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ある日のアンディ

 はあ。


 はああ。


 はあああああああああああ。


 はあああああああああああああああああ、え?何、


 溜息が鬱陶しいからやめろ?


 ああ悪かったアレックス。別に君といることに退屈してる訳じゃないんだ。

 そんなことは分かってる?まるで君は理由を知ってるみたいだね、っていやそんな勢いで「分かるわ!分からいでか!!」って返されても。落ちつきなよアレックス。


 はああああああああああああああああああ。


「だからそれはやめろ」って、え?今私また溜息ついてたのかい?そうかなあ。


 まあそうだよ、君が思ってる通りだよアレックス。

 …最近、リリが私との時間を作ってくれないんだ。いや勿論彼女には彼女の都合ってものがある、それは理解してるさ。だけど最後に二人だけで会ったのはもう2日も前のことだよ。それも夕食のたった2時間だけだ。

 どうしたアレックス、ずっこけたりなんかして。


 え、2日どころか毎日会ってるじゃないかって、何を言ってるんだい?私は「二人だけで」と言ったじゃないか。「薔薇園」へ来るまではずっとそうだったんだから、何もおかしなことはないさ。うん?「いくら好きでも始終二人きりとか普通ありえねえ」?ふうん。よそはよそ、うちはうちだから。

 だからどうしてそんな困った顔するのか分からないよ。


 え、いや、じゃあなんで今リリがここにいないかって?

 そうなんだよねえ、どうしてなんだろう。いやどこにいるかは知っているよ。今日はイリーナ嬢達と「白薔薇の茶会」。今日はゲストにフェルミ様をお招きしているそうだ。ほら。あの向こうに屋根の見える庭園があるだろう?あそこに皆いるよ。


 じゃあなんで私がここにいるか、って、

 ……

 …………

 …………言いたくない。


 何だアレックスその顔は。

 …そうか、君の所にもリリが来たのか。


 そうだよ、断られたんだよ私は。君と同じで。

 いや普通に付いて行こうとしたら「今日はアンディはお留守番」って。いや何でかなんてこっちが聞きたいよ。私と君はどうして断られたんだい?納得のいく理由を説明して欲しい。…いや、リリに理由を訊こう、とは思ったんだけど、


 うん。あんな良い笑顔で「よろしくね」って言われてしまったら、まあ「いいよ」って言っちゃうじゃないか。当然だろう、リリのお願いを断るとかありえない。

 いや納得はしてない、してないが、

 ん?アレックスどこに行く。私を置いて君もどこかに行ってしまうのかい?

 ああ、茶を取りに行くのか。それなら私も、って「来なくていい」?


 あ。そうなの?


 そうなんだ。


 ああ、ここで待ってるよ。


 ……


 …………


 あ、やっぱり私も、え、それはさすがに酷いなあ「来るな面倒」って。

 分かったよ、待てば良いんだろう待てば。ああ、頼むよアレックス。


 …はああああああああああああああああ。


 ん、おや君は?ああ、モリソン家の…。それと君は確かシュタイン家のご息女だったね。私に何か用でも?うんうん「お茶」?

 あー。申し訳ないが先約があってね、今日は無理なんだ。すまないがまた次の機会に。うん。そうだね、うーん、「次はいつか」と聞かれても私も多忙だからすぐには返事が難しいかな。いやでも声を掛けてくれてありがとう。また、うんうん、あー。ほら私、食事はリリアンヌと取るようにしているから食事はちょっと。そうそう。納得してくれたならもう、え?リリアンヌ?ああ彼女はちょっと他の方との約束があってね。ああうん、いや、例の「茶会」だよ。君たちも知っているだろう、というか君たちは行かなかったのかい?はあ、「目的が違う」。ふうん、そういうものなのかな。私だったら喜んでいくがというか今行きたい。あ、そうそう先約だったね。ところで君たちは良いのかい、私と話なんかしてて。なに「ご褒美」って。君たちの話は所々に分かり辛いところがあるね。まあでも、あれ、どうしたんだいウォルター家のセシルさん。彼女達に何か用でも、え、「順番」って何の?いやあの私は先約が、って、


 ええと、どうしていつの間にか行列ができてるのかな?


 あ、アレックスようやく戻ってきてくれたね、ってあれどうしてそのまま通り過ぎるんだちょっと待って「滅びろ」って何が!?誰が!?


 …君が冷たい人間だということがよく分かったよ、アレックス。なに?誰が「誘蛾灯」だって?

 誰が好き好んでリリ以外の女性を引き寄せようなんて思うもんか。だからそれはモリソン家の…

 いやちょっと待てアレックス。なんだその菓子は。え、

「リリアンヌの所でおすそ分け貰ってきた」?


 そうか。


 アレックス何で私の肩を押さえるんだ、結構痛いぞそれ。

 いや君が良いんなら私だって問題ないだろう行っておこういや行くべきだ行く義務があるだから離せはなせはーなーせええええ。

 うん、言われなくてもリリに似てきた自覚はある。

 分かった分かった、もう君を困らせたりはしないから、だからその縄はしまってくれ。一体そんなものどこから取り出したんだ君は。


 ああ、そう言えば君にひとつ誤っておかねばならないことがあった。

 アレックス、あの時は君にも迷惑を欠けてしまったね。すまなかった。


 君が止めてくれなかったら私はレイオルド皇子を殺めてしまう所だったから、ああなぜこのタイミングかと言われるとその縄がきっかけなんだが、それは「収納」から取り出したものだろう?君が私と同じ「収納」を持っているとは思わなかった。「収納」を持つ人間はそれなりに限られるから少し驚いたよ。ああいや君の事情に踏み込むつもりはないよ。私はそのおかげで助けられたんだから、礼を言いこそすれ問い質すなどと。うん、ありがとうアレックス、私を良い友を持った。君が諌めてくれたおかげ、え?「俺もムカついたからお前に先を越されるのは嫌だっただけ」だと?そうか。


