「彼を傷付けた女の私は隠すべきだって」
『私は透夜がいなくても平気だから、
世話を焼いてくれなくても大丈夫だよ』
『そんなつもりないよ、
僕が一緒にいたいからいるだけだから気にしないで』
『でも』
『大丈夫だから』
私は世話焼きでお人好しな透夜に、
これ以上無理してほしくなかっただけなんだ。
『これからは私の世話を焼かないで!』
『……分かった』
そう答えて以来、彼は変わった。
随分と社交的になって、
それから少しずつ彼といる時間が減少した。
私の言葉のせいだったけれど、
そうしたかったわけではなかったから、
それを寂しく思っていた。
そして、
彼も高校二年のときにみまかってしまった。
しかも、彼は私のせいで他界したんだ。
彼がみまかる一週間ほど前に、
彼は私に告白してきた。
私は彼を兄のように慕い、誰よりも信頼していて、
最も近しい存在だったから、
そんな風には考えられなくて、
断ってしまったんだ。
そのとき、
『気持ちだけでも受け取ってほしい』
と言われて手渡されたものが、
手紙と同封された三つの「種」だった。
手紙の内容は「種」の育て方と
裏側に記されたたった一言の愛。
『愛してる』
好きでも、大好きでもなく、「愛してる」。
その一言にどれだけの想いが
込められているか分かったからこそ、
私は「種」を育て始めたよ。
私は彼がこの世に
もういないことが受け入れられなくて、
通夜にも葬式にも行けなかった。
彼がみまかったとき、
私は信じられなかったのと同時に、怖かった。
私のせいだと思ったからだ。
だって、そうだろ?
彼は突然、この世で息をしなくなったんだ。
告白を断った一週間後に。
自殺だと誰かが言っていたよ。
罪の意識に苛まれて、
私はカウンセラーになる夢を諦めた。
彼の未来を絶った私には、夢を追う資格なんてない。
だから、よく褒められていた
「料理」を仕事にしようと思い、
調理系の専門学校に進学した。
それから一、二年ほど実務経験を積み、
自分の店を建てた。
資金は父が遺してくれた財産を
元手に開業することができたよ。
そして、この姿もそのときに考えたんだ。
彼を傷つけた女の私は隠すべきだって、
男装姿で店に立つようにした。
口調もそれに合わせてこうなったんだ。




