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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第五種「依存症」―僕のカウンセラー―】
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彼女に僕の正体を明かすのも、時間の問題

「透夜、ごめんな……」


 宥めることも、励ますこともできない。


 僕にはそんな資格なんてないから。


 それに、

 今は好きなだけ泣かせてあげるべきだとも思う。


 押し潰されそうな思いから

 やっと解放されたんだ。


 だから、ただ待っているよ。


 十数分と経った頃に、

 ようやく泣き止み、彼女はさくらんぼをもいだ。


「いただきます」


 静かにそう呟くと、さくらんぼの実を口に含んだ。


 縁さんはそっと目を閉じて、胸の辺りに手を添える。


 胸の温もりをそっと抱き留めるように。


 細々と、しかし、清らかな声音で言葉を発した。


「透夜、今までごめん。それと、ありがとう」


 そこで彼女が何を感じたのか分からないけれど、

 きっと、

 とうにいとの思い出が詰まっていたんだろう。


 僕の知らない彼を。


 それでも、二人にとって

 彼が特別な存在だったことは断言できるはずだ。


 およそ八年に亘って、

 心の中で生き続けるほどの大きな存在なら、

 たとえ、唯一無二の意味を持たなかったとしても、

 それだけで特別なものになる。


 全く似ていないはずの僕らの共通項だ。


 そして縁さんはギャルソンの裾を翻し、

 頼りなく柔い表情で僕に問いかけてきた。


「透夜の家へ一緒に来てくれないだろうか」


 唐突に投げ込まれた質問に僕は気が動転し、

 質問で返してしまう。


「どうしてですか?」


「一人で行くのはどうにも心許なくてね。


 君と一緒なら、平気だと思うんだ。


 だからどうか、手を貸してほしい」


 潔く、彼女は年下である僕に頭を下げて、

 助けを請うてきた。


 もうそろそろ僕も意地を張り続けてもいられない。


 みっともなくても、

 過去を受け入れようとする彼女の前で

 僕一人が殻に閉じ籠もることはできないから。


 彼女に僕の正体を明かすのも、時間の問題だ。


 そうしたらきっと、

 もう一緒にはいられないんだろう。


 僅かに感じた胸のわだかまりを押し込めて、

 僕は明るく、潔く返事をする。


「分かりました。僕も一緒に行きます」


「ありがとう! 恩に着るよ」



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