲み屋に連れて行かれ、どんぶりに日本酒を注がれた。

先輩の就職先であったので断るわけにもいかず飲んだはよいが、足元がふらついて困った。

人生初の酒である。口当たりが良かったから甘口であったのだろう。

二十歳になっていたかどうか微妙である。


先輩から譲り受けた『ペリーヌ物語』のベストショットのセル画を初恋の彼女に「興味があれば」と見せたら、日ごろおとなしい彼女が両腕で抱え込んだこと……などを思い出した。


すみません先輩。

オープニングの焚火シーンとメルモちゃん、ムーミンのセル画、何より先輩が美術監督をした原図や資料はちゃんと持っています。

ああ、でも、出来の良いスタッフが名作劇場のシリーズが大好きだったというので、後日頂いた、「七つの海のティコ」のセル画と「南の島のフローネ」の背景を少々プレゼントしたことも告白しておきます。


挿絵(By みてみん)

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