 それでも礼を言わせてくれ。ありがとう、アレックス。


 えっ、また茶を取りに行くのかい?意外に君はお茶好きなんだなあ。いや私ももう一杯頂くよ、では今度は私も…え、また私が番をするのかい。ああ何だバレたのか、よく分かったね。意外とアレックスは勘が良いな。


 ちっ。


 ん?いや何も言ってないよ?気のせいじゃないかな。いや行きたいに決まってるじゃないか。だから、


 おや?ああ君か。ちょうどアレックスとこの間のことを話していたところだったんだよ、レイオルド皇子。

 うん?「『皇子』は余計だ」と?では私のことも「王子」と呼ぶのは止めてくれないかレイオルド。そうそう、その方がお互いに気楽で良い。で、私に何か用でも?ふんふん、やっぱり、諦められないから、譲る気はないか、と。ほうほう。


 よろしい、ならば戦争だ。


 いやアレックスさすがに今度は本気じゃないから。いやちょっとした冗談だから。


 …その時はそう思っていた、誰もが。


 え「そんなモノローグ要らない」ってまあ人の言葉尻を捉えるのが上手いなあ君は。うんうん冗談冗談。で、レイオルドは何の用で?「いや結構本気だった」「お前は余計なこと言うな!!」って二人は結構うまが合うようだね、ってだって今「「誰がだ!!」」って同じこと言ってるじゃないか。まあまあ落ち着け二人とも。だから「「お前が言うな!」」ってほらまた。

 ああ、君が言ってる間はレイオルドと話してるよ。分かってるから、行かないから。


 で、レイオルドは何の用件なんだ。うん、まあ女性、というかリリの扱いには慣れているが。うん、うん。…「嫁さがし」?それは、あまり私は役に立てそうにないと思うが、君はアレックスとの会話を聞いていたのかい?いやだって「誘蛾灯」って。


 まあそれは良いんだが、しかし、君の国なら地位も器量も良い才媛などいくらでも…はあ。「大胆すぎるのはつまらん」か。君の方が私より余程経験豊富じゃないのか?うん、へえ、そんなことが。

 いや私に女性に押し倒されるような趣味はないよ。なかなか()()?でも飽きた?うーん、いよいよ私には手に余る話じゃないかなあ。それなら私よりアレックスが、ああ良い所に戻ってきたねアレックス、レイオルドが女性の口説き方を教えて欲しいそうだよ。


 うん、まず天然の、道に迷ってるお嬢様を一人用意して、

 その子に餌付けして、

 あとは「転移」あたりで攫ってしまえばできあがり、と。


 ふーん。


 ああいやねアレックス、以前私はこう思ったことがあるんだよ。


「どうせすぐ忘れるから、いなくなる人間の名前を覚えておく必要はない」


 それで、君、は。

 いやだなあ、君の事を忘れるなんて、例えば

「天然のお嬢様を誑かした上に抱きつかせて、婚約者の前に転移で現れる」なんてことでもなければ忘れる筈がないじゃないか。


 うん、うん。友情は大切だよね、理解してくれて嬉しいよアレックス。ん?


 ああこんにちはレティシア先生、お出掛けですか?え?「今日も良い顔しているな」ですか?いや私はいつも通りですが。ええ、レティシア先生はどちらへ?

 はあ「賢者が良いお茶を持参してきたと聞いたから、今から乱入する」


 ほう。


 それは、名案ですね。

 分かりました私もご一緒しましょう。そうですか?そんなに私良い顔してますか先生。


 いやそこをどいてくれないかアレックス、レイオルド。え、なに?

「リリアンヌからアンディを引き留めておくよう頼まれた」

 なんでそんなことを。

「アンディは私とべったりだとダメになる」って何を言ってるんだ、

「なる」んじゃない、もう「なってる」んだ何を今更。

 何で二人で「うわー」って顔をしてるんだ。見てみろ、先生は納得してるぞ。

 やはり私の気持ちを理解してくれるのは先生だけですよ。さあでは、


 いや離せアレックス、離せレイオルド!君たちに私を引き留める理由はないだろう!


 なに?「女の子を紹介して貰う約束をした」?「嫁探しの協力を取り付けた」?


 ま、まさか君たちは、私を売ったのか!!


 いや待て君たちには人情というものがないのか。君たちは鬼か!!


 待て待ってくれ、あっ先生私を置いて行かないで下さい!え?

「自分のことは自分で解決しろ。ここは『薔薇園』だ」?


 そうですけど!その通りですけど!!

 待ってくださあああああああい!行かないでくださあああああい!


 はなせアレックスー!はなせレイオルドー!!


 おいそこの女子私を助け「きゃー!『アン×アレ×レオ』だー!!丼だー!!」

 それなんだ!?いいから私を!


「許せアンドルー。俺達もこんなことはしたくないが」

「すべてお前のためだ。我慢しろ」


 嬉しそうに言うなおまえらあああああああああああ!!!!!


 はなせはなせはなせはなせはなせはなせ、

 はーーーーーなーーーーーーせーーーーーーー!!!!!!



 …「そこまで似なくていい」とはどういう意味だったんだろう。

 後から、リリにこっぴどく叱られた。


 こういう時、リリはなんて言ってたっけ。ああ、そうそう、



 私も、しょんぼりだよ。

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