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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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これはこれは

遅くなりました!

どうぞご査収をば!

「これはこれは聖女様ではないか」


 現マヤ派トップ、通称マヤ様は、なんだか既視感のあるセリフで迎えてくれた。

 ……惜しいな。そこは私のおさげを引っ掴んで言うところでは。


「喜ばないでくださいと言ったでしょう」

「喜んではいませんよっ!」


 ザコルにジト目を向けられて反論する。喜んではいない。ただ少々、人がゴミのようだーとか、三分間待ってやるとか、目がー目がーなどと言ってくれないかと思っただけだ。


「今日は魔力を持て余してはいないようだな。こうして見るとただの人にも見える」


 こないだは人に見えなかった、と言いたいのだろうか。まあそうか、次期長老候補たる彼だ。きっと高性能な魔力視認能力があるのだろう。とすると、『女神の寝所』への入り口で魔力過多を起こしてダイヤモンドダストを発生させてしまったこともバレているんだろうか?


 まあ、過ぎたことに気を揉んでも仕方ないので私は気を取り直して一礼し直した。


「突然お邪魔して申し訳ありません、マヤ様。こちらチベト様から早急にお届けするよう預かってきました。どうぞ、お納めください」


 化け物扱いには慣れているので特に反論せず、私は腕に抱いた深緑色の布包みを開け、中身の像をあらわにした状態で彼らに差し出した。


「………………」

「…………?」


 誰も取りに来ない。何か作法が違っただろうか。


 チベトがこれを運ぶのに使っていた木箱……封印の魔道具? とやらはチベトの私物だったのか、チベトは『闇』を集める方の神像をそれに入れて自分の集落に持っていってしまった。なので、私はやむを得ずザコルの深緑マントを風呂敷のように使って像を包み、渡す時は手土産のマナーよろしく風呂敷から出して差し出したつもりだったのだが、これは日本のお作法だったな。


 像は重く性質も強力で、私の腕筋にほどよい負荷をかけている他、ここで空気にさらしているだけでも刻一刻と劇物に変化していっている。


 こちらは『光』を集める像なので、一般人の精神を蝕まないだけ『闇』を集める像よりはマシかもしれないが、闇の特性を強く生まれ持った人にとってはやはり毒でしかない。


「……………………」

「あのう、マヤ様」


 誰かに受け取りを命じるでもなく、黙ってこっちをにらんでいるだけの赤頭巾にも事情や思惑はあろう。しかしこちらとしては、なる早で受け取って、なる早でしかるべき場所へと置いてきてほしいだけだ。


 というか早くしないとザコルにとって毒になるかもしれないし、そちらの聖域がアレなことになるかもしれないぞ、その聖域を見たいなどとは言わないから早くしてくれ、と私は念を送ってみる。


「……なぜ、余所者風情が我らの宝に触れているのだろうなあ」

「えっ、すみません?」


 気になっていたのはそこか? 単に、ザコルがプテラの御者をしていたから私が持っていただけで、流れでそのまま差し出しただけなのに。


 赤頭巾氏に同調するように、背後にいたマヤ派の人々もヒソヒソとやり始めた。というかそこに文句があるなら誰か受け取ってくれ。


「ミカ、重かったですよね。気が利かなくてすみません」

「えっ、いや」


 ひょい。ザコルに神像をぶんどられる。彼は像を小脇へはさみ、


「中まで運びましょうか」


 と、手慣れた配達員のようなことを淡々と言った。





「大切な神像をあんなに雑に!」

「あれもサカシータの番犬だろう、厳重に抗議を……っ」


 ざわざわしだしたマヤ派の人々に、ザコルがジロリと目線を走らせる。先頭にいた何人かはぎくりとして黙った。


「フン、今更何の文句ですか。ミカが丁寧に扱っていたのが気に入らないようなので僕が代わったまでです。で、どこに置くんですか」


 赤頭巾マヤが片手を挙げると、先頭で棍棒をかかげていた男がスススッと低姿勢でやってきた。そして何ごとか耳打ちされると棍棒を誰かに預けてあらぬ方向に歩きだす。私達が動かないのに気づくと、憮然とした表情で振り返り「こちらへ」と無愛想に告げた。


 私達は顔を見合わせてうなずき、その案内役の男についていくことにした。しかし男の足は速く、さっさと歩いていってしまう…………といっても別に追いつけないほどではないが、ザコルは敢えてゆっくりとした足取りで歩いている。私もザコルに合わせて周りをうかがいながらついていく。男は時々イライラしたようにこちらを振り返った。ナイス嫌がらせである。


 私は、案内役との距離が開いたタイミングでザコルに話しかける。


「もしかしてですけど、あの人達、この像に触りたくないんですかねえ」

「そうかもしれませんね。チベト派の者達より扱いを解っているのかもしれません」

「確かに。あっちの集落じゃ、清掃班のおじさん達ですら神像の正体を知りませんでしたもんね」


 それゆえになのか、あちらの神像は無人の神社みたいなスペースで、鍵も鎖もつけずに安置されていた。その下に『浄化の泉』とやらがあるのに特に人の出入りも制限がなく、そのセキュリティ意識の低さには驚いたものである。


 責任者であるチベトにも何か考えがあってそうしているのかもしれないが、あれは流石にオープンすぎだと思う。盗難事件もあったことだし、これから改善されていくことだろう。




つづく

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