「どうして――?」
「えっ」
「君が、透夜が可愛がっていた
従兄弟の昇汰だということも、
君が私のことを
知っているかもしれないということもね」
息が詰まるような気がした。
「いつからですか、
いつから気づいていたんですか?」
「君の名前を知ったときだよ。
初めから、なんとなく
そうじゃないかと思っていたんだ。
君だって、そうではなかったか?
私の名前を知ったときに、気づいたんだろう」
あのときの妙な間はそれだったのか。
「そうですよ。
でも、だったらどうして
僕をバイトとして雇ったりしたんですか?」
「恨まれているかもしれないとも思ったが、
それ以上に、
透夜があれだけ愛でるように話をしていた
『昇汰』という人物を知りたいと思ったんだ。
君と関われば、
私も何か変われるような気がしてな」
とうにいがそんな風に
僕の話をしてくれていたことを知れたのは嬉しい。
だけれど、
そこまで事情を把握されていることが辛かった。
「がっかりしたでしょう。
とうにいから聞かされていた
『昇汰』とは全然違うはずですから」
だって僕はまだ、
とうにいのことを断ち切れていない。
もうすぐで九年になるというのに、
未だにその影に縋りついている。
「そんなことはないさ。
君は、少し甘え下手で、
芯はしっかりしているのに
自分の意見を上手く言い出せなくて、
謙虚で、我慢しやすくて、臆病なところがある。
でも、真面目で、素直で、優しくて、
よく笑いかけてくれる
――透夜から聞いたままの、素敵な男の子だよ」
それは、時を越えて、とうにいが預けて、
彼女が届けてくれた贈り物。
二つが重なって生まれた奇跡に、
僕は胸を熱くする。
「そう、だといいんですけどね……」
これ以上言葉が見つからなかった。
それなのに彼女は最後の一押しをしてしまう。
「私はそんな君が好きだ」
「どうして僕なんですか?」




