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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
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『昇太へ――透夜より』

 昼のドラマなんかでよく、

 墓は隠し事をするために利用されている。


 墓石の下に隠すような真似はしないが、

 一生の秘密をとうにいと共有しようと思う。


 墓石の周辺に散りばめられている石を退け、

 その石で少しだけ土を掘り起こした。


 土を掘り起こしてできた

 窪みに三つ折りのそれを埋め、

 退けた石を被せて隠す。


 永遠に叶わないよう、誰にも、

 縁さんにさえも伝えないまま土に還すんだ。


 ただ、とうにいにだけは伝えておくね。


 喉の奥から絞り出すように、想いを乗せて。


 僕は彼にとても大事な告白をする。


「好きになってごめんなさい。


 とうにいの好きな人は取らないよ。


 だけど、どうか許さないでいて。


 そして、僕の心を表した

 その紙をこの世から消し去ってください」


 両手を合わせ、懇願するように祈りを捧げた。


 翌日、鏡子おばさんから連絡があり、

 近くの公園で待ち合わせをしていた。


 待ち合わせ十分前にやってきた

 彼女は開口一番に、謝罪の言葉を口にした。


「ごめんなさい」


 謝られる覚えがない僕は、彼女に事情を訊くと、

 申し訳なさそうに手紙を差し出してきた。


「これ、あの子が昇汰ちゃんに宛てて書いた手紙なの。


 あのとき、渡しそびれてしまって、

 いつ渡そうか悩んでいたの」


 僕は愕然とした。


 あのとき、

 僕にだけ手紙が用意されていなかったことに、

 内心ひどく傷ついていたんだ。


 彼にとって、僕はそれぐらいの

 存在だったのだと諦めていたから。


 呆れと喜びで、僕の心境は複雑だった。


「そう、ですか。ありがとうございます」


 僕はすぐに手紙の封を開け、読み始めた。



『昇汰へ


 元気でいますか。


 この手紙を読む頃には、

 僕はもうこの世にはいないでしょう。


 初めに一つ謝りたいことがあります。


 病気のことを話さなくて、ごめん。


 昇汰はまだ小学生で理解できないこともあったけれど、

 一番は、昇汰が悲しむ顔を見たくなかったからです。


 昇汰が大人になった姿を

 見られないのはとても残念です。


 いつか昇汰の結婚式で

 スピーチするのが夢だったけど、無理そうですね(笑)


 好きな人はいますか。


 いるなら、時間がいつまでも続くと思わず、

 明日があると思い込まずに、

 想いを伝えてください。


 伝えられずに死ぬことだってあるんです。


 それがたとえ、縁だったとしても同じです。


 寧ろ、そうであってほしい。


 俺の知る昇汰はまだ幼いけど、

 二人は相性が良さそうに思います。


 縁は素敵な女の子だし、昇汰も素敵な男の子です。


 できたら、僕の代わりに傍にいて、

 支えてあげてほしい。


 どこぞの馬の骨とも知れない輩より、

 年下でも昇汰の方が安心です。


 僕のためを思うなら、

 好きな人と幸せになってください。


                     透夜より』





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