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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
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「誰に、赦される必要があるんだ」

「で、話したいことというのは何だ?」


 久しぶりの彼女の家と決意したばかりで、

 緊張が脈を打つのに、まだ言えるわけない。


「い、いえ、先に縁さんからどうぞ」


「そうか、分かった。


 じゃあ、これは一体どういうことだ?」


 ずいっと顔面目前まで押し出されたそれは、

 僕が墓に隠したはずの婚姻届だった。


 どうしてそれを縁さんが持っているんだ?


 理由を尋ねるまでもなく、

 彼女の口から説明された。


「鏡子さんから渡されたんだ。


 墓で、これを見つけたとな。


 どういうことなんだ?」


 彼女は手元の婚姻届とという証拠と共に、

 威圧をかけてきた。


 鏡子おばさんのごめんなさいって、

 このことも踏まえた言葉だったのかもしれない。


 女性の洞察力侮るべからず。


 ただそれはそこはかとなく、

 メッセージのようなものを感じさせられた。


 鏡子おばさんが婚姻届を見つけて、

 それが縁さんの元へと渡った。


 とうにいが僕の背中を

 押してくれたかのような奇跡の連鎖だ。


 赦されないとは思うけれど、今、

 この想いを伝えなければ

 一生ものの後悔を背負う気がするから、

 言葉にするよ。


「……僕は、縁さんのことが好きなんです。


 あなたに告白されるよりも前からきっと、

 恋していました。


 でも、赦されないと思って、

 気持ちに蓋をしたんです。

 

 もし赦されるなら、

 あなたを好きでいてもいいですか?」


 格好悪くて縋るような

 言葉しか言えやしないけれど、

 あなたはそれでも受け止めてくれますか。


 彼女は、そっと目を伏せたまま、

 ポツリポツリと言葉を紡ぎ出していく。


「誰に、赦される必要があるんだ。


 透夜は、君が恋を諦めることを

 望むような奴じゃない。


 透夜の死を無理に忘れることはないよ。


 でも必要なのは、

 ただ相手を想う気持ちだけだろう?」


 縁さんはぼくの手に自身の手を重ねた。


 温かくて、強く脈打つ鼓動が伝わってくる。


 多分、こういうことなんだろう。





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