「僕はあなたのことがずっと……」
「君は少し、透夜と似ている。
雰囲気がどことなくね。
それに、君は私のことを知っていて、
恨んでいたはずなのに、
とても優しくしてくれた。
たとえ、
魂胆があったとしても私は救われたよ。
その優しさに惹かれていったんだ。
そのうちに、透夜のことに対する
憎しみを抱く君ごと好きになってしまった」
僕を好きな理由のうちに、
「透夜」が含まれていることが苦しかった。
縁さんは僕じゃなく、
「透夜」という人物越しに僕を見ている、
そう思えてならなくて。
「僕はあなたのことがずっと憎かった。
とうにいの死の直接的な原因でなくても、
とうにいを傷つけて、
通夜にも葬式にも来なかった
あなたのことなんか大嫌いです!」
言っていることが滅茶苦茶だ。
関係ないことを
こじつけているだけにすぎない。
でも、口にした言葉はもう取り戻せない。
我に帰った僕は彼女の目を見て、
胸が締め付けられた。
「そうか、
私はそこまで嫌われていたのか。
仕方ない、自業自得だな」
自嘲気味にそう吐いた彼女の目は、
儚くて、今にも壊れてしまいそうだった。
「っ……!!」
自分がしてしまった過ちの大きさに気づいた僕は、
罪悪感に耐えきれず、
手に握り締めていた種と鞄を手に、
その場から夢中で逃げ出した。
家に帰ると、さらなる罪悪感に苛まれていた。
傷つけて、逃げてきてしまった、最低だよ僕。
せっかく僕の正体を打ち明けることができて、
後ろめたいことはなくなったはずなのに、
黒歴史を塗り重ねてしまった。
それに、縁さんから愛の告白をされたのに、
僕は最低な返事をした。
あんなことを言うつもりなんてなかった、
でも、哀しかったんだ。
僕の中に彼の面影を探したまま、
好きだと言われたから。
それに、
あなたが思うほど僕はできた人間じゃない。
単純に、何の先入観もなく
「由野縁」という一人の女性に惹かれて、
心の赴くままにあなたに接してきたんだ。
多分僕は、
縁さんにそれなりの好意を抱いているのだろう。
だから好かれている理由が彼だと知り、傷ついた。
そのあまり、あんな暴言を吐いてしまった。
謝らなくては。
明日、僕は彼女に謝りに行こう。




