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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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補足『○○君は知っている』

さて、『〇〇君は知っている』で最後に登場する女の子を、ただの女子ではなく、「足の速い【色白美形】女子」と書いた。

そう表現した方が、イメージがわくのではないかという打算が働いたのも事実である。

同時に、申し訳ないという気持ちが働いたこともまた事実である。


新しい小学校が開校し、生徒の大幅な移動があったことで、変則的に4年の時にクラス替えが行われた。5年になってもクラス替えは無かった。

そこに彼女が転校してきたのだ。身長はクラスで1番高く、色白、頬はほんのりとピンク色。目鼻立ちもはっきりした見栄えの良い子であった。


しかし、わたしは彼女を「静岡代表ブス」。のちに、「ロシア」と呼んだ。「ロシア」については、日本人離れした容姿に対する誉め言葉の意味もあったのである。

しかし、その前の「静岡代表」発言から、これも悪口とみなされた。ほかの女の子に「ブス」などという言葉を浴びせたことは無い。わたし自身、容姿にコンプレックスを抱えていたのだからなおさらである。


そんなものは言い訳にはならない。そういう声があがるであろう。確かに私が悪い。それは認めよう。だが、わたしにも言い分がある。


切っ掛けは、転校早々、彼女が放った一言だった。「静岡の学校では、男子より足が速かった。一番になる自信がある」。この発言に男子は騒然とした。転校生の、しかも背の高い見た目の良い女子に文字通り見下されたのである。喧嘩を売られたのである。

「ああ、そうですか」と引いたのでは男子の沽券にかかわるのである。ここは、なんとしても静岡から来た田舎者に広島の男の真の力を見せつけてやらねばならなかったのである。


だからと言って、いきなり足が速くなるものではない。結果、「八神、頼んだぞ」となったのである。ずっと、女子だった皆さんにはわかるまい。この重圧たるものが。わたしはクラスの男子の期待はもちろん、広島の男子代表としての重圧も背負って走らねばならなかったのである。


4月の体力測定会まで黙っていればすむことだ。そこで勝てば、「大した奴だ」で終わっていたのだ。わたしの怒りは頂点に達した。

この勝負は私が勝った。そして、前言につながったのである。


さて、後日談である。わたしは、同窓会と言うものに出ていない。ただ一度参加したのが、そのクラスの同窓会。中2の春休みであったと思う。バスで野呂山の遊園地に行った。開放的だったからだろうか、そこで女の子から腕相撲を挑まれたのである。


その子だったのかもしれない。わたしよりも背が高く、見映えの良い子であったことは確かである。

すでに男子校にどっぷりとつかっていたわたしにはいささか刺激が強かった。「女の手なんか握れるか」と言う思いもあった。しかし、周りにはギャラリーもいたのである。断れば、「逃げた」と思われるだろう。むろん返り討ちにした。負けたら書かない。


しかし、今になって思うのである。気がついたのである。もしや、その子は、わたしに気があったのではないか、と。……モテない男の哀しい性である。


しかし、彼女であれば、それはあるまい。卒業文集に「転校早々、ある男子から、『静岡代表ブス』『ロシア』と、あだ名をつけられた」と書いていたことも思い出したからである。


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