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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
156/172

『君は僕のカウンセラーだ。』

『一月三十一日


 朝、ふと鉢植えに目を遣ると、種が生っていた。


 その種を摘み取り、

 元々種が入れられていた巾着に詰めた。


 夕方、母と一緒に病院に向かい、

 診察してもらうと病状が悪化していることが判明した。


 こんなに短期間で悪化すると、

 元々から危険性が高かったのかもしれない。


 また寿命が縮んでしまった。


 死ぬ確率が生存率に近づいてきている。


 だから、今のうちに手紙を書くことにした。


 縁に贈る種の説明書を書いた。


 家族や大事な人たちへ手紙を書いた。


 そのせいで、珍しく夜更かしをしてしまった。


 明日というか今日は、

 睡眠不足で居眠りしてしまうかもしれない。』


 この「説明書」というのは、

 説明と愛情が綴られていた手紙のことだろう。



『二月六日


 縁に告白して、見事に玉砕した。


 でも、種は受け取ってもらえて良かった。


 却って、振られて良かったのかもしれないな、

 僕は何年生きられるかも分からない癌患者だ。


 思い合えても、幸せにはできないだろうから。


 そう言えば、来週にはバレンタインがある。


 縁の好きなチョコレートを駅前に買いに行こう。』


 あれは、とうにいの形見に近しいものだったんだ。


 だから、彼女は壊れ物のように大事にしていた。



『二月十二日 


 今日は昇汰と久々に遊んだ。


 数ヶ月ぶり程度だけど、その間が長く感じられた。


 素直で可愛い。


 こうして昇汰に構ってやれるのも

 あとどれくらいだろうか。


 昇汰の恋愛事情なんかも聴きたい。


 そして昇汰を送るついでに、

 縁に渡すチョコレートは買っておいた。


 喜んでくれるといいな。


 縁が喜んでくれると、僕も嬉しい。


 君は僕にとって特別な存在だ。


 この感情は未知数で、

 恋というだけでは足りなくて、上手く解明できない。


 でも、君がいるだけで心が落ち着いて、癒されるよ

 ――ああそうだ、君は僕のカウンセラーだ。』


 それが最後の日記となった。


 その翌日に、

 彼は亡くなってしまったのだから。


 隣に目を遣ると、

 縁さんは今にも泣き出しそうで、

 必死に涙を堪えていた。


「読み、終わりました……」


 片手で目元を覆いながら、鏡子おばさんに日記を返した。


 すると、鏡子おばさんは

 手にしていたものを縁さんに差し出した。


「これは、縁ちゃん宛の手紙よ。


 読んであげて」


 縁さんはちらりと僕に視線を向ける。


「僕も読んでいいんですか?」


「構わないだろう。


 これは私宛の手紙だというなら、

 閲覧を決めるのは私の権利のはずだ」


 縁さんが手紙を開いた。





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