「誰に、赦される必要があるんだ」
「で、話したいことというのは何だ?」
久しぶりの彼女の家と決意したばかりで、
緊張が脈を打つのに、まだ言えるわけない。
「い、いえ、先に縁さんからどうぞ」
「そうか、分かった。
じゃあ、これは一体どういうことだ?」
ずいっと顔面目前まで押し出されたそれは、
僕が墓に隠したはずの婚姻届だった。
どうしてそれを縁さんが持っているんだ?
理由を尋ねるまでもなく、
彼女の口から説明された。
「鏡子さんから渡されたんだ。
墓で、これを見つけたとな。
どういうことなんだ?」
彼女は手元の婚姻届とという証拠と共に、
威圧をかけてきた。
鏡子おばさんのごめんなさいって、
このことも踏まえた言葉だったのかもしれない。
女性の洞察力侮るべからず。
ただそれはそこはかとなく、
メッセージのようなものを感じさせられた。
鏡子おばさんが婚姻届を見つけて、
それが縁さんの元へと渡った。
とうにいが僕の背中を
押してくれたかのような奇跡の連鎖だ。
赦されないとは思うけれど、今、
この想いを伝えなければ
一生ものの後悔を背負う気がするから、
言葉にするよ。
「……僕は、縁さんのことが好きなんです。
あなたに告白されるよりも前からきっと、
恋していました。
でも、赦されないと思って、
気持ちに蓋をしたんです。
もし赦されるなら、
あなたを好きでいてもいいですか?」
格好悪くて縋るような
言葉しか言えやしないけれど、
あなたはそれでも受け止めてくれますか。
彼女は、そっと目を伏せたまま、
ポツリポツリと言葉を紡ぎ出していく。
「誰に、赦される必要があるんだ。
透夜は、君が恋を諦めることを
望むような奴じゃない。
透夜の死を無理に忘れることはないよ。
でも必要なのは、
ただ相手を想う気持ちだけだろう?」
縁さんはぼくの手に自身の手を重ねた。
温かくて、強く脈打つ鼓動が伝わってくる。
多分、こういうことなんだろう。




