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リーナが勇者として王都に行って数日。
俺はひたすら傘を振るい腕を磨いていた。
「だからお前なんかに冒険者無理だって。諦めるんだな」
「それに雨の日しか役に立たないからな。ほんと役に立たないゴミ職業だな」
そう言って天啓の儀を一緒に受けた少年らに俺は馬鹿にされる。
「おい何か言えよ傘使い」
「……」
俺は無視して傘を振り続ける。
「ちぇっ、つまんね」
「行こうぜ」
「だな」
何も反応しない俺がつまらないのか、少年らはどこかへと去って行った。
されからさらに数日経ったある日、俺は思い至った。
(このままじゃ強くなれない)
ならどうやって強くなるか。それを考えていたら、近くにあるある山のことがふと思い浮かんだ。
「ペリクルム山……」
ペリクルム山とはレグリア王国の北部、インバイア帝国との国境付近にある標高5700メートルの山である。ふもと付近の魔物は弱いが、山頂に近づくにつれて強くなっていく。
そこに行こう、そう思い至った。
思い至ったが吉日。俺はすぐに必要な物を買い揃えに向かった。
村にある道具屋を尋ねた。
「おばあちゃん、このポーションを買えるだけ下さい!」
「あらガルムのところのシルムちゃんじゃないか。急にポーションなんてどうしたんだい?」
「ちょっと必要になって。あるかな?」
「あるよ。ちょっとまってね」
そう言っておばあちゃんは店の奥に行き、しばらくすると戻ってきた。
「20本これで全部だよ。4万ジェニーだけどあるかい?」
「うん。はい」
ポーションは一本2000ジェニーか。
俺は貯めていたお金の一部を渡す
おばあちゃんは渡されたお金を数える。
「はい、丁度頂いたよ。持っていきな」
「ありがとう!」
俺は持ってきた麻袋にポーションを入れその場を去った。次は食糧だ。
向かう場所は自宅だ。
何をするのかそれは――置手紙を書くためだ。
字はしっかりと学んでいたため、問題なく書く事が出来た。
今、父さんと母さんは仕事中だ。この時間が好機だろう。
父さんと母さんには申し訳ないが、俺はリーナを守ると言った。その約束を違えることは俺には決してできない。
自宅に帰った俺は紙とペンを持ち書き記す。
「……よしっ、書けた」
荷物を持ち扉の前で立ち止まり俯いたが顔を上げる。
――後悔はしない。
取っ手に手をかけ俺は家に出た。
うまく誰にも見られるずに村から出ること成功した俺は、そのままペリクルム山へと向かった。
ペリクルム山までは距離がある。ここから3日は掛かるだろう。
俺は急がず自分のペースで歩くのだった。