渋々なのかノリノリなのかはっきりしてくださいよ
着替えるからと追い出された僕達は、エビー達が使っている隣室で待機を余儀なくされていた。戦に参加した面子には『休憩してて』という指示があったというのに、全員落ち着きもなく部屋の中で立っている。
「兄貴、マジで藪要員すんすか」
「はい。期待には応えねばなりません」
「なんなんすか、渋々なのかノリノリなのかはっきりしてくださいよ」
「ノリノリ? というわけでは」
「どーせ姫様に誰よりもうまく潜めるはずとか言われて張り切ってるんですよねわかります」
「…………。張り切っているわけではありませんが、藪の中からミカを観察する機会はあまりないな、と思いまして」
「あー、猟犬殿は基本藪から観察されてる側ですもんね。本業影なのに」
「………………」
コホン、僕は咳払いした。
「あのミカが本気で『影武者祭り』をするんですよ。彼女の表情作りや身のこなしからはきっと学べることが多い。隣にいるとずっと凝視しているわけにもいきませんから」
「はあ、姐さんを思う存分凝視できるんではしゃいでんすか」
「いちいちうるさい」
僕はポケットに残っていたドングリの残骸をエビーに投げつける。それを軽く避けたエビーは、自分の腰から長剣を外し、懐刀にしていた短剣を腰に挿した。
「よし」
「あ、エビっちこれかぶる? 白頭巾」
「さんきゅ、借りるわ」
エビーに装備を貸したサゴシは、自分の武器を点検し、エビーの荷物を勝手に開けて吹き矢の矢を補充し始めた。
「お前さあ、俺の荷物に勝手に入れんのやめろよ」
「別にいーじゃん。一緒にしといてよ」
「まさかとは思いますが、ついてくる気では」
『えっ?』
エビーとサゴシの二人はどうしてそんなことを訊くのか、という顔をした。
「休憩していろと言われたでしょう」
「いやいや。俺ら休憩がてら散歩行くだけすけど?」
ねーっ、と二人は顔を見合わせる。……ミカの真似だろうが腹立たしいな。
「ザ、ザコル殿!」
「何ですか、タイタ」
「あのっ、図々しいことだとは承知しておりますが、どうか、影をなさるあなた様を陰ながら観察させていただけないでしょうか! もちろんお邪魔はいたしません!!」
「影をする僕を陰ながら観察する…………?」
一瞬、壮大な何かが思い浮かんだ。
「ふはっ、兄貴が宇宙見たみたいな顔してんぜ」
「テラウケますねっ」
「サイゾウさんは潜むの向いてなさそーすね」
「うんっ、全然向いてないっ。邪魔だからついてくんなってよく言われますっ」
「マジでついてこないでくださいよね」
「もーサゴちゃん酷いっ」
「君達も潜むのに邪魔なので遠慮してくれませんか。休憩していろと言われたのが聴こえなかったんですか」
「いやだから俺ら散歩行くだけなんで」
「そーそー。タイさんも一緒に行きますよね? 俺がちゃんと紛れさせてあげますよ」
「サゴシ殿!」
ぱあ、とタイタの顔が華やぐ。
「ザコル殿……」
拾ってくれと縋る子犬のような目。
彼のそんな顔を見たら、僕は何も言えなくなった。
つづく
早く出発しろと。




