「私一人では」
そして、医院を後にした僕らは
彼の墓参りへと足を向けた。
医院から徒歩で三十分ほどの距離だった。
その間も、そこはかとなく気まずくて、
一言、二言くらいしか言葉を交わさなかった。
ちなみにお供えには、
彼女が育てている植木の枝を二本、刈り取ってきた。
まず、墓石やその付近の掃除を済ませ、
その枝を手向けた。
その後、僕があらかじめ用意しておいた
ライターで蝋燭と線香に火をつけ、そっと供えた。
二人で丁寧にとうにいの墓石に向かって、
拝んだ。
このとき僕は、心の中で彼に報告をしている、
近況や心境なんかを。
だからいつも長々と拝むことになる。
僕が頭を上げると、
彼女は待っていたと言わんばかりに、
僕の方をじっと見つめている。
それに気づき、
彼女の方へ身体を向けなおしてみた。
「これからも月命日と命日を一緒に、
墓参りに来てくれないか」
どういうことかと、考える間もなく、
彼女は次々に言葉を繰り出す。
「私は一人では生きていけないよ、
君がいなくちゃつまらない。
君に支えてもらわないと、すぐダメになる」
甘い言葉に呑まれそうだ。
でも、ダメなんだ。
「そんなこと言って。
今まで平気だったじゃないですか。
再会して、感傷に浸っているだけです、
すぐ忘れますよ」
これが甘い夢なら、覚めなければいけない。
だから、淡々と理路整然に、言葉を並べるだけだ。
情なんか、抱かないように。
「そんなことない、
また君に会えると思っていたから頑張れたんだ。
光ある方へ導いてくれたのは君だからな」
縁さんは真顔なうえに、
無自覚でとんでもないことを口走るから怖い。
やっぱり縁さんには叶わない。
「墓参りくらいなら構いませんよ」
これで終わりだろうと油断した先に、
彼女はまた頼みごとをする。
「それと、君にもう一つ頼みがある」
「何ですか」




