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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
158/172

「知っていたよ」

 暖かくて、

 優しい言葉と彼の最期の真実は、

 僕らの心を救うのに十分だった。


「もしよかったら、

 今から透夜のお墓参りに行かない?


 あなたはお墓の場所を知らないでしょう」


「いいえ、場所は知っています。


 透夜の兄の、

 葉月さんが教えてくれたんです。


 私の店を探し出して、

 墓まで連れて行ってくれました。


 でも、一緒に行かせてください。


 そうするべきだと思いますから」


 真っ直ぐな眼差しで

 縁さんは鏡子おばさんを見つめた。


 そして僕らは、三人で墓参りをしたんだ。


 僕だけが不完全燃焼のまま、

 浪川家訪問は幕を閉じた。


 遅めの昼食をとろうと、二人で店に足を運ぶ。


 昼食は縁さんが作り置きしておいた

 香辛料の効いたハヤシライスを食し、

 腹を満たした。


 食後のティータイムを二人で楽しんでいると、

 彼女は

 「少し話したいことがある。聞いてくれるだろうか」

 と言ってきた。


 真剣な眼をしていたこともあり、僕は二つ返事をする。


 それを確認した彼女はおもむろに立ち上がり、

 種を育てている部屋へと消えていき、

 一分と経たないうちに席に着く。


「この玉虫色の種は、私が初めて育てた種だ。


 そしてこちらの空色の種は、

 君が育ててから生った種だよ」


 だから何だろうと思ったけれど、

 続きがあるようで、僕は黙って耳を澄ませていた。


「互いの種を交換して、育てないか?」


「どうして、種を交換するんですか?


 理由を教えてください」


 質問に質問で答えないように

 気をつけていた僕だが、

 理由を訊かずにはいられなかった。


「お互いのことをもっと知り合いたいんだ」


 それは単純で明確な答えだったから、

 黙っていることが辛くて、

 僕は言いそびれたあのことを口にする。


「実は、浪川透夜と従兄弟なんですよ。


 家が近かったこともあって、

 彼にはよく面倒見てもらいました」


 その続きの言葉は彼女によって遮られてしまう。


「知っていたよ」



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