「用事ができたので失礼してもいいですか?」
未来が見えていたかのような言葉の数々、
本当に大事にされていたのだということが痛感する。
どうしてそんなことが言えるのだろうか。
自分の海馬をあげたいと思うほどに、
好きな人と僕との幸せを願うことなんて、
本当にできるのかな。
本心じゃないかもしれない、
でも、真偽はもう一生分からない。
ただ一つ言えるのは、
これがとうにいの伝えたかったことに
変わりはないということだ。
揺るがないように決心をしたはずなのに、
心が騒いでいる。
「すみません、
用事ができたので失礼してもいいですか?」
鏡子おばさんはにっこりと
穏やかな笑みを浮かべて答えてくれた。
「ええ、もちろんよ」
「では、失礼します!」
スマホを片手に駆けだした。
今すぐに会いたい、
会ってきちんと話をしたい。
呼び出し音がいくつも流れて、
かけ直そうと思ったその間、電話が繋がった。
「はい、もしもし」
「縁さん。
僕です、昇汰です。
話があるので、
今から会いに行ってもいいですか?」
「ああ、構わないよ。
丁度、私も君に話があるのでね」
何か、意味深なニュアンスで告げられた
「話」という単語に背筋が震える。
なんだか嫌な予感がするけれど、
そうも言っていられない。
「どこにいますか。
というか、どこへ行けばいいですか?」
「今仕事が終わったばかりで、
まだ医院にいるが、すぐに帰宅する。
家の前で待っていてほしい」
彼女が口にした「家」という言葉に一瞬、
動揺するが、今はそんな場合ではない。
「店の裏手ですよね、分かりました。
そこで待っています」
「私もすぐ向かうよ」
「それじゃあまた後で」
通話が終了すると、僕は息を弾ませながら、
彼女の住居へと向かった。
家の前に到着してから間もなく
彼女はやってきて、颯爽と僕を家に引き入れた。




