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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
150/172

彼女に真実を伝えることもままならない

 男装姿は勿論格好いい。


 しかしそれでも、罪悪感を纏いながら、

 素敵な言葉で主に女性の心を射止める彼女よりも、

 戸惑いつつも素直な感情を表す

 彼女の方が何倍も魅力的だと思わされたんだ。


「そ、そうか……」


 彼女がどう受け取ったかは分からないけれど、

 彼女はパッと目を伏せてしまった。


 嫌味でも皮肉でもないと、

 どうか気づいてくれますように。


 たとえばもし、

 縁さんが過去を清算できたとして、

 その後はきっと封印していた

 夢を叶えるのだろう。


 しかし僕はどうだろうか。


 何かが変わるのかな、

 前進するどころか後退してしまいそうだ。


 僕も僕で、相当気が動転しているらしい。


 情けないな、僕がしっかりしないと、

 彼女に真実を伝えることもままならないというのに。


「さあ、縁さんそろそろ行きましょうか」


 僕が声を掛けてみると、

 彼女はようやく平静を取り戻したようで、

 顔を上げて返事をした。


「あぁそうだな、行こう」


「浪川さんの家にどうやって向かいますか?」


 何の移動手段か、という問いである。


「大して距離もないし徒歩で向かおう。


 おそらく、十分ほどで着くはずだ」


「はい」


 その会話を合図に、

 店の戸締まりを確認し、店を後にする。


 浪川家までの道のりは静かで、

 どことなくぎこちない空気が流れていた。


 彼女は先導しながらも、

 ずかずかと歩くわけではなく、

 心許なさそうにゆっくりと足を運んでいる。


 対して僕は、場所は知っているけれど、

 それを今彼女に知らせるわけにもいかない。


 そのため、

 僕は彼女から二、三歩下がって頼りない足下に続く。


 時折見上げると、彼女の曲線美が目に映り、

 その度に視線を足下へ落としていた。


 ゆっくりと歩いたせいか、

 浪川家に到着したのは

 店を出てから十五分後のことだった。


 玄関先でインターホンを押そうとした

 縁さんが突然振り返り、僕に同意を求めた。





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