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大罪のゲーム  作者: 辺 鋭一
第一章
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言い訳じみたモノローグ

このお話は、残酷な描写を含みます。

そのようなものが苦手な方は見ないことをお勧めします。


  ●




 僕、有松ありまつ ひろしは人付き合いが苦手だ。




 小さい頃――、保育園に通っていたころは、そうでもなかった。

 普通に友人たちと庭を駆け回り、笑いあい、遊んでいた。


 しかし、いつの頃からか――否、もうあの頃からその兆候はあったかもしれないが――僕は本を読むことが好きになった。

 小学校に上がり、図書室というものの存在を知るとその欲求はさらに強くなり、僕はどんどん本にのめりこむようになった。

 それでも、低学年の頃は外で遊んでもいたし、友達と話もした。


 だが、体ができ始め、皆の体格に差が出てくると、背が低かった僕は皆の動きについていけなくなり、だんだん外で遊ぶことがなくなっていった。

 僕の身体面の成長は遅かったが、その代り幸運なことに精神面の成長は早かったらしい。

 だがそれも、実は幸運でもなんでもなく、ただただ周囲の会話のレベルの低さに呆れ、友人だった者たちとの間に一方的な溝を作ってしまうだけであった。


 そのころの僕は『人と話すより本を読んでいるほうが有意義だ』と本気で思っていた。

 話の合う友人は少数ながらもいたが、それでも一日の内の読書のための時間は増え続けていった。

 僕の友人の作り方はこの頃からずっと同じで、自分からは話しかけず、話しかけてきたものと話し、何度も話しかけてきたもののうち、自分も気に入ったものと仲良くなり、いつの間にか友達になっている、という受け身的な形だった。

 幸いにも成績は良く、先生からの受けも良かったが、その分言動のバカっぽい、いわゆる軽いヤツ等に対し強い嫌悪感を覚えるようになり、僕の『友人候補生』はさらに少なくなり、結局その頃友人は片手で数えられる程しかできず、今も友人が多い方ではない。


 だが、僕はそれで良いと思っている。

 すぐに離れてしまうような友人モドキが百人いるより、ずっと付き合っていける親友が五人いる方がよほどいいだろう。

 心の片隅では『そんなことではいけない』と思ってもいるが、何年も続けてきた姿勢を、そう簡単に変えられはしない。

 結局僕のキャラは『人付き合いも友人作りも苦手な引っ込み思案なやつ』になってしまった。




 そして僕の心はどんどんかたくなになってゆく。

 誰かに僕を理解できるわけがない。

 所詮は他人だ。


 だから。


 僕を知らないくせに僕の心の中に入ってきて欲しくない。

 僕を理解もできないくせに僕の心の中に入ってきてほしくない。

 入ってきて、踏み込んで、踏み荒らしてほしくない。

 入ってきて、踏み込んで、踏み荒らすな!



 ここは僕のせかいだ!



 こっちに来るな! 近寄るな! 見るな! 聞くな! 触るな!

 僕を感じるな!

 僕以外を感じさせるな!



   ●



 ともあれ、そんな主義主張を持っていることを除けば、僕は普通の学生だ。

 普通の高校二年生らしく、テレビも見れば漫画も読むし、もちろんゲームもする。

 入学したばかりの頃の緊張も消え、受験にもまだ早いと考えているいわゆる中だるみ状態で、主義主張にのっとり誰かに話しかけられれば答え、授業を受け、わからないことは先生に質問し、部活には入っていないので放課後はすぐに帰宅し、少し休んだ後宿題をはじめ、その途中で母親に呼ばれ夕食を済まし、そのあと宿題を片付けて風呂に入り、いつも見ているバラエティー番組を見て、翌日の準備をし、もうすぐに迫った夏休みに思いをはせながら眠りにつく。


 得意教科は数学と理科で苦手なのは英語(赤点リーチ)。

 家は一戸建てで、両親と一緒に住んでいる。兄弟はいない。

 僕は、そんな感じの、世の中に十人に一人はいそうなごく普通の一般人だ。





 否、ごく普通の一般人だった。



   ●



 だから僕は、最初にあんな非日常に巻き込まれたとき、どのように反応したらいいかわからなかった。



   ●

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