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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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110/110

『取引』


2026.5.28


昨日のこと。

駐車場側の生い茂ったピオーネの木の方向から、鳴き声が聞こえてきた。


以前見かけた茶色い蛙だろうか?

しかし、それにしても気味の悪い喚き声。

なにより、子供のころ頻繁に見かけた食用ガエル(ウシガエル)顔負けの大音量。

駐車場側に廻ってみるも姿が見えない。飛び立たない。

少なくとも鳥ではないようだ。

やはり、蛙か。



本日、カーポート下。

大量に並べた育苗トレイの上に茶色いカエルの姿。

わたしが大事に育ててきた千日草(千日紅)の苗の上に鎮座している。

カメラを近づけても何の反応も示さない。

見かけはトノサマガエル。



あの声は、きみだったんだね。

お気に入りの苗の上に鎮座しているのは気に入らないけれど、追い払わないでおいてあげよう。


この苗床にはダンゴムシが寄ってくるのだよ。

わたしの大事な大事な花苗の新芽を喰い漁るのだよ。枯らすのだよ。

ネットで調べる限り、あのにっくきやつらは、きみの好みの食べ物には入ってはいなかった。

だけど、きみたちは虫を食べるんだよね?

だったら、やつらを喰ってくれないか。


あいつらは好みじゃないと言い張るつもりかい?

ピオーネの木の下のほうが落ち着くのかい?


だったら教えてあげよう。

あの場所は危ないのだよ。

近くの川には、きみを好物とするカワセミや鷺もいるんだよ。

ピオーネを狙うカラスだって、いるんだよ。

あそこにいたバッタの姿を、最近見ていないんだ。

本当だよ。


ほら、みてごらん。

ここには、きみが身を隠すポット苗や植木鉢も山ほどあるだろう?

きみの好物のナメクジも、そろそろ登場するはずだ。

しばらくは、ここを棲み処とすることをお勧めするよ。



挿絵(By みてみん)


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