「死ぬ前日まで書いていた日記」
「これは……日記、ですか?」
縁さんに手渡されたそれは、
A5サイズの少し分厚めなノートだった。
「ええ。
透夜が死ぬ前日まで書いていた日記よ。
勝手に読むのは忍びないと思ったけど、
もしかしたら何か大事なことが
書かれているかもしれないって、
読んでみたら、
あなたのことが書かれていたから。
読んでみてほしいの」
僕も読んでいいか確認しようと、
鏡子おばさんの方へ目を遣ると、
「勿論よ、昇汰ちゃん読んで」と了承を得られた。
そして、僕らは
小さな日記帳を読むために身を寄せ合った。
朗読する手もあったが、自分の速度で読みたいのと、
心の中で彼の声を再生したかったからだ。
綺麗な空色をした表紙を彼女の手で繰り、
日記を読み始めた。
『十二月三十一日
縁はカウンセラーを目指しているらしい。
縁なら、
きっと立派なカウンセラーになれると思う。
すごく優しい女の子だから。
来年もいい年を迎えられますように。』
隣を見ると、
彼女は照れ臭そうに耳まで赤く染め上げていた。
『一月八日
三学期が始まる始業式、
縁が上級生に言い寄られているところを見かけた。
そのときはなんとか追い払ったけど、
それを見て、憤りを覚えた。
縁もいつか、
誰かと付き合うようになるのかと想像して、
泣きそうに胸が痛かった。』
どうやら日記は
毎日付けているものではないようだった。
何かがあったとき、
気持ちの整理をしたいとき用に
書き記しているようにも思える。
この後の内容は、大体予想がつく。
『一月九日
クラスの男子と
縁が親しそうに話しているところを見て、
ヤキモチを妬いた。
そのせいで、
縁に対して抱いていた気持ちが恋だと気づかされた。
今さらになってこんな気持ちに
気づいたところでどうすればいいのか分からない。
抱き締めたり、キスをしたり、
そういうことをしたいという気持ちは勿論ある。
だけど、告白することで、
今の関係が壊れてしまうかもしれないと思うと、
怖くて、告白なんてできそうにない。』
隣の縁さんは複雑な表情で日記を見つめている。
自分への恋心が綴られている恥ずかしさと、
彼の男の部分を知ってしまった気まずさのせいだろう。




