「二人の気持ちが詰まったその果実を食べてください」
「そうか。
その通りだ、今年で九年目になるのに、
まだ踏み出せずにいるよ。
笑ってしまうだろ、
他人には散々偉そうなことを言ってきて、
自分は目を背け続けているなんて、な」
僕の怒りや憎しみなんて知らない彼女は、
自らの言動について、
そして現在の自分を自嘲気味に語った。
僕はとうにいが大好きだった、
だからこそ、
通夜にも葬式にも顔を見せなかった
あなたをひどく恨んでいた。
自分だって、あれ以来、
とうにいの家には行けていないから。
彼女だけでなく、
僕も彼の「死」から逃げてきたんだ。
あのときまだ七歳と幼かった僕に、
それは悲壮すぎた。
受け入れることができなくて、
彼はもう「いない」ということだけしか
理解していなかった。
そして抱いたのは憎しみと悲しみ。
僕は知っていたんだ、
とうにいが彼女に会いに行こうとしていたことを。
その途中で消え去ったから、
遣り場のない苦しみを彼女に押しつけた。
そんな考えを未だに捨てられずに、
胸の奥でくすぶらせている僕は子どもというより、
愚かだろうな。
だったら僕が
このオモイを断ち切るためにすべきことは……
「縁さん、店で育てている
心の『種』に花が咲きました。
時期に実をつけると思います。
今からでも遅くありません、
二人の気持ちが詰まったその果実を食べてください」
「いや、しかし、今は君が育てているから、
私の気持ちなどとうに消え失せてしまっているだろう――」
今、彼女に後ろ向きな言葉を
口にさせるわけにはいかない。
あなたの言動に、僕の未練も関わってくるんだ。




