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「あなたに」
「そうですね。
だから、僕はあなたのことが好きです。
ずっと傍にいて、一緒に生きていきたい。
汚れさせてしまいましたが、
それが僕の本当の気持ちです。
ようやく、腹を決めることができました」
彼女の手をそっと握り返してみる。
ピクリ、と反応があり、
ふと彼女の顔を見上げてみれば、
目に涙を溜めて泣き出しそうなのを堪えていた。
「ずっと、待っていた……
もう一度、婚姻届を書き直してくれるか?」
あんなに格好良かった彼女が、
僕の言葉一つで
こんなに可愛くなってしまうのを見ると、
愛しさが胸の奥から湧き出てくる。
「はい、勿論ですよ」
愛しくて堪らず彼女を抱き寄せた。
あのときとは意味の違う抱擁で、
意味を知った抱擁だ。
ずっと、こうして触れたかったのだと思う。
強くて、手折れそうに脆く、可愛いあなたに。